天人五衰——啞ン癡anti王瑠我貮翠梦organism。小説2
以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
爾時焰燃え阿我唎伎爾時焰舞ひ踊りき故レ保牟囉ゆらぎ久琉比伎かくて宇陁我波ノ加彌迦そノ耳に聞きゝ怒號の群れなすヲ怒号の飛び散るを怒號の覆いとよむヲ爾に比登ら加虞良ノ加愚摩の變態の肉をガソリンの馨匂フ焰に燒ク且つは加虞良ノ加愚摩の覺醒の細胞を我曾唎牟ノ馨薰ル焰に燒ク比登ト比登らの句癡の放ツそれラ怒号すデに轟音とシて迦夜香が耳に聞キ取られたりき故レ迦夜香ひとり娑娑彌氣囉玖
聞くべきだった
もっと焰を、と
わたしたちは
だれかが云った
その耳に
もっと強烈な
無際限なまでに
強靭な焰を
無慈悲なまでに
燃え乍らにして
無數に擴がるそれ
燒け乍らにして
新しい
息遣う
イノチのかたちの慘殺されてゆく
無數のそれら
殲滅の音
細胞の
容赦もないほどの
脉打つイノチの群れに
絶望の音を?
もっと焰を
叫喚の聲を?
ふれることごくを
耳を掩う
刹那にさえも
轟音として?
燒き滅ぼす
わたしはなにも聞かなかった
そんな炎を
空の靑の下
燒き盡せ
わたしはなにも聞かなかった
焰もて
雲の綺羅の下
燒き盡せ
遙かな下に
焰もて
見上げもせずに
燒き盡せ
匂い立つ
焰を!
ガソリンと焰と肉の馨りのみを
燒き盡せ
かくて迦夜香
まばゆい綺羅の下
爾に
焰を!
都儛耶氣良玖
ふたりの目醒めた朝。
…どちらが。
どっちが先に?
鹿倉薰馬が。
むしろわたしが?
どちらかが。
立ちあがった薰馬。
不意の逆光。
窓のこちらに。
伸ばした指のとゞかないすこしの向こうに。
だから見上げた。
わたしは。
だから言った。
薰馬は。
女の子じみたやや低めのかわいいアルト。
鼻に懸かったさゝやき聲で。
——ね?
と。
——なに?
わたしは
——ね?
だから笑った。
薰馬は。
ひとりで。
わたしを返り見て。
おもいあぐねた眼差しのわたし。
わたしをだけ見て。
かならずしも見つめるわけでもないくらいに。
笑みんだ。
その笑い聲は無く。
——どう?
——なに?
わたしは既に知っていた。
——ね、…
だからすでに笑んでいた。
わたしは。
だから氣付かないふりをする。
薰馬の爲に。
——なに?
——ん?
すこし鈍感な彼にも間違いようもなく氣付かせられるような鮮明さで。
氣付かないふりを。
わたしは。
——なに?
ない。
もう何も。
——ん…
ない。
何ももう。
——言って。
薰馬に言いたいなど。
謂うべきことなど。
何もなくて、もう
——なにを?
云い得る事さえないまゝに今
——ね?
唇がかろうじて吐く
——ん?
音だけを吐く。
——言ってよ。
喉は。
だから薰馬は聞いたのだ。
わたしが立てたやさしい笑い聲。
その空氣のゆらぐ響くをだけを。
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