古事記(國史大系版・中卷25・應神1)
底本國史大系第七卷(古事記、舊事本紀、神道五部書、釋日本紀)
・底本奥書云、
明治三十一年七月三十日印刷
同年八月六日發行
發行者合名會社經濟雜誌社
・底本凡例云、
古事記は故伴信友山田以文山根輝實書大人が尾張國眞福寺本應永年間古寫の伊勢本他諸本を以て比校せしものを谷森善臣翁の更に增補校訂せる手校本二部及秘閣本等に據りて古訓古事記(宣長校本)に標注訂正を加へたり
且つ古事記傳(宣長記)の説を掲け欄外にはその卷數を加へて同書を讀まん人の便に供せり
(應神)
(傳卅二)
品陀和氣命、坐輕嶋之明宮、治天下也。
品〔ホム〕陀〔ダ〕和〔ワ〕氣〔ケ〕の命〔みこと〕
輕嶋〔かるしま〕の明〔あきら〕の宮〔みや〕に坐〔ましまし〕て
天下〔あめのした〕治〔しろしめしき〕。
此天皇娶品陀眞若王[品陀二字以音]之女三柱女王
一名高木之入日賣命
次中日賣命
次弟日賣命
[此女王等之父品陀眞若王者五百木之入日子命
娶尾張連之祖建伊那陀宿禰之女志理都紀斗賣生子者也]
故高木之入日賣命之御子
額田大中日子命
次大山守命
次伊奢之眞若命[伊奢二字以音]
次妹大原郎女
次高目郎女[五柱]
中日賣命之御子
木之荒田郎女
次大雀命
次根鳥命[三柱]
弟日賣命之御子
阿倍郎女
次阿具知能[此四字以音]三腹郎女
次木之菟野郎女
次三野郎女[五柱]
此〔こ〕の天皇〔すめらみこと〕
品〔ホム〕陀〔ダ〕眞若〔まわか〕の王〔みこ〕[品陀二字以(レ)音]の女〔みむすめ〕
三柱〔みはしら〕の女王〔ひめみこ〕に娶〔みあひ〕ませる。
一〔ひとはしら〕の名〔みな〕は高木〔たかき〕の入日〔いりび〕賣〔メ〕の命〔みこと〕。
次〔つぎ〕に中〔なかつ〕日〔ひ〕賣〔メ〕の命〔みこと〕。
次〔つぎ〕に弟〔おと〕日〔ひ〕賣〔メ〕の命〔みこと〕。
[此〔こ〕の女王等〔ひめみこたち〕の父〔みちち〕
品〔ホム〕陀〔ダ〕眞若〔まわか〕の王〔みこ〕は、
五百木〔いほき〕の入日子〔いりびこ〕の命〔みこと〕
娶尾張〔をはり〕の連〔むらじ〕の祖〔おや〕
建〔たけ〕伊〔イ〕那〔ナ〕陀〔ダ〕の宿禰〔すくね〕の女〔むすめ〕
志〔シ〕理〔リ〕都〔ツ〕紀〔キ〕斗〔ト〕賣〔メ〕に娶〔みあひ〕て
生〔うみませる〕子〔みこ〕なり。]
故〔かれ〕高木〔たかき〕の入日〔いりび〕賣〔メ〕の命〔みこと〕の御子〔みこ〕
額田〔ぬかた〕の大中〔おほおなかつ〕日子〔ひこ〕の命〔みこと〕。
次〔つぎ〕に大山守〔おほやまもり〕の命〔みこと〕。
次〔つぎ〕に伊〔イ〕奢〔ザ〕の眞若〔まわか〕の命〔みこと〕。[伊奢二字以(レ)音]
次〔つぎ〕に妹〔いも〕大原〔おほはら〕の郎女〔いらつめ〕。
次〔つぎ〕に高目〔こむく〕の郎女〔いらつめ〕。[五柱。]
中〔なかつ〕日〔ひ〕賣〔メ〕の命〔みこと〕の御子〔みこ〕
木〔き〕の荒田〔あらた〕の郎女〔いらつめ〕。
次〔つぎ〕に大雀〔おほさざき〕の命〔みこと〕。
次〔つぎ〕に根鳥〔ねとり〕の命〔みこと〕。[三柱。]
弟〔おと〕日〔ヒ〕賣〔メ〕の命〔みこと〕の御子〔みこ〕。
阿〔ア〕倍〔べ〕の郎女〔いらつめ〕。
次〔つぎ〕に阿〔ア〕具〔ハ(儘)〕知〔チ〕能〔ノ〕[此四字以(レ)音]三腹〔みはら〕の郎女〔いらつめ〕。
次〔つぎ〕に木〔き〕の菟野〔うぬ〕の郎女〔いらつめ〕。
次〔つぎ〕に三野〔みぬ〕の郎女〔いらつめ〕。[五柱。]
又娶丸邇之比布禮能意富美之女[自(レ)比至(レ)美以(レ)音]名宮主矢‘河枝比賣生御子
