天人五衰——啞ン癡anti王瑠我貮翠梦organism。小説11


以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



たゞ戯れたにすぎないかにもふれた阿憂迦は指先に唇を沙羅の厥れやわらかな唇男など知らない未だ見た事さえもないから沙羅は翳り陽炎死人か乃至圡にまじって腐った肉體かつて男だったものらその屍厥れ以外には沙羅はだから知らない沙羅の唇は阿由迦の唇も男などだから阿由迦はふれたその唇自分にふれられる爲にしかもはや存在しないやわらかな色淡い色彩色のふいに浮かび上がって流れ出したような沙羅のすこしだけひらいた開くかすかにだけ開くだからひそかにつぶやく阿憂迦は心のうちにだけだから思う阿由迦はひとりだから聲もなく阿由迦はだからつぶやけらくさしこんであげる

とつぶやきかんじてとさゝやき阿由迦は聲もなくあなたのしたがかんじられるように

とつぶやきかんじてとさゝやき阿由迦は聲もなくあじを

とつぶやきかんじてとさゝやき阿由迦は聲もなくかんじて

とつぶやきいまとさゝやき阿由迦は聲もなくわたしのゆびのあじ

とつぶやきかんじてとさゝやき阿由迦は聲もなくわたしがひとりではないというじゞつをいまもなおもかんじさせる爲だけに

と阿由迦はあなたはかんじた

と阿由迦はあじを

と阿由迦はわたしのゆびの

と見る阿由迦は沙羅その不意にひらいた左の眼霑う網膜はその白濁なゝめに差す光の白濁映る瞳に厥れら死人の翳り陽炎色のゆがみをだから沙羅に見蕩れた阿由迦の眼にも斯毗斗ノ迦猊唎爾に迦猊呂比那我良迦多羅久かクに聞きゝそノ年ノ冬に雪ノ降ることハなかリき又雨の降ることハなかリき比斗ら爾に虛空ヲ見あゲき比斗ら虛空を見あゲて瞰上ゲたりてそノ目比琉に常に虛空ノ靑のミ見きその目與琉に常に虛空ノ黑のミ見き故レ已にシて地表乾きゝ故レ已にシて地表比毗和禮伎故レ比登なル比登と比登なル比登ら悉くに宇惠弖迦和伎伎何以故比登ら生ケるもノらを屠りト殺シその死絶えタるかたちを焦がシて喰らフ生體なりきト殺さルべきもの比登らト殺する前にこトごくに躬ヅから乾き餓ゑ病ミ死に滅ビたりき故レ比登らが屠り喰らフべきもの已に無かリき以是故比登ら植ゑたりき綠なス物らだにヒからビき故レ圡ノ色のみさらシたりき故レ比登ら是レを飢ゑと名ヅく故レ比登と比斗ら餓ゑテ渇きゝ故レ爾に加愚摩と加夜加餓ゑテ渇きながラに俱なりテ娑娑彌氣囉玖

 ひたすらに

  誰もがもはや

 輝る日の光りは惠む

  知っていた

 大地は割れた

  だれもがもはや

 だから底までひからびて

  なにもかも

 ひたすらに

  樹木さえもが

 輝らす日は綺羅らぎ

  乾き切り

 喉は吐く

  そしてみんなは

 だからひゞ割れた躬づからの血を

  死んでいく

 とめどもなくに

  みんな一緒に

 乾いた喉に

  それぞれの

 かけがえもない

  孤立した死を

 イノチのかがやき

  それぞれに

 かけがえもない

  みんな一緒に死んでいく

 イノチのかたちを

  わたしは渇く

 照らす日はだから晒した

  わたしは餓える

 そのあざやかな光りに

カくテ迦夜香

  わたしは渇く

爾に都儛耶氣良玖

 聞いた。

 耳は。

 異常氣象だと。

 聞いた。

 誰もが謂った。

 だから聞いた。

 わたしの耳は。

 誰もが云った。

 狂気したと。

 聞いた。

 気象さえもがと。

 だからさゝやく。

 わたしの口も。

 同じように。

 異常氣象だと。

 壊れたの?

 思う。

 地球さえもが。

 思う。

 狂ったの?

 思う。

 大氣さえもが。

 思う。

 狂ったの?

 と。

 あるいはあたらしい變態を?

 と。

 だからこの地球さえもがあたらしい在り方。

 あたらしいカタチを?

 存在しなかった。

 空はもはや。

 雨を降らす爲には。

 存在しなかった。

 空にはもはや。

 すこしの潤いさえ。

 存在した。

 空はもはや。

 あまりにも素直に太陽をだけ見せつける爲に。

 だから光りを曝す。

 靑い空。

 だから冴え渡る。

 雲さえなく。

 たゞ無垢に。

 あまりに無垢に。

 だから澄み渡る。

 耀いた。

 空は。

 雲の綺羅さえもはやなく。

そノ一月に雨なクて家畜ら死にタりきその二月に雨なクて池川ノ水ひあがリきそノ三月に加愚囉ノ加愚摩病ミき寢臺が上に右手ふるえタりき寢台が上に瞼引き攣りタりき寝臺が上に唇ひビ割れタりき寢台が上に喉は乾きたリき寝臺が上に網膜ダにも已に乾キたりき故レ果夜迦爾に渇く加愚摩ト俱なりテ娑娑彌氣囉玖

 ぼくは死ぬ

  口が吐く

 毛孔さえもがひからびて

  なぜ?

