古事記(國史大系版・上卷1・獨神及び雙神)
底本國史大系第七卷(古事記、舊事本紀、神道五部書、釋日本紀)
・底本奥書云、
明治三十一年七月三十日印刷
同年八月六日發行
發行者合名會社經濟雜誌社
・底本凡例云、
古事記は故伴信友山田以文山根輝實書大人が尾張國眞福寺本應永年間古寫の伊勢本他諸本を以て比校せしものを谷森善臣翁の更に增補校訂せる手校本二部及秘閣本等に據りて古訓古事記(宣長校本)に標注訂正を加へたり
且つ古事記傳(宣長記)の説を掲け欄外にはその卷數を加へて同書を讀まん人の便に供せり
・又種本及その略稱
尾張國眞福寺本(眞本)
應永年間古寫伊勢本(伊本)
同網代弘訓本(イ本)
戸田通元藏卜部家本(卜本)
小槻家古寫本(小本)
中臣連胤大夫藏本(中本)
醍醐殿本(酉本)
曼珠院宮御本(曼本)
秘閣本(閣本)
賀茂本(賀本)
神谷克禎本(神本)
度會延佳本(延本)
山田以文校本(山本)
伴信友校本(伴本)
學習院御本(學本)
寛永十五年寫本(寛寫本)
寛永廿一年印本(寛本又は舊印本)
古事記傳(傳)
・凡例
()内校訂註釈。〔〕内訓、又片假名字は音訓字。[]内分注小字等
書き下し文に之、者等の字は簡略化の爲おおむね排す。
古事記〔ふることぶみ〕上卷〔かみつまき〕
(※底本は序文から始まる。
但し、後世に加えられたものと見て今これを此処に排し本文外資料として後に回す。)
(獨神)
(傳三)
天地初發之時於高天原成神名天之御中主神[訓高下天云阿麻下效此]
次高御產巢日神
次神產巢日神
此三柱神者並獨神成坐而隱身也
天地〔あめつち〕の初發〔はじめの/はじめてひらくる〕時〔とき〕
高天原〔たかまのはら〕に成〔なりませる〕神〔かみ〕の名〔みな〕は
天之御中主神〔あめのみなかぬしのかみ〕。[高の下の天を訓阿麻〔あま〕と云。下此に效へ]
次〔つぎ〕に高御產巢日神〔たかみむすびのかみ〕。
次〔つぎ〕に神產巢日神〔かみむすびのかみ〕。
此〔こ〕の三柱〔みはしら〕の神〔かみ〕は
並〔みな〕獨神〔ひとりがみ〕成坐〔なりまし〕て
隱身〔みみ〕を隱〔かくしたまひき/かくりみにます〕。
次國稚如‘浮脂而久羅下那州多陀用幣‘琉之時[琉字以上十字以音]
(浮脂、卜本寛本作浮胎、恐非、元々集作浮脂。琉、眞本伊本元々集作流、下琉字同)
如葦牙因萌騰之‘物而成神名(物、元々集作初)
宇‘麻志阿斯訶備比古遲神[此神名以音](麻、眞本元々集作摩)
次天之常立神[訓常云登許訓立云多知]
此二柱神‘亦獨神成坐而隱身也
(亦、宣長云此上諸本有足字、衍、今依延隹本及一本削、今按元々集旡、小本作是、而眞本亦字下有並字)
上件五柱神者別天神
次〔つぎに〕國〔くに〕稚〔わかく〕浮脂〔あぶら〕の如〔ごとくし〕て
久〔ク〕羅〔ラ〕下〔ゲ〕那〔ナ〕州〔ス〕多〔タ〕陀〔ダ〕用〔ヨ〕幣〔ヘ〕琉〔ル〕時〔とき〕に[琉字以上十字以(レ)音]
葦牙〔あしかび〕の如〔ごと〕萌騰之‘物〔もえあがる(/きざしのぼる)もの〕に因〔より〕て
成〔なりませる〕神名〔かみのみな〕は
