多香鳥幸謌、附眞夜羽王轉生——小説83


以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



和「最初のころ…子供のころ、…莫迦な田舍の子供の游びで、オナニーして。ただの冗談。あくまで遊びで。友達と、…見せたの。十二歳じゃない?小學生のころ…出てくるのが、紘のは…それ、その紘夢と…あいつ、幼馴染で…

圓「その子と?

和「違うんですよね。色も匂いも。匂いは微妙に、…でも色はもう全然違うでしょ?で、どうも、あいつのと違うから、おれの、出して、お前の穢い色な、と。俺の綺麗な透明で、と。お前の濁ってるなと。病気なんかと、紘の、笑って…けど、性敎育?

圓「學校の?

和「で、あれそもそも白濁液でしょ。

圓「そうな。

和「それで、おかしいのは俺だと。…調べるでしょ。自分で、そうしたら、

圓「本で?

和「図鑑とか、難しいのな、

圓「お母さんは知ってられた?(と一重に言った。一重は例の表情のままなにも答えなかった。話の間中彼女はただ圓位法師を凝視するのだった。)

和「言ってないからな…何にも、…ま、恋愛しますよね?…でも、ま、そのうち結婚して。それから子供生まれない、それいいのかなと。…いいかと。そういう夫婦も、

圓「現實、いらっしゃるね。

和「けど、いざ、自分が結婚して…それ、惡いなと思って。あいつに對して。母にも。けど、だから、あいつが、やっぱり子供欲しくて、

圓「罪惡感?

和「それは、

圓「でも、そんなの感じる必要ない。夫婦、分かち合って、

和「です。ですよ。そうなの。で。俺、云ったんです。あいつに。結婚してから、

圓「なじられた?

和「いや、

圓「泣かれた?

和「じゃなくて、いいよと。それでいいよと。ふたりで生きていこうかと。こども、いてもお金かかるしなと。で、それから

圓「よかったじゃない。

和「笑ってね、あいつ。笑って、

圓「いい奧さんじゃない。

和「だから惱みますよ。

圓「なんで?

和「だって、…俺のせいで、あいつが…あいつが他の奴となら當然生めたもの、産ませてやれない、

圓「仕方ない。

和「女の幸せ奪った。

圓「出産だけが女の幸せか?

和「本人らの氣になってよ(と和哉は一瞬聲をあららげた)。そんなもんじゃないよ。

圓「それで、どうしたの?

和「紘に遇ったの。年末、あいつの實家近く、俺だけ遊びに行って。それで、話して

圓「その子と?

和「話してるうちに、あいつも、俺の嫁、もちろん顏くらいは知ってるから、

圓「同級生だもんな。

和「學年違うんよ。あいつの方が、二こ下…で、俺、思ったの。

圓「何を?

和「紘に。深雪に。あいつに、お前、種つけしてくれんかと。

圓「なにを馬鹿な。…それ、奧さんにもなにも云わずに、

和「莫迦なんですよ。でもね、追い詰められてるから。俺も。あいつも。

圓「紘はいいと云ったの?

和「まさか。

圓「じゃ、どうした。

和「深雪に云ってみたんですよ。

圓「ほかの男に種漬けされろとか?

和「してみんかと、

圓「犬や馬とちがうんで。

和「莫迦かと。

圓「当たり前よ。

和「阿呆かと。

圓「だろな。

和「けど、いろいろ話し合うんですよ。ぼくら。どっか孤児院みたいなの行ってもらって來るかとか、そういうんも含め…けど

圓「けど?

和「やっぱり、すくなくとも片方血がつながってる方がいいんじゃないかと。

圓「誰の意見?

和「俺。惡いんは全部俺だから。俺がまとなら全部よかったんだから。

圓「そんなこと言ってない。勝手に自分を責めろとも言ってない。

和「例えば、…反抗期?貰い子が、例えば暴力ふるったと。俺や。深雪や。…で、赦せます?俺ら、結局後悔するんじゃない?

圓「そんなもん、決めつけるな。現実には、

和「それはそうなんでしょ。人さまは。でも俺らもそうかどうかはわからない。俺には自信がない。たぶん、他の子にすればよかったと思う。たぶん。でも、人の子は犬や猫と違う。だから、せめて、

圓「それで?

和「深雪に、云った。俺、せめてお前の血のつながりの子供だったら、自分の子、俺らの子だと、愛せるぞと。

圓「で?

