多香鳥幸謌、附眞夜羽王轉生——小説11
以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
逢ってみられます?と比呂子が云った。
これから?
それとも、昼から?ひとりで行けないですよね…(髙長氏、だったら、ぼく(…と私に)、一緒にいこうか?(…と比呂子に))面會なんて私たちしかいかないから、刺激も無くて。毎日同じ事の繰り返し。よかった、あとで連絡しておきますよ。と。比呂子。
私。いや、…場所敎えて戴ければ、ひとりで伺いますよ。お手數なんで…
落ち着いたところで髙長氏から根掘り葉掘り眞夜羽について聞かれた。氣になって仕方ないのだろう。
私云、髙長さんは、お逢いになられました?
髙。いえ。なんか、いらっしゃったらしいけれども、その時は
比。此の人には言わなかったの。
私。なんで?
比。話が話だし。…心配させたくないっていうか、だって、いきなり死んだ子供が生まれ變ったらしくて…とか、ねぇ?だから一回、逢わないとなんて。
髙。その日…あれ、今月の頭かな…
比。先月末じゃない?
髙。歸ったら、いつになくにこにこしてて。どうしたんなら、と。話がある、と。なんじゃ、と。びっくりせんか、と。
比。やっぱり、氣をつかうから…
髙。比呂斗くんが…子供の方のね、あの子、生まれ変わったらしいよって。ストレートに謂うから、
比。だって、自分でも信じられないからな…
私。信じてないの?
比呂子は私の顔をみて、そして須臾見つめ、崩れるように笑った。
比。あの子は…比呂斗くん…じゃない眞夜羽くん…ちょっとおかしいところあるとおもいません?
私。おかしい?
髙(ほぼ同時に)。そうなの?(…と、腕組みしたまま上を見上げて云、故、比にいったのか私にいったか不明だった)
私。例えば?
比。默止(うー…ん)
私。どこ?
比。クハラさんはどう思いました?
私。いや、いろいろ混亂してる感じはありましたね。
比。例えば?
私。全躰的に。話が唐突なんですよ。で、人の話、あまり聞かない子だよね。自分で勝手にしゃべってる感じ
髙。まだ7歳?6歳?その年の頃だとそんなもんなんじゃない?(比呂子に)
私。奧さんは、でも何?…何がおかしいの?気に障ったの?どんなところ?
比。だって、比呂斗の生まれ變わりなんでしょ?
私。自稱は、そうですよね。
比。あの子、…眞夜羽ちゃん、あの子、私みた瞬間に淚ぐんだんですよ。
私。淚?
髙(同時に)。泣いたの?
比。泣きはしないけど。上目遣いに。涙ぐんでみて。それからなんていったと思います?
髙。何?
比。いきなり飛びついてきて、それからお母さんって。叫ぶみたいに。あっちの奧様…眉村…
私。深雪…
比。びっくりした顔して…ご主人もだけどね
私。なつかしいから…前世の我が母だからってことじゃないですか?
比。でも、どうしても、そんなに記憶って殘るもの?
私。ん…でも、ま、殘ってるって言ってますね。眞夜羽は。
比。かぐや姫の話あるでしょ。
私。かぐや姫?
比。あれだって、月に歸るとき記憶無くしちゃうじゃないですか?
髙。そうなの?
私。よく知ってますね…
比。絵本。比呂斗に…おかしくないですか?記憶なんて、殘るの?聞いたの。わたし。その時に…あの、…なんていうの?靈界?
髙。あの世?
比。死後の…死んだとき、苦しかったね、どうだった?つらかった?って。
私。いつ?
髙。落ち着いたとき…知ってます?すごく失禮なの。
私。だれ?
髙。旦那のほう…
私。眞砂。
髙。あのひと、なに?やくざみたい。人、脅迫するみたいに…拜見しますよ。家、拜見しますよ…とかって。ずかずか家の中に入ってきて、それで、そこの佛壇とか…
私。あ、そう謂えば、比呂斗くん…息子さんの方の…あちらの写真とかは飾らないの?
比。…飾らないの。
私。なんで?
髙。見れないんですよ。
私。見られない…
比。だって…
私。お察しします。
比。あいつ、本当に失礼…
私。彼も、何か言ったんですか?
比。なにかも、全部話してくれって。だから、いや、あなたが連絡してきたんでしょう、と。そっちから洗いざらい話すのが筋でしょうが、と。そしたら、…氣がよわいのよ。女が怒鳴ったから。すみませんって…謂いはしないけど、そんな感じで話し出して…
髙。付き合い考えた方がいいな。
比。仕方ないじゃない。
私。で、…
比。なんとなく、話すだけ話して…眉村さんのほうが、ね。そうしたら、わたしだって思うところがあるじゃないですか?胸にこう…
私。去來するものが。
比。こみあげてくるもの。…から、ね。云ったの。眞夜羽くんに…あれ、…あの子…
髙。その子?
