多香鳥幸謌、附眞夜羽王轉生——小説5


以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



 答。ぜんぜんちがう。かたち、全然違う。かたちじゃ(シァ)ないよ。

 問。もっと、もっと…なに?…ちがうの?

 答。水(或は未遂)みたい。(みすぃみたいト發音シタ)

 問。顏?新種?

 答。シンス。でも、もういんだよ。

 問。なにが?

 答。もう、いいんだよ。何も、むずかしくね、考える事無いよ。もういいんだよ。(「いいん」は実際の発音はすべて「いん」)

 深雪(ここで深雪がいきなり會話に入ってきた。ただし、獨白じみた言い方。ひとりごちるような?故、聞く)。でも、不思議で。なんとなく。ここから、茨市…岡山でしょ?フェリー乘ってね。それか山陽線で。…新幹線も髙いからね。廣島に行けばあるんだけれども。福山行き。となりだからね(じゃけぇね)。山間のね、髙い處、…なんていゆうん(謂うの)?海抜?髙いところ?山間じゃけえね。行く(ゆく、と発音)んじゃけぇども、なんか、なつかしうてな(懷しくてね)。

 私。記憶、蘇る感じ?

 深。行ったことないんですけどね。茨なんかね。

 私。朝、聞いておどろいたんじゃないですか?

 深。なにを?

 私。これから茨行くって。生まれ變わりで茨行くって。

 深。なにをいゆうとられるん(何を云ってるの)。福山の驛についてからで。これから茨の眞夜の實家行くうてきいたんわ(と聞いたのは)。

 私。そのときはじめて言ったの?奥さんに?(和哉に)

 和哉(笑う)。だって、信じられないでしょ(和哉の發話は基本的にすべて方言で話された。)

 私。そのとき、奧さんは何て?

 和。こいつですか?

 深。行ってもしかたないと。昔はどうでも本等でも嘘でも、今の眞夜は眞夜なんでと。

 和。でも、逢いたいといってたな(しゃあけどあいてぇいゆとったな)。

 私。誰?沼田さん?

 深。額田さん。逢ってみたいは、そうですよね(おうてみてぇいやぁそうよな)

此処で自然、なしくずしに休憩は打ち切られる。

以下、和哉が中心になって語ったもの。(とはいえ…)

 水曜日(7月30日)晴れ。福山駅からタクシーで茨の額田邸に行く時に。親子會話。

 和。雨、ここらへん降らなかったのかな?(前日まで何日か連續雨だった。故、家を出る時(早朝)路面も濡れてた。…と。是、和哉の談話。)

 深。島だから、島だけ降ったんじゃないの?

 眞。降ったよ。乾いたんだよ。

 深。なんでわかるの。

 眞。天氣予報。

 運轉手に聞いたら、實際雨だったらしい。路面、もう乾いたみたいですね、云々。

これは、いきな額田さんとの邂逅の話をしかけた夫の話の腰を折って、奧さんの方が話し始めたものなので、それで妙に印象に殘ったもの。

 茨の西蠅原町は結構なさびれたところで、運轉手に見せた住所をカーナビも正確に示してくれなかったらしい(地図データにアップされてない細かい道が…)。で、散々迷う。あるとき、眞夜がとつぜん、道を指示しはじめる。まっすぐ、そこみぎ、とか。運轉手笑う。わしよりくわしいんじゃのういゆうてからわろうとられたんじぁけえどが…(県道何號とかなんとか道を謂っていたが、はっきりいって私には判らない。)

 四面畠の眞ん中に(山際の段地)一軒家あり。眞夜羽云、あれだよ。

 タクシー止めて表札確認、たしかに額田、と。ここで親子は降りる。

 呼び出しベルならしたら、フェイスブックで見た女の人がドアを開けた、と。一瞬デジャブ感じました、と和哉。

 最初、応接間に通されて、一通り話す(時節の挨拶、家を褒めて、町を褒めて、それから転生談…)。額田驚くそぶりもない。和哉曰く、冷たい感じの人で(美人なんだけど、ひやっとするかんじの…云々但し方言)。

 私。奧さんに問う。どんな感じの方だと思いました?

 奧さん。いや、ふつうに親切で、…若くてね…と。

 私。眞夜羽に問う。眞夜はどう思った?

 答えず。

 私。お母さんにあったんじゃない?もうひとりの…比呂美の方の(間違い)。

 眞夜羽。比呂斗だよ。ぼく(保久)女じゃないよ。

 私。比呂斗の。

 眞夜羽。見なかったよ。

 私。なにを?

 眞夜羽。ぜんぶ(ぷ)

 私。なんで?(と言いかけた時に、唐突に深雪、そうなんですよ、このこ、おうちおじゃましたときからじいっと眼ぇとじてうつむいとってからに沓ぬがすときも眼ぇとじとるからもうこのこ挨拶ぐらいしぃいぃゆうて…云々)

 私。見たくなかったの?

 眞夜羽。見れらな、見られ、見らるい

 私。見られない?…見れない?

