般若理趣分(般若經理趣分)1


底本は大正大藏般若07。(※)はその校異。

又、◎は『國譯大藏經經部第三卷』の書き下し文。※はその註釋。譯者椎尾辨匡識の署名有り。

又奧書云、大正七年四月廿八日印刷、同三十日發行。昭和十年十二月廿八日四版發行。發行所國民文庫刊行會。




大般若經第十會般若理趣分序

  ‘西明寺沙門玄則‘撰

(※西字上明本有唐字。撰字明本作製字)

般若理趣分者。蓋乃覈諸會之旨歸。綰積篇之宗緒。‘眇詞筌而動眷。燭意象以興言。是以瞬德寶之所叢。則金剛之慧爲極。晞觀照之攸炫。則圓鏡之智居尊。所以上集天宮。因自在而爲心表。傍開寶殿。寄摩尼而作說標。明般若之勝規。乃庶行之淵府。故能長驅大地。‘枕策上乘。既得一以儀眞。且吹萬以甄俗。行位兼積。聳徳山而秀峙。句義畢圓。呑敎海而澄廓。爾其攝眞淨器。入廣大輪。性印磊以成文。智冠嶷以騰質。然後。即灌頂位。披總持門。以寂滅心。住平等性。滌除戲論。說無所說。絕棄妄想。思不可思。足使愉忿共情。親怨等觀。名字斯假。同法界之甚深。障漏未銷。均菩提之遠離。信乎。心凝旨夐。義晈詞明。言理則理邃環中。談趣則趣冲垓表。雖一軸單譯。而具該諸分。若不留連此旨。咀詠斯文。何能指‘‘晤遙津。搜奇‘密藏矣。

(※眇詞、眇字明本作耳に少、元本作眇詢二字。枕字元明本具作抗字。‘‘晤字は目に吾、又‘‘晤遥二字三本具作晤迷字。密字元本作蜜字)



大般若波羅蜜多經卷第五百七十八

  ‘三藏法師玄奘奉 詔譯

(※三字上明本有唐字) 


第十般若理趣分

◎國譯大般若波羅蜜多經第十般若理趣分


■00

如是我聞。一時薄伽梵。

妙善成就一切如來金剛住持平等性智種種希有殊勝功德。

已能善獲一切如來灌頂寶冠超過三界。

已能善得一切如來遍金剛智大觀自在。

已得圓滿一切如來決定諸法大妙智印。

已善圓證一切如來畢竟空寂平等性印。

於諸能作所作事業。皆得善巧成辦無餘。

是の如く我聞きき。

一時薄〔バ〕伽〔ギヤ〕梵〔ボン〕、‘妙に善く一切の如來の金剛住持と平等性智と種種希有の殊勝の功德とを成就し、

(※妙字現作玅字下附`同字同)

已に能善〔二字訓よ下倣此〕く一切の如來の灌頂の寶冠を獲て三界を超過し、

已に能善く一切の如來の遍金剛智大觀自在を得、

已に一切の如來、諸法を決定したまへる大`妙智印を圓滿することを得、

已に善く一切の如來、畢竟空寂、平等性印を圓證して、諸の能作・所作の事業に於て皆、善巧に成辦して餘無きことを得たまへり。

※是の如く我云々。この一段序分なり。

 初句證信序、持經者この理分を正しく傳承するを示す。

※一時薄伽梵云々。以下化序。

 一時は理趣分説法の時なり。

※薄伽梵。Bhagavān世尊と譯す。

 敎主釋尊を云ふ。

※妙に善く。以下如來成就の勝德を讚す。

 五眼開發して五智圓滿せる五佛を出す。

※金剛住持。眞如法界に安住して一切の德を流出して自在なるを云ふ。

※平等性智。凡我破れ慧眼開きて平等を知る。

※灌頂の寶冠。法王位に登るを表らはす。

※遍金剛智大觀自在。佛智大圓鏡智。

※大妙智印。四智印別しては妙觀察智なり。

※平等性印。平等性智を表らはす。

※善巧等。成所作智を表らはす。

※餘なき。完全無盡なり。


一切有情種種希願。隨其無罪皆能滿足。

已善安住三世平等常無斷盡廣大遍照身語心性。

猶若金剛等諸如來無動無壞。

一切の有情、種種の希願、其の罪無きに隨ひて皆能く滿足して、

已に善く三世平等にして、常に斷盡すること無く、廣大‘遍照せる身語心性に安住すること、猶金剛の若〔如〕し。

(※遍字原作徧字下附`同字同)

