修羅ら沙羅さら。——小説。75
以下、一部に暴力的な描写を含みます。
ご了承の上、お読みすすめください。
修羅ら沙羅さら
一篇以二部前半蘭陵王三章後半夷族一章附外雜部
夷族第四
かクに聞きゝ8月16日夜壬生ゴックが爲にそノ肌に口ヅけゴックかスかに歯ぎシりの音ノみ耳に聞かせき照明等ツけられざる部屋が窓に差シ込む月ノ光又街燈ノ光又隣家ノ照明等の光等にさまざまに照らシ出されたルものノものらノかたちらそノかたちを浮かび上がりて又ものノものらの色らそノ色をほのかにもあらはしき壬生あお向けたるゴックが上に顏をあげそノ肌にあたるもろもろノ光らゴックが肌のかたちら又はゴックが肌の色らさまざまに浮かび上がりたるを見かクて壬生ふたタびゴックが腹部に唇をつけかクてゴック不意に唇に言葉ヅきてさゝやきゝ…雨
雨?
雨…
かくにゴック茫然たる儘さゝやきたる聲聞きて壬生耳にすでに降り落チ始めたりシ雨の音聞こゑつヅけてありたるヲいまさらに知りキかくて頌シて
その光り
暗闇の
光りにそれ自体の色があったとして
何の暗さも感じられない
私の目はそれに感づかなかった
淡い澄んだ明るさの中
いつでも
暗闇に
見出された
それでも死者らは
みずからの色をは曝さない光にさらけだされた
貪り続けた
さまざまなものの
みずからの
さまざまな
乃至
おそらくは
他者の
それら自体の色ではあり得ないはずの
肉、あるいは
さまざまなものの
骨と臓器
さまざまな色らの色立ち
血管と神経、もはや
靑く昏く
彼等のまなざしのなかに
深く沈むその肌の色は
自己と他者の境など
ゴックの肌そのものもの色ではあり得なかった
咀嚼する音
知っていた
貪り喰う
黄味さえ帶びた
それら赤裸ゝな音の
例えば鳩尾の
音響を
ななめに当たった光にふれた
死者たちは見ていた
肌の光澤
もはやそれが
わたしはいちども
わたしだという認識すらないままに
彼女の素肌の色を見なかった
その
彼女はいちども
みずからの…誰かの?
そして
流した血にまみれながら
そして耳は雨の音
それらは見ていた
それは決して
極彩色の
天粒自体の聲ではなかった
血が玉散った
いつも何かが
極彩色の
例えば葉ゝが
肉が脈打ち
こすれあって鳴った偶然の音に他ならず
わたしはまばたく
知っている
暗闇は
雨の水滴に聲はなかった
さまざまな光りに
雨の水滴はいちども聲など立てなかった
むごたらしいほど
わたしは聞いた
あふれかえった
ゴックとともに
侵入する
それら
さまざまな光りを
鳴りやまない雨の音を
せき止めるすべなどないかにも
あまりにも
わたしの錯覺。ほんのすこし
瑞ゝしく
手のひらをさしだせばすぐさまに
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