(河枝、寛本作阿枝、諸本及御本與此同、下傚之)
宇遲能和紀郎子
次妹八田若郎女
次女鳥王[三柱]
又〔また〕丸〔わ〕邇〔ニ〕の比〔ヒ〕布〔フ〕禮〔レ〕能〔ノ〕意〔オ〕富〔ホ〕美〔ミ〕の女〔むすめ〕[自(レ)比至(レ)美以(レ)音]
名〔な〕は宮主〔みやぬし〕矢〔や〕河〔かは〕枝〔え〕比〔ヒ〕賣〔メ〕を娶〔めし〕て
生〔うみませる〕御子〔みこ〕
宇〔ウ〕遲〔ヂ〕能〔ノ〕和〔ワ〕紀〔キ〕郎子〔いらつこ〕。
次〔つぎ〕に妹〔いも〕八田〔やた〕の若郎女〔わきいらつめ〕。
次〔つぎ〕に女鳥〔めどり〕の王〔みこ〕。[三柱。]
又娶其矢河枝比賣之弟袁那辨郎女生御子
宇遲之若郎女[一柱]
又〔また〕娶其〔そ〕の矢河枝〔やかはえ〕比〔ヒ〕賣〔メ〕の弟〔おと〕
袁〔ヲ〕那〔ナ〕辨〔べ〕の郎女〔いらつめ〕を娶〔めし〕て
生〔うみませる〕御子〔みこ〕
宇〔ウ〕遲〔ヂ〕の若郎女〔わきいらつめ〕。[一柱。]
又娶‘咋俣長日子王之女息長眞若中比賣生御子(咋、上文作杙)
若沼毛二俣王[一柱]
又〔また〕咋〔くひ〕俣〔また〕長〔なが〕日子〔ひこ〕の王〔みこ〕の女〔むすめ〕
息長〔おきなが〕眞若〔まわか〕中〔なかつ〕比〔ヒ〕賣〔メ〕を娶〔めし〕て
生〔うみませる〕御子〔みこ〕
若沼毛〔わかぬけ〕二俣〔ふたまた〕の王〔みこ〕。[一柱。]
又娶櫻井田部連之祖島垂根之女糸井比賣生御子
速總別命[一柱]
又〔また〕櫻井〔さくらゐ〕の田部〔たべ〕の連〔むらじ〕の祖〔おや〕
島〔しま〕垂根〔たりね〕の女〔むすめ〕
糸井〔いとゐ〕比〔ヒ〕賣〔メ〕を娶〔めし〕て
生〔うみませる〕御子〔みこ〕
速總別〔はやぶさわけ〕の命〔みこと〕。[一柱。]
又娶日向之泉長比賣生御子
大羽江王
次小羽江王
次幡日之若郎女[三柱]
又〔また〕日向〔ひむか〕の泉〔いづみ〕の長〔なが〕比〔ヒ〕賣〔メ〕を娶〔めし〕て
生〔うみませる〕御子〔みこ〕
大羽江〔おほはえ〕の王〔みこ〕。
次〔つぎ〕に小羽江〔をはえ〕の王〔みこ〕。
次〔つぎ〕に幡日〔はたび〕の若郎女〔わきいらつめ〕。[三柱。]
又娶迦具漏比賣生御子
川原田郎女
次玉郎女
次忍坂大中比賣
次登富志郎女
次迦多遲王[五柱]
又〔また〕迦〔カ〕具〔グ〕漏〔ロ〕比〔ヒ〕賣〔メ〕を娶〔めし〕て
生〔うみませる〕御子〔みこ〕
川原田〔かはらだ〕の郎女〔いらつめ〕。
次〔つぎ〕に玉〔たま〕の郎女〔いらつめ〕。
次〔つぎ〕に忍坂〔おさか〕の大中〔おほなかつ〕比〔ヒ〕賣〔メ〕。
次〔つぎ〕に登〔ト〕富〔ホ〕志〔シ〕の郎女〔いらつめ〕。
次〔つぎ〕に迦〔カ〕多〔タ〕遲〔ヂ〕の王〔みこ〕。[五柱。]
又娶葛城之野伊呂賣[此三字以音]生御子
伊奢能麻和迦王[一柱]
又〔また〕葛城〔かづらき〕の野〔ぬ〕の伊〔イ〕呂〔ロ〕賣〔メ〕[此三字以(レ)音]を娶〔めし〕て
生〔うみませる〕御子〔みこ〕
伊〔イ〕奢〔ザ〕能〔ノ〕麻〔マ〕和〔ワ〕迦〔カ〕の王〔みこ〕。[一柱。]
此天皇之御子等幷廿六王[男王十一女王十五]
此中大雀命者治天下也
此〔こ〕の天皇〔すめらみこと〕の御子等〔みこたち〕
幷〔あはせ〕て廿六王〔はたちまりむはしら〕。
[男王〔ひこみこ〕十一〔とをまりひとはしら〕。
女王〔ひめみこ〕十五〔とをまりいつはしら〕。]
此〔こ〕の中〔なか〕に大雀〔おほさざき〕の命〔みこと〕は
天下〔あめのした〕治〔しろしめしき〕。
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