諸の如來に等しく無動無壞なり。

※已に善く等。密家はこれを法界體性智に配す。

 佛眼圓發して三世自他圓滿なり。


是薄伽梵。住欲界頂他化自在天王宮中。

一切如來常所遊處。咸共稱美大寶藏殿。

其殿無價末尼所成。種種珍奇間雜嚴飾。

衆色交暎放大光明。寶鐸金鈴處處懸列。

微風吹動出和雅音。綺蓋繒幡花幢綵拂。

寶珠瓔珞半滿月等。種種雜飾而用莊嚴。

賢聖天仙之所愛樂。與八‘十億大菩薩倶。

(※十字明本作千字)

是の薄伽梵、欲界の頂、他化自在天王宮の中に住〔いま〕せり。

一切の如來、常に所遊の處、咸〔皆〕共に稱美したまへる大寶藏殿なり。

其の殿は無〔ム〕價〔ゲ〕末〔マ〕尼〔ニ〕の所成にして、

種種の珍奇間雜して嚴飾せり。

衆色交暎して大光明を放つ。

寶鐸金鈴、處處に懸列し、

微風吹き動かして和雅の音を出だす。

綺蓋、繒幡、華幢、綵拂、

寶珠、瓔珞、半滿月等、

種種に雜飾し〔=而〕用て莊嚴せり。

賢聖天仙の〔=之〕愛樂せる所、

八十億の大菩薩と〔=與〕倶なりき。

※是の薄伽梵云々。説經の處を明かして第六天王宮とす。

※無價末尼。最勝の如意寶珠。

 末尼は常途麻尼に作る。

※寶鐸等。主として外部の裝飾なり。

※綺蓋。きぬがさ。

※繒幡。きぬばた。

 此等は主として室内の裝飾なり。

※賢聖等。在會同聞の大衆を明かす。


一切皆具陀羅尼門三摩地門無礙妙辯。如是等類無量功徳。設經多劫讃不能盡。

一切皆、陀〔ダ〕羅〔ラ〕尼〔ニ〕門、三〔サン〕摩〔マ〕地〔ヂ〕門、無礙の玅〔妙〕辯を具せり。

是の如き等の類、無量の功徳あり。

設〔たと〕ひ多劫を經て讃ずとも盡くすこと能はざらん。

※一切等。賢聖の德を讚す。

※陀羅尼門。種種の總持力なり。

※三摩地門。種種の禪定力なり。

※無礙等。法義詞辨四種の無礙自在辯なり。


其名曰金剛手菩薩摩訶薩。觀自在菩薩摩訶薩。

虛空藏菩薩摩訶薩。金剛拳菩薩摩訶薩。

妙吉祥菩薩摩訶薩。大空藏菩薩摩訶薩。

發心即轉法輪菩薩摩訶薩。摧伏一切魔怨菩薩摩訶薩。

如是上首有八百萬大菩薩衆前後圍繞。宣說正法。

初中後善文義巧妙純一圓滿淸白梵行。

其の名を金剛手菩薩摩訶薩、

觀自在菩薩摩訶薩、

虛空藏菩薩摩訶薩、

金剛拳菩薩摩訶薩、

`妙吉祥菩薩摩訶薩、

大空藏菩薩摩訶薩、

發心即轉法輪菩薩摩訶薩、

摧伏一切魔怨菩薩摩訶薩と曰ふ。

是の如きを上首として八百萬の大菩薩衆有り。

前後に圍繞せられて正法を宣說したまふに、

初も中も後も善く文義巧`妙、純一圓滿にして淸白梵行なり。

※別して八大菩薩を列らぬ。

 大日の八方侍衞の上首菩薩なり。

※初も中も後も云々。以下所説を讚ず。

 初中後善は首尾一味正法なるを云ふ。

※純一圓滿は純一乘を表らはす。

 諸經に散見する法句なり。








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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