 眞夜羽。お母さん、ぼく、何回もころしたもん。(此の時、此の子は精神病院に連れていけ、と私は思った。おじいちゃん、おかあさん、なんでも殺したから、殺したから、と。一度カウンセラーに掛けろ、と。ぜんぶ虛言だぜ、と。)

 私。おかあさんも。

 眞夜羽。殺してないよ。殺せないよ。けど。殺したよ。ぼく。ぼく死んだから、ぼくが死んじゃったからね、おかあさんの心、ぼく、殺したよりむごいよ。だから、何回も、毎晩ころしたよ。ころすより、もっとむごくころしたよ。(むごい、方言、ひどい、残酷な、)(此の時に深雪唐突に泣き出す。すすりあげる。しゃくりあげる…母の共感?)

 私。じゃ、見れなかったね。

 眞夜羽。見られなかったよ。

和哉に話の續きを促す。即ち、額田さんの方の比呂斗くんは、どんな次第だったんですかね?

額田曰く、

 額田比呂斗くん。六歳で亡くなってます。一年前…いや、眞夜羽が生まれる、一年前ですよ。

 私。そもそも額田さん何歳?

 和。今、二十六…じゃなくて、七?逢った時、六。そのあと、誕生日あったよな。

 深。プレゼント送ったげたな。眞夜な。(と眞夜に)

 和。くまのぷーさん

 深。りらっくまよ。昔の。中國製のやつな。

以下、傳聞をまとめる。

額田比呂子、生年1992年。誕生日9月20日(たしか北斎と一緒じゃない?違うか)。

2006年(14)、2月12日、比呂斗、生まれる。(未婚)

2008年(16)、アルバイト勤務(スーパーレジ、サニーマート茨中央店)

2009年(17)、アルバイト勤務(飲食店ホール、すし三郎茨駅前店)

2011年(18)、アルバイト勤務(パチンコ・スロット店、アルバトロス茨)

2012年(20)、6月21日、比呂斗(7歳)、死ぬ。

同年、アルバイト勤務(接客、パブラウンジ順(茨))

2013年(21)、6月20日、眉村眞夜羽生まれる

2014年(22)、アルバイト勤務(接客、ナイトバーX girl茨)

2016年(24)、髙長恭介(當時52)と結婚。養子縁組。

2019年(27)

詳細。

・比呂斗出産について。(以下問は久村。)

 問。14歳で出産?

 和。詳細は聞きかねた。本人曰く、大變でしたよ、と。

 問。父親は?

 和。知らない。聞かなかった。

 問。未婚出産?

 和。たぶん。

・高校進學等

 和。していない。育児に追われるから。

 深。アルバイトを轉々と。時に掛け持ちで。

・家族等。

 和。母親はいたと思う。

 問。確認しなかったのか?

 和。初対面で聞けることと聞けない事がある。母親の話はしていた。出産を応援し育児を手傳い支援をしてくれたと。他の親族に対する恨み言を謂っていた。

 問。どんな?

 和。口先ばかりで何の役にも立たないと。

 問。今は母親と同居か。

 和。いなかった。新しい位牌があった(比呂斗のとなり)。それがその母親なのではないか。

・比呂斗の人と爲り

 和。いるのかいるのかわからないような、けど素直な子。そう云った。

 深。おとなしい子だったみたいだ。

・比呂斗死因。

 和。詳細は知らない。苦しまずに死んだのがせめてもの、と。そう云っていた。

 深。おそらく病死だろう。

 問。なぜそう思ったのか。

 深。さいごのころは、やつれちゃって、いたいたしくて云々の述懐を聞いた。

 和哉には違う印象を与えている。意外そうな顏をして曰く、交通事故とかじゃないの?と。なんでそう思ったんですか?答え、突然だったからね、びっくりして云々云っていた、と。

・髙長氏について。

 和。年配の自営業社長(建築業)である。

 勤務の水商売店で知り合った。交際、最初は斷ったが、遂に承諾した。

 「家の跡を繼がなければならないので」養子縁組でお願いした。

 髙長氏は現在天涯孤独の身の上である云々「おたがい、自由な身の上だから、お互い、たすけあいましょう」そう云われて心をつい赦してしまって云々の述懷を聞いた云々。

 深。テニスが趣味である。ラケット等が玄關に置いてあった。

 問。奧さんのじゃなくて?確認したの?

 深。あれは男の持ち物だ。

 問。なぜ?

 深。ブランドものの(と深雪は云った。思うに、スポーツ用品メーカーの)カバーにしまわれていたから。(これ等の根拠はあくまで深雪のもの。)

私が不意に押し黙って仕舞った一瞬(たしか、髙長氏のプロポーズが云々の話(自由の身の上だから…)のときに、なんというでもなく、次の質問を考えるともなく考えて居る時、そういう一瞬だった。)

眞夜羽が低い聲を喉から絞り出す(謠う時の聲?變聲期前の聲なので、かなり異質な響きに聞こえたとは和の述懷)。

その聲の語りたるところ以下の如。

 乎乎乎乎

 乎乎乎乎

 比伊伊婆阿阿理伊波阿阿阿伊彌阿阿

 比伊伊婆阿阿理伊波阿阿阿伊彌阿阿

 阿阿米邇伊伊迦阿氣衣衣衣流宇宇宇

 多阿阿迦阿阿由宇玖宇宇宇夜阿與波

 波阿夜阿夫宇宇佐阿和阿阿阿氣衣衣

 佐阿阿邪阿阿岐登於於於良伊佐阿泥

 乎乎乎乎

 乎乎乎乎

女鳥比賣の歌、か。

クセのあるフシ。髙低上下激しい。今の感覺では、あきらかに異物感あり。







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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