比。奇麗な子ね(髙長氏に)…ですよね?(私に)
私。女の子かなって思いませんでした?
比。そう。可哀そうな、すごくいじめられてる…家で、すごく…
私。髮型でしょ?
比。そう…(と云ったとき、私は慌てて話を逸らそうとした一瞬をたぶん顏に曝したのだと思う。比呂子は呆気に取られて、わたしを見直した刹那、軈て聲に笑って云く、)気にしないでください(きにせんでぇえですよ)これは…
髙。髮型でしょ?(私に)
比。比呂くんへの、追悼…本当は…わかるでしょ?わかっていただけますよね(ひとりごちるような発話)…あんな…本当は、頭まるめてって、思ったけど…
髙。仕方ないよな…
私。でも、最初出逢われたとき…
髙。ぼくら?
私。失禮。夜のお店でって、聞いたんですけど。
比。だって、わたし接客してないもの。したけど。バーで。バーテンダー。バーラウンジの。ショーパブみたいなところの。ドレス來てお化粧してヘアメイクして甘ったれた聲だしてみたいな、そういうやつじゃなくて。そういう子たちにお酒作ってあげてただけ。ドリンクバックあるから。よく飲むの。社交の子たち。比呂ちゃぁん、わたしの、薄めに作ってって。翳で。ノンアルでぇって。酔っぱらったふりだけ。
私。じゃ、スタッフさんの方?
髙。接客もするけどね。ホールに出てるから。で、私と逢ったんだから。ただ、あくまでバー接客ね。
私。それでそういう髮型でも
髙。ひどいんですよ。嘘ついてたんだから(笑う。比呂子も)
私。嘘?
髙。此の人は、みんなに。客にね。俺、心の中男なんだよねって。
私。性同一性…
髙。おかまちゃん。じゃない、おなべちゃん?坊主あたまだし、ほら、バーの。ベスト着て蝶タイにパンツだからね。あれ、或る意味男裝じゃない?信じちゃってね、みんな。
比。面倒くさいからよ。
私。じゃ…失礼。なんていうんだろう?最初に…なに?お附き合いしませんか的な、そういう…口説く?じゃないけど
髙。愛の告白?
私。それは、比呂子さんから?
比。此の人(…といって、笑った)
私。じゃ、ご主人、同性愛なの?(これは冗談で言った)
髙。それとなく氣付いたの。こいつ女だなって。
私。いつ?どんな時?
髙。ふと、振り返った一瞬とか…なんか、匂ったんですよ。
眞夜羽、比呂子と対面し「死」について聞かれたときの始終(これは比呂子が話したもの)。
比。苦しかった?…あっち…あっち行ったとき苦しかった。(比呂子曰く、玄關口ではじめて見かけたときからしがみついて離れなかったので、膝の上の眞夜羽にはなしかけたのである。)
眞夜羽。いつ?
比。こっちから、あっちに…
眞夜羽。ここにいるよ。ぼくここだよ
比。前、比呂斗だったときに…眞夜羽ちゃんになる前に…
眞夜羽。死ぬとき?
比。苦しかった。
眞夜羽。比呂斗はくるしかっったよ。死ぬから、…壞れるから、体は苦しいよ。死ぬから。けど。…でも、大丈夫だよ。
比。眞夜羽くんは大丈夫だったの?
眞夜羽。ぜんぜん平氣だったよ。
比。比呂は苦しかったの?
眞夜羽。比呂も苦しくないよ。僕、比呂だったよ。
比。…ね。どうだった?
眞夜羽。死んでから?
比。天国いった?
眞夜羽。天國?
比。お空の上のね、綺麗な、
眞夜羽。おかあさんかぐや姫好きだったもんね。いっつも讀んでたもんね
比。行ったの?天國。
眞夜羽。天国なんてないよ。
比。ないの?
眞夜羽。地獄だったらあるよ。
比。怖いね。
眞夜羽。こわくないよ。太陽だって地獄だよ。海王星も地獄だよ。だって、ぼくたち以外に生き物居ないよ。ぼくたちみんな間違いだから。
比。地獄に居たの?
眞夜羽。綺麗だった。
比。地獄が。
眞夜羽。空の上。雲の上。もっと…雲って、めちゃくちゃつめたくって、めちゃくちゃ堅いよ。
比。堅いの?
眞夜羽。さわれないけど、でも、なんか、すっごい固い感じだよ。怖いよ。
比。大變だったね。
眞夜羽。大丈夫だよ。すぐだもん。足の下に地球見てたよ。足ないけど。下にうかんでるじゃん。めっちゃくちゃ。怖いよ。
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