宇〔ウ〕麻〔マ〕志〔シ〕阿〔ア〕斯〔シ〕訶〔カ〕備〔ビ〕比〔ヒ〕古〔コ〕遲〔ヂ〕の神〔かみ〕。[此神名以(レ)音]
次〔つぎ〕に天之常立神〔あめのとこたちのかみ〕。[訓(レ)常云(二)登許(一)、訓(レ)立云(二)多知(一)]
此〔こ〕の二柱神〔ふたはしらのかみ〕亦〔も〕
獨神〔ひとりがみ〕成坐〔なりまし〕て身〔みみ〕を隱〔かくし〕たまひき。
上件〔かみのくだり〕五柱神〔いつはしらのかみ〕は別天神〔ことあまつかみ〕。
(雙神)
次成神名國之常立神[訓常立亦如上]
次豐雲[上]野神
此二柱神亦獨神成坐而隱身也
次〔つぎ〕に成神〔なりませるかみ〕の名〔みな〕は
國之常立神〔くにのとこたちのかみ〕。[訓常立亦如上]
次〔つぎ〕に豐雲[上]野神〔とよくもぬのかみ〕。
此〔こ〕の二柱神〔ふたはしらのかみ〕亦〔も〕
獨神〔ひとりがみ〕成坐〔なりまし〕て身〔みみ〕を隱〔かくし〕たまひき。
次成神名宇比地邇[上]神
次妹須比智邇[去]神[此二神名以音]
次角杙神
次妹活杙神[二柱]
次意富斗能地神
次妹大斗乃辨神[此二神名亦以音]
次‘淤母陀‘琉神(淤、眞本伊本元々集作於。琉、眞本伊本作流)
次妹阿夜[上]訶志古‘泥神[此二神名皆以音](泥、神本作湼)
次伊邪那岐神
次妹伊邪那美神[此二神名亦以音如上]
上件自國之常立神以下伊邪那美神‘以前‘幷稱神世七代(以前、伊本作以上。幷、宣長云、延本作並、非也下傚之)
[上二柱獨神各云一代次雙十神各合二神云一代也]
次〔つぎ〕に成神〔なりませるかみ〕の名〔みな〕は
宇〔ウ〕比〔ヒ〕地〔ヂ〕邇〔ニ〕[上]ノ神〔かみ〕。
次〔つぎ〕に妹〔いも〕須〔ス〕比〔ヒ〕智〔ヂ〕邇〔ニ〕[去]の神〔かみ〕。[此二神名以(レ)音]
次〔つぎ〕に角杙神〔つぬぐひのかみ〕。
次〔つぎ〕に妹活杙神〔いもつぬぐひのかみ〕。[二柱]
次〔つぎ〕に意〔オ〕富〔ホ〕斗〔ト〕能〔ノ〕地〔ヂ〕の神〔かみ〕。
次妹大〔いもおほ〕斗〔ト〕乃〔ノ〕辨〔ベ〕の神〔かみ〕。[此二神名亦以(レ)音]
次〔つぎ〕に淤〔オ〕母〔モ〕陀〔タ〕琉〔ル〕の神〔かみ〕。
次〔つぎ〕に妹〔いも〕阿〔ア〕夜〔ヤ〕[上]訶〔カ〕志〔シ〕古〔コ〕泥〔ネ〕の神〔かみ〕。[此二神名皆以(レ)音]
次〔つぎ〕に伊〔イ〕邪〔ザ〕那〔ナ〕岐〔ギ〕の神〔かみ〕。
次〔つぎ〕に妹〔いも〕伊〔イ〕邪〔ザ〕那〔ナ〕美〔ミ〕の神〔かみ〕。[此二神名亦以(レ)音如(レ)上]
上件〔かみのくだり〕國之常立神〔くにのとこたちのかみ〕より以下〔しも〕
伊〔イ〕邪〔ザ〕那〔ナ〕美〔ミ〕の神〔かみ〕以前〔まで〕
幷〔あはせ〕て神世七代〔かみよななよ/ななつぎのみよ〕と稱〔まをす〕。
[上〔かみ〕の二柱〔ふたはしら〕は獨神〔ひとりがみ〕
各〔おのおの〕一代〔ひとよ〕と云〔まをす〕。
次〔つぎ〕に雙〔ならびます〕十神〔とはしら〕は
各〔おのおの〕二神〔ふたはしら〕合〔あはせ〕て一代〔ひとよ〕と云〔まをす〕。]
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