 ぼくは死ぬ

  躰内にさえ

 髮の毛さえもがひからびて

  吐かれるべき

 ただひろがる色は

  霑いなどもはやないときに

 雪を色にだけ兆させ

  口が吐く

 思い出す

  ただ灼けるような

 ちゞれた髮の褪せた白に

  傷みと味

 指先にふれ

  苦い味と黃色の

 溶けて消え去る

  藥品じみた

 その雪を

  ねばる臭氣を

 髮の黑にふれた雪

  猶も口が吐く

 指に掬えば

  喉は知る。その味に

 その温度に

  いまだかろうじて

 ゆっくり靜かに

  躰液の存在していたことに

 水になる

  すでにして

 霑え

  ねばつく淀んだ

 震え

  穢れた躰液

 ちぢんだ指は

  臭む纔かの水分を

 潤え

  喉は吐く

 ひゞ割れ

  口が吐く

 ひからびた痙攣

  わたしは朽ちる

 沾え

  わたしは枯れる

 すべて

  もはや眼さえも

かクて伽耶迦

 せめて沾え

爾に

 その幻のうちに

都儛耶氣良玖

 夢を見た。

 餓えながら。

 その夢を見た。

 渇きながら。

 あるいはだからこそ?

 餓えと渇きの故に?

 夢を見た。

 ひろがった。

 その夢に。

 霑い。

 膨大な霑い。

 それ巨大な海。

 拡がった。

 それは塩水。

 巨大な水。

 たっぷりの。

 広がった。

 それは綺羅らぎ。

 奇麗な光り。

 喉を灼く水。

 汐滿ちて。

 喉をひからびさせるだけの水。

 イノチあふれて。

 他人のイノチをいっぱいにあふれさせて。

 綺羅綺羅と。

 塩の海。

 綺羅囉綺羅囉と。

 渇きの水は。

 由羅由良と。

 散らす。

 月の光に。

 綺羅めきを。

 炎立つ。

 渇きの海は。

 塩の煌めき。

 絶望をだけ綺羅らがす。

 見て。

 その綺羅らぎ。

 鹽薰る。

 見て。

 その由羅らぎ。

 わずかさえの同情さえない。

 イノチさえ。

 わたしに同じイノチなすもののイノチさえ。

 容赦ない海。

 わたしの目にだけ擴がっていた。

 容赦ない水が。

 ——あいつのせいだよ。

 聲。

 少女が聲にさゝやいた。

 わたしの背後で。

 ——あいつのせいだよ。

 せめて溢れよ。

 わたしの背後で少女の聲が。

 ——あいつがぜんぶ、

 滂沱の淚。

 私の背後に。

 ——ぜんぶ、あいつが、みんなを殺すの。

 少女が云った。

 號泣のわたしの背後に。

 ——あいつのせいだよ。

 溢れでよ。

 眞水の綺羅の

 ——あいつのせいだよ。

 その淚。

 ただわたしの渇きをいやす爲に。

 ——だれのせい?

 ひろがっていた。

 振り返れば背後にも。

 綺羅らの海は。

 四方の海。

 厖大な水。

 由羅らの海は。

 四方を盈たす。

 だから綺羅らぐ。

 浮かべた。

 ——違う。迦具夜比古。

 その

 ——あつだよ。

 異形の少女は

 ——迦俱耶比古。

 目の前の

 ——あいつだよ。

 その

 ——迦俱耶比古のせいだよ。

 魚の鱗を髪の毛の表面にさえ浮かべた。

 彼女。

 鱗なす少女がうすくかすかに笑み乍ら云った。

 ——迦具夜比古がみんなを渇かす。

 さゝやく聲に。

 いつくしむように。

 あわれむように。

 目の前のわたしを。

 彼女が見ていたわたしをもはや赤裸々なほどに。

 さゝやくように。

 いつくしむように。

 あわれむように。

 魚鱗の肌の少女はこぼす。

 笑みを。

 私の眼のふれそうな至近に。

 鱗なす肌。

 きらめいた鱗のひとつひとつに。

 搖れた。

 かゞやかしいこまやかな綺羅。

 鱗の柔毛。

 やわらかな気配。

 だから柔毛はひとりで搖れた。

 ——だれ?

 言った。

 さゝやく唇に。

 わたしは。

 だから耳さえその聲を聞いた。

 ——迦具夜比古ノ美古斗のせいだよ(殺しちゃえ)

 少女は云った。

 ——あなたをみんな(だから)ぜんぶ(殺しちゃえ)香俱耶比古が(ぶっ殺しちゃえ)殺すよ

 海は綺羅らぐ。

 すでに滂沱の涕は流れ落ちた。

 海は由羅らぐ。

 すでに滂沱の淚はあふれ墜ちた。

 海は陁由陁布。

 布良布良斗。

 由由良良斗。

 沙羅沙羅斗。

 だから海は綺羅らぐ。

 いまも海は由羅らぐ。









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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