蚊頭囉岐王——小説15


以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



 だからせメて 舞ゑもせず おどれモせずに

 ひとりデ哥え そノ腕は そノ足に

 そこでせメて 穢イ子の なにをしても

 白ゐ沙 その腕は なすゞべしらに

 波に濡れて ひとり 穢ひ足は

 濡らされながら せメて歌えひとりで 穢レた子

 そこで歌ゑ 歌くラい 舞イ上がれもせず

 地の表面で せめてモの その穢れタ腕わ

 汚物に塗れ 白ヒ沙 穢い子

 穢ヒ喉に 波に濡レひぢ だからせめても

 そこで哥え 濡レひぢながらに 舞ゑもせず

 せめてもひとり 地ノ表面に ひとりで歌え

 そこデ謌いな 汚物まビれで 白ヒ沙

 穢ゐ子 穢ヒ喉に 波に濡れひぢ

 そこデせメても 穢レた子 ひぢて濡れレば

 歌をうたえば? 汚物ノ子 地ノ表面で

 哥ゑ耶阿乎波

かくて多麻美

 哥ヱ耶與乎波

爾に都儛耶氣良玖爾

 だから笑った。

 あなたは笑った。

 狂える女。

 羽衣の。

 狂暴な女。

 野蠻な女は冷酷な。

 淨らかな。

 その唇の色。

 むごたらしい。

 その眼差しの色。

 綺羅らしい。

 ゆらぐ衣の。

 綺羅めきのうちに。

 その微風。

 だから笑った。

 あなたはも笑った。

 声を立て。

 鳥雅は笑う。

 その聲は。

 獸の啼いたその聲のように。

 嘴の。

 だれかに喰われて朽ち果てた。

 その嘴を持つ。

 死んで腐った鳥のように。

 極彩色の鳥の翅。

 屍の羽生。

 野鳥のようにも。

 野生の聲に。

 いきものゝあざやかな聲。

 その濁音に。

 笑った。

 鳥雅は。

 だからさゝやく。

 哥え狂った。

 狂った穢い。

 穢い生き物。

 お前は歌えと。

 羽衣の女。

 その口たちの言うまゝに。

 むしろ聞きもしないで。

 女たちの聲など。

 聞き取れもしないまゝに。

 だからあなたはひとりで歌った。

故レ斗璃麻沙歌へらく

 乎乎乎宇波

 意宇波意宇於乎

 乎乎乎乎宇阿

かくてその海に

波は綺羅めく

その色に

 耶阿阿波阿爲阿

 夜阿阿意宇意阿

 波阿阿阿阿耶

そのしぶきにも

 波阿阿夜阿夜波

 於乎宇宇惠阿波

 波伊爲阿波

そのしずくにさえも

 波伊阿

 爲阿乎波

 爲阿波

 波伊宇波

白濁の

 爲阿夜阿波

 夜乎波

 波阿阿惠波

海の波立ち

 宇阿波阿波

 波耶波

 阿宇波耶波

さざ波の

 意宇波

 波伊波波耶耶波

 爲耶波阿波

綺羅ぐ波立ち

 爲耶乎乎乎波

 波耶波

 乎乎乎乎波

白い色

 宇波耶

 夜阿夜波波耶波

 乎宇

わなゝく色に

 宇意波

 乎宇乎波

 宇乎乎

しぶきあげるをも

 於迦迦迦迦迦迦迦

 乎迦迦迦迦迦迦

 迦迦迦乎

砕けちるをも

 意宇

 宇宇波意宇

 宇宇波

散り舞い散るをも

 伽伽伽爲迦爲波

 波阿波

玉散る色ら

 爲阿阿夜阿夜は

 意宇波

その色らだにも

 迦迦迦毗耶阿波

 意宇

海は波打つ

 宇意波

海は波打つ

 宇宇波

かくて多麻美ひとり娑娑彌氣囉玖

 笑う聲

  羽衣の

 玉散る聲ら

  色ら由羅らぎ

 聲は玉散り

故レ陁麻美爾に都儛耶氣良玖

 羽衣の女。

 天飛ぶ女のひとりはさゝやいた。

 眞珠を硝子にこすりつけたひゞき。

 その聲に。

 殺してちゃえ、と。

 だから羽衣。

 天飛ぶ女のひとりもさゝやいた。

 硝子を磐に叩き割るひゞき。

 その聲に。

 いまゝさに、と。

 だから羽衣の女。

 天飛ぶ女のひとりさえさゝやいた。

 ゆらいだ空気の絹に擦れたひゞき。

 その聲に。

 壞しちゃえよ、とその聲は。

 その聲。









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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