修羅ら沙羅さら。——小説。69


以下、一部に暴力的な描写を含みます。

ご了承の上、お読みすすめください。


修羅ら沙羅さら

一篇以二部前半蘭陵王三章後半夷族一章附外雜部

夷族第四



かくに聞きゝ8月27日ゴック部屋にありテ窓際に振り向きたる刹那に汗ばミたる鳩尾に汗ノ粒流れ落チき時に壬生羽交い絞メにゴックを腕に絞メ壞さんとシたるが如クに壬生腕にゴックを抱きてかくてゴック壬生が唇を吸ひてかくて昼間の喰ひをはりたるのちノ唇ノ臭氣ノそれぞれの複雜なるそれらを壬生又はゴック感ジてかくて頌して

   あ!…と

    父に会ったら、聞こうと思った

   わたしは聲に出して

    小学校の

   部屋の中

    父親参観に

   ひたすらに

    不在の父に

   たゞひたすらに

    父に会ったら、聞こうと思った

   あかるい部屋の中で

    激しい折檻を加えた後で

   あ!…と

    その

   わたしは不意に聲に出して

    ざわめく彼の屈辱の息遣いのあららぎに

   その

    なぜ、あなたは狂気の人をその恍惚のさなかに抱いたんですか?

   人を呼ぶような?

    なぜ、あなたは

   あ!…と

    わたしは思う

   誰かを呼んだような?

    あなたが抱いたその時から

   大聲に

    久生は今に變わらなかった

   まばたいた目、…それはゴックの

    そうでしょう?

   不意の叫ぶ

    穢れた奴だと

   叫ぶような大声の

    軽蔑する?…彼

   不意に

    不在の彼を

   まばたいた眼、それはゴックの

    腐った奴だと

   驚いた?…むしろ茫然の

    罵倒する?…彼

   驚いた?——どうしたの?

    不在の彼を

   と

    稚彦と

   どうしたの?

    同じように久生は

   ゴックは

    まさに、時を隔てた

   性急すぎた早口で

    双子のように?

   ひとりでまばたくゴックの目、…それは二度

    久生の唇も生まれたときから

   どうしたの?

    濁音を嘗めた

   最近、聲だしてないじゃない?

    おそらくは

   まぶしい…すでに

    その唇以外に

   わたしは笑んで

    人の唇が

   すでに眞昼のひかり

    ついにいちどもふれなかった

   わたしはゴックに

    固有の濁音

   笑んでわたしは

    生まれたときから

   彼女の爲だけに

    あなたは叫んだ

   なに?

    その口に

   ささやくゴックの

    あなた固有の濁音で

   かがやけ

    あさなは叫んだ

   どうしたの?

    父に会ったら、聞こうと思った

   かがやけひかりら

    あなたを今更探す気はない

   お前も、叫んでみなよ

    父に会ったら、聞こうと思った

   わたしはさゝやく

    唇の

   見つめながら——そのまばたきを

    わななかせた濁音を

   性急な三度の上下

    耳の至近に聞きながら?

   あ!…と

    顏のない

   わたしはゴックを

    いまだに顏をまったくもたない

   あ!…と

    顏なしの父に

   見つめられながらゴックは

    父に会ったら、聞こうと思った

   あ!…と

    耳元にひびく

   不意に声を立てて笑い崩れたその壁に

    今に聞くのと変わらない

   蜘蛛は早足に

    濁音のもろもろに

   駈け上り、いきなり止まる

    あなたは息をふきかけた

   日差しの眞ん中…間接光の

    あなたは息をふきかけた

   白濁の淡さに

    そして笑った?








Seno-Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Seno-Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキス、北一輝、など。 三島由紀夫もちょっと好き。そんな感じ。

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