妙法蓮華經囑累品第二十二
底本、「國譯大藏經、經部第一卷」(但し改行施し難読以外の傍訓省略又、一部改変)
奥書云、
大正六年六月廿三日印刷、同廿六日發行。昭和十年二月二十四日四刷發行。
發行者、國民文庫刊行會
囑累品第二十二
爾の時に釋迦牟尼佛、法座より起つて大神力を現じたまふ。
右の手を以て無量の菩薩摩訶薩の頂きを摩〔な〕でて、是の言を作したまはく、
「我、無量百千萬億阿僧祇劫に於て、是の得難き阿耨多羅三藐三菩提の法を修習せり。
今、以て汝等に付囑す。
汝等、當に一心にこの法を流布して、廣く增益せしむべし。」
是の如く三たび諸の菩薩摩訶薩の頂きを摩でて、是の言を作したまはく、
「我、無量百千萬億阿僧祇劫に於て、是の得難き阿耨多羅三藐三菩提の法を修習せり。
今、以て汝等に付囑す。
汝等、當に受持し讀誦し廣く此の法を宣べて、一切衆生をして普く聞知することを得せしむべし。
所以は何。
如來は大慈悲有つて諸の慳恡無く、亦、畏るる所無くして、能く衆生に佛の智慧、如來の智慧、自然の智慧を與ふ。
如來は是れ、一切衆生の大施主なり。
汝等、亦、隨つて如來の法を學すべし。
慳恡を生ずること勿れ。
未來世に於て、若し善男子、善女人有つて如來の智慧を信ぜん者には、當に爲に此の法華經を演說して、聞知することを得せしむべし。
其の人をして佛慧を得せしめんが爲の故なり。
若し衆生有つて信受せざらん者には、當に如來の餘の深法の中に於て示敎利喜すべし。
汝等、若し能く是の如くせば、則ち爲れ、已に諸佛の恩を報ずるなり。」
時に諸の菩薩摩訶薩、佛の是の說を作したまふを聞き已つて、皆、大歡喜、其の身に徧滿して、益〔ますます〕恭敬を加へ、躬を曲げ、頭を低〔た〕れ、合掌して佛に向かひたてまつりて、俱に聲を發して言さく、
「世尊の敕の如く、當に具さに奉行すべし。
唯然、世尊。
願はくは慮〔うらおも〕ひ有〔いま〕さざれ。」
諸の菩薩摩訶薩衆、是の如く三反、俱に聲を發して言さく、
「世尊の敕の如く當に具さに奉行すべし。
唯然、世尊。
願はくは慮ひ有さざれ。」
爾の時に釋迦牟尼佛、十方より來りたまへる諸の分身の佛をして、各、本土に還らしめんとして、是の言を作したまはく、
「諸佛、各、所安に隨ひたまへ。
多寶佛の塔、還つて故〔もと〕の如くしたまふ可し。」
是の語を說きたまふ時、十方無量の分身の諸佛の寶樹の下の師子の座の上に坐したまへる者、及び多寶佛、幷びに上行等の無邊阿僧祇の菩薩大衆、舍利弗等の聲聞四衆、及び一切世間の天、人、阿修羅等、佛の所說を聞きたてまつりて、皆、大いに歡喜す。
0コメント