和「その時は、それ、本當にそうだった。…いや、いまでもそう。本当にそう。けれども、

圓「だったら、

和「それであいつに言った。紘に。頼むと。女にしてやってくれと。

圓「なにを、そんな阿呆な言い方を…

和「阿呆なんです。俺ら。でもね、

圓「紘は?何て云った。

和「考えると。

圓「そらそうよ。

和「で、次の日電話くれた。いいよと。精子やると。

圓「そいつは説得しなかったの?阿呆のお前らを。

和「いや、しましたよ。あいつの爲にいうけど、今の住職の倍以上阿呆阿呆謂うて、でも、やつ、おれの親友だったからね…

圓「どんな親友よ。

和「あいつは惡くないから(と、吐き捨てるように謂う)。あんたは解ってないから。…あいつは…

圓「で、奧さん、わたしたの?

和「そう。ホテルで、廿日市の…ちゃんと、検診行って、一番危ない二日間。

圓「二日も?

和「泊まってないよ。

圓「いっしょよ。…でも、あなたも、心おだやかじゃないな…

和「いや…

圓「何?

和「祈ってた。自分とかじゃなくて。

圓「何を。

和「あいつの…深雪の幸せ。それから…

圓「それから?

和「感謝。

圓「深雪さん?

和「も、そう。それと、紘に。でもね…やっぱり…なに?違うよね。子供生まれて。眞夜羽…紘も…恩人だから…これから永遠に、ずうっと秘密。秘密だけれども、實の親父じゃない?だから、

圓「あわせた?

和「生まれてすぐね。

圓「なんて言った?

和「紘?

圓「彼は?

和「他人みたい。本當に。まるで、あいつ、全然他人見たい(と、和哉は啜り泣いた。しばらくして)、おめでとうと(又啜り泣く)。

圓「それじゃあ、何も…

和「問題ない。けど、そのときも思ったけど、やっぱり、男と女は男と女でしょう?子供つくるための、それが男と女で、それがつがいの仕事なんじゃろ?

圓「また、わけのわからん…

和「あいつら、やぱり、俺と深雪とは違う、なんか、親しさ、あるからね。

圓「氣のせいよ。僻目よ。

和「あるから。つながったつがいの。

圓「阿呆なこともやすみやすみ、

和「苦しんだのは俺ですよ。俺が一番ですよ。俺だけじゃない。でも、俺もよ。やっぱりも俺もよ。嫉妬じゃない。だけじゃない。なに?…いや。本当に苦しいんよ。

圓「それで眞夜羽につめたくしたんか?

和「まさか。あいつ、目に入れても痛くない。あいつの爲なら死ねる。

この時に一重がいきなり、表情を変えない儘に言った「それはホント。

圓位は聞いた。

一「この子、…あのこまだ、生きるも死ぬも判らないのに、よく敎えるのよ…醉っぱらってよ。機嫌いい時にね、お前な、わしとボートに乘っとって、どっちか一人死ぬ。ひとりしか助からん、どうするかと。眞夜、こたえられないでしょう?そしたら、謂うの、その時に、お父さんごめんと謂って、迷わず親を見捨てる。自分生きる爲親を弃てる。それが一番の親孝行だと。それからお前がちゃんと生き延びて、何が何でも生き延びてから、お前が大丈夫になったら死んだ俺の事を思うて泣いてくれと。それが二番目の親孝行…それ、まあ、むちゃな話してるけど、ああ、此の子も人の親になったんかなと…でしょう?どこにいますよ?自分大事で、子を見捨てて自分が生き殘るんが…

圓「眞夜羽くん、かわいもんな(と故意にしみじみと圓位は和哉に)

和「二番目のも…

圓「お前が?紘に?

和哉は黙った。

圓位も默った。

やがて圓位は云った。「違うの?

和「俺は知らない…一人で…でも、あいつは、たぶん、…

圓「紘の子か?

和「俺、なにもあいつに聞かなかった。…おれら、遂に、自分の子供出來たで、と。あいつ…

圓「よろこんだ?

和「わからない。けど、ちょっと変だった…

圓「變?…

和「わからない…俺の子?…ちがうかな…わからない…けど…

圓「奧さん、連絡取り合ってた?彼と。

和「それはもう。だって、…あいつの奧さんとも…だって、…俺ら…あいつ、俺らの爲にしてくれたんだから、いっそ、それは全部、家族ぐるみ、

圓「じゃ、いい。

和哉は默した。

圓「わからないんなら、默っとこ。なにもなかった。あんたの子よ。…どっちもな。

和「俺、全部嘘。

圓「もういい。

和「なんで?俺…なんで?

圓「もういい。默っとれ。

圓位はそういった。

時に4時半すぎ。店に向かった。







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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