多香鳥幸謌、附眞夜羽王轉生——小説56


以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



彼に…可哀想…

罪の意識。惡いから、やってること、全部惡だから…赦さない…許せないから…恨む。いじらいしい。自分も。憐憫?

自分さえ恨むけど。…でも

愚僧問。可哀想?

女ノ聲曰。愛しいから。彼だけは私をわかってくれる…けど生理的に無理だった。

愚僧問。じゃ、断れば。

女ノ聲曰。無理。

愚僧問。なぜ?

女ノ聲曰。だからいろんな意味で無理。本当嫌だった。眞砂のお父さん死んで、すっごく、樂になった。

愚僧問。嬉しい?

女ノ聲曰。哀しいよ。本気で泣いた。…泣きじゃくった。眞夜羽も泣いてたけど、あれ、私の真似したのよ。…お母さんがそうするからそうする…そもそもあの子、眞砂さんなんかもう忘れちゃってるくらいで、それがホント…眞砂さん、なんにも…

あやしてやりさえしなかった。

愚僧問。放ったらかし?

女ノ聲曰。本当に、…

愚僧問。でも、孫じゃ…

女ノ聲曰。ないから。自分の子供だって知ってるから。心咎めたの?あれ。

愚僧問。じゃ、和哉さんとは?…なかったの?

女ノ聲曰。あった。

愚僧問。じゃ、わからないでしょう?

女ノ聲曰。わかりますよ

愚僧問。なんで。

女ノ聲曰。似てるでしょう?

愚僧問。眞砂さんに?

女ノ聲曰。そっくり。私メインに、あの人載せたらあれ

愚僧問。隔世遺伝って言って

女ノ聲曰。関係ない。…事実としてそう、で、

愚僧問。それからは?一度や二度じゃなかったと、

女ノ聲曰。生まれてたらも。当然。生まれたあとも

愚僧問。じゃ、

女ノ聲曰。妊娠?

愚僧問。しなかったの?

女ノ聲曰。した。何回も。下ろした。全部。

愚僧問。なぜ?

女ノ聲曰。なぜ?

愚僧問。どうして?最初の子、…眞夜羽生んだ、次の子、でも、こんどこそ和哉くんの子供かも、

女ノ聲曰。もういや。

愚僧問。なんで?

女ノ聲曰。みんなの冷たさ判ったから。

愚僧問。誰の?

女ノ聲曰。眞砂さん…あの、自分の子に、あれ、なに?だから全然なつかない…

愚僧問。でも、

女ノ聲曰。お母さん。和哉。みんな…あれ、全部嘘。

愚僧問。じゃ、

女ノ聲曰。妊娠したら、その度に広島で、…廿日市で…あれ。何佪下ろした?

愚僧問。そんなに?

女ノ聲曰。そんなに。

愚僧問。それでも堪えたの?

女ノ聲曰。絶えた?

愚僧問。なにも云わずに…

女ノ聲曰。絶えるって?

愚僧問。…我慢する。

女ノ聲曰。なにそれ。もうそういう意思の問題じゃない…

愚僧問。ちょっと待って

女ノ聲曰。なに?

愚僧問。あなた今…

女ノ聲曰。何で知ってるの?見たの?

愚僧問。一重さんが喜んで、それはもう…だから下で逢った時も喜んで、私にも、

女ノ聲曰。嘘。

愚僧問。それは和哉さんの?

女ノ聲曰。死んだからね。死んで射精する亡霊いるの?いたらやだ…

愚僧問。でも、あなたもうれしかったでしょう?

女ノ聲曰。眞砂の父、死んだとき?

愚僧問。妊娠した時。

女ノ聲曰。なんで?

愚僧問。ようやく、間違いなく和哉さんの…

女ノ聲曰。意味ある?

愚僧問。意味?

女ノ聲曰。和哉の子供、喜ばなきゃダメなの?

愚僧問。いや、

女ノ聲曰。じゃ、私何なの?

愚僧問。あなたは、

女ノ聲曰。なにそれ。莫迦にしてる

愚僧問。あなた思い違いしてる

女ノ聲曰。関係ない…おろしてやろうか?

愚僧問。まさか

女ノ聲曰。どうする?

愚僧問。それは、健康に気を付け、くよくよせず、惱まず、元気な

女ノ聲曰。で、元気なのうまれた、と、して、…どうする?

愚僧問。どう?

女ノ聲曰。顏、又眞砂と同じだったらどうする?

そう女の聲は云った。

女は默止した。

愚僧も默止すより他にすべなくもだし、故、鳥の翅音を聞いた気がした。

是は聞きちがいだろう。まだ早い故。

未だ夙夜。

女云いけらく、行きますよ、と。

愚僧問いけらく、行く…と、したらば女答えるにそろそろ歩きだすから。

女は云う、あの、眞砂の子供が、ひとりで步きだすから。

云って、謂い終わらぬに聲を亂して笑い笑いの聲は女の聲の語尾を乱した。

立ち去るのは一瞬だった。

襲われかけた、それこそ鼠の逃げるようにも身を翻し、襖を叩き開けて消える。

足音を聞く。

愚僧老体(已に九十前也)の爲、寝姿から起き上がるのに苦労す。

此の日も。

故ようやくに聲あげなら起き上がって立てばあけ広げの衾の向こうに人影なし。

離れ裏の樹木に鳥数羽。

鳴く。

すでに日は明け染め、空、明るんで朱を曝すやらん。

樹木翳る中日昇見せぬに視野に物の影あかるみ顯らかになりゆく。

ひとり、愚僧、一家の行く末案じをり。

事の次第以上。

山羽さんにはこのこと謂わず。何故?…云った方がよくも思い思いしつつ、言いだしかねつ。

又今案ずるに、深雪さん山羽女史云うところの眞夜羽の妄想にひきずられ妄想し妄想にとらわれたものか?

誤解なきよう附言、

件の眉村眞砂氏、誰に聞いても善良と答えるべき人と爲りの人。

間違っても深雪さん云所の一件、事実とは承服し難し。

ただ惱ましき。

又今朝がたも深雪さん寺に來るか否か案じてをったものの今朝は彼女來たらず。

其の事確認しをはり爾乃今記しき。

  以上9月6日朝。沙門圓位

(文書5)

記。

布琉輸伎波

迦都曾祁奴良志

阿志飛伎腦

夜魔能多伎都世

於登摩沙琉那利

2黃いす儘コココ2淤鵜もののコココ2追消去故コココ不2王Oココリ

古游季齒勝蘓不消去螺四蘆疋山滾津生不響瑠儺驪

私記。

〇雜部(QK)

(久村‐迦賀三)

2019.09.08.Line文字

瞿村。

 いまどこ?

鏡見。

 なに?

九無囉。

 いま大丈夫?

伽伽彌。

 大丈夫

玖叢。

 お前さいきん絵かいてる?

屈身。

 かいたね

 さいきん

 何?

句務蓏。

 売った?

果蚊美

 いや

 なんで

久村。

 そもそも円位さん知ってる?

鏡。

 知ってる

 お前教えたでしょ

久村。







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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