修羅ら沙羅さら。——小説。43


以下、一部に暴力的な描写を含みます。

ご了承の上、お読みすすめください。


修羅ら沙羅さら

一篇以二部前半蘭陵王三章後半夷族一章附外雜部

夷族第四



花らが落ちた。舞い散り、無數に降り、舞い、さまざまな色をさらし紫。花らが、向こうを透かし見るような花らが舞い散り、落ち、花らが落ちた。向こうを透かし見るように舞い散り花ら。もはや淡い色彩ではなかった。降り、舞い、舞い散り、顯らかに色づく濃い。さまざまな。薄い。それら、淡い。まさに嘘のような透明さだにも見せて赤、それら、色。靑づく紫にかぎりなくちかづいた赤。下卑た色彩。耳元でいきなり誘惑の息を隱す氣もなくふきかけて羞じないような。眞紅。あからさまな赤。品もなにもなく、ひたすらにエレガントな。もはや媚びさえもしない冷酷な。白。やや黄ばんでさえ見えた。にもかかわらずそれを白という以外の形容をする術もないことに抑言葉は屈辱を感じなければならないはずだった。それなのにあざ笑うような白の複雜。猥雜な白。靑みの勝った、そして我が侭にも紫には傾きゝらかなかった紫。色。さまざまにそれら。舞い落ちる無際限の色彩の無造作はまさに花らの色らを曝し、それが花でないことは壬生は知っていた。なぜならブーゲンビリア、その色彩。擬態の花モドキら。すでに、なぜならブーゲンビリア、それは色づいた葉のさまざまに過ぎないことを、壬生は、色とりどりの色を無惨にも思わせてさえさらしたあまりにも色づいた葉ゝたち。壬生は知っていた。小さな白い花弁があった。あくまでそれだけが花だった。花そのものゝまわりをいろどった葉の華美に、みづからをもはやちいさな白黴の付着にひとしく擬態させていた花。隱れたわけではなくて?ちいさい白。こらした目にしかふれない。隱れたわけではなくて?ちいさい白。色彩の唯中ただ埋没し、ちいさい白。隱れたわけではなくて?花のような、花ひらいた花としかいうすべのない色彩の極度の充滿のただなかに。ちいさい白。隱れたわけではなくて?あふれかえった華美の、舞い落ちる無際限の色彩の無造作はまさに花らの色らを曝し…そして華美。花をはさらさない華美にして華美な花モドキの花のような花やぐ華美ら。隱す氣もなくて、花をはさらさない。花は隱れる氣もなくて花をはさらさない。隱れたわけではなくて?白の花弁は身をひそめさせていた事実にさえも気づかずに花をはさらさない。隱れたわけではなくて?色彩が舞う。壬生は…舞え。隱れたわけではなくて?見得る色彩を…舞え。隱れたわけではなくて?見ていた。壬生は…降るように。隱れたわけではなくて?夢を…降るように。隱れたわけではなくて?見ていた。だから…降るように舞え。隱れたわけではなくて?まさに花の色、いろいろの花の色のいろいろ。夢の内に。隱れたわけではなくて?ただ夢見られた夢にすぎなかった。音響があった。

 をるぅうを、

  色彩よ

 をを、ヲをるぅうを、

  色彩よ

 をるぅうを、

  舞い散る色彩よ

 をヲ、を、ヲをるぅうを、

  舞え、舞い散る

 をるぅうを、

  降りそそぐ

 をを、ヲ、を、

  色彩よ

 をるぅうを、

  色彩よ舞え

 をを、ヲ、を、

耳の近くに鳴る、それが…なにが?轟音として…なにが?鳴り響き、——何が?

なにが音を?

 をるぅうを、

轟音?…なに?

 をを、ヲをるぅうを、

ひとり、…なにが?、と、壬生はひそかに

 をるぅうを、

耳を…なにが?疑う。夢の中で

 をヲ、を、ヲをるぅうを、

耳の聞き取り得た…なにが?音など

 をるぅうを、

はたして

 をを、ヲ、を、

耳は、——なにがいま、鳴り響いていたのか?

 をるぅうを、

と、いまゝさに耳はこゝに聞こえてはいない別の音を聞き取っていたに違いない。——なにを?

例えばかたわらに眠っている筈のゴックの寢息を、豊滿なゴック、肥満に近いほどの肉附いた肉体を持て余したように、重すぎたように、立って步き又は座って笑む時又は横たわって目を閉じかけ或いは時にせき込んだ一瞬にさえも重すぎたように、重力に堪えがたく押し込まれていたように、蟹股に步き、重すぎたように豐満なゴック、肥滿に近いほどの肉附いた肉躰を持て余したような、そんないたゝまれなさをだけ肌に曝し、

 をるぅうを、

  をおぅるぅを、

誰もが可愛らしいと云った、彼女はたゞ誰からも

 をを、ヲをるぅうを、

  をおぅるぅを、

そう云われる爲に生まれたような…誰にも

 をるぅうを、

  をおぅるぅを、

誰からも愛される爲にだけ生まれたかのような?

 をを、をおぅを、

  をおぅるぅを、

そんな?——自分を意図もなく

 をヲ、を、ヲをるぅうを、

  をおぅるぅを、

人の眼にさらし、だから

 をるぅうを、

  をおぅるぅを、

可愛らしいと誰もが云った

 をを、ヲ、を、

  をおぅるぅを、

淸楚で、きよらかで

 をるぅうを、

  をおぅるぅを、

かわいらしいと、轟音。私の耳が。…と、なにを聞いているのか私は、…と。知らない、壬生は思ったその、まさにその時に、ゴックは聲を立ててわらっていたのかも知れなかった。ひとりでめ覺めて?耳元で、壬生をのぞきくようにみつめながら添い寝したままで、壬生の

 をるぅうを、

  をおぅるぅを、

   るぅをるぅをおるるぅを、

耳もとにみだれた笑い聲を立てて、或いは

 をを、ヲをるぅうを、

  をおぅるぅを、

   るぅをるぅをおるるぅを、

泣き聲を?——なにを哀しんで?或は

 をるぅうを、

  をおぅるぅを、

   るぅをるぅをおるるぅを、

泣く自分さえなにを泣くのか気付かない儘に?…或いは

 をヲ、を、ヲをるぅうを、

  をおぅるぅを、

   るぅをるぅをおるるぅを、

怒号を?(…ひとしれず)

 をるぅうを、

  をおぅるぅを、

   るぅをるぅをおるるぅを、

罵聲を?(…あなたがながしたなみだよ)

 をを、ヲ、を、

  をおぅるぅを、

   るぅをるぅをおるるぅを、

憤った聲を?(…くいちぎれ、ひとしれず)

 をるぅうを、

  をおぅるぅを、

   るぅをるぅをおるるぅを、

耳は?(…あなたはひとりで)…と、耳に。夢に聞いた轟音の中に壬生が目を覺ますと明ける寸前らしい暗がりがまなざしのなかにひろがっていたのに気づく。開かれた目は見た。ゴックの家の寝室の中の、白い、そして闇づいた空間の染める儘に黑に翳る壁の色、繊細な。そして傍らの窓の、光を投げ込みもしない靑黑い昬いあかるさを、壬生は気付く、耳がかすかな物音を聞きつづけるのを。必死に隱しごとをして、その不器用の故にすべてを曝しだして仕舞う無惨さ、ないし無防備?とでもいった、或は例えば恥ずかしげもない全裸で、剝き出された裸の尻をつきだしたまゝで後ろ向きに、…だれも。両手で羞恥した…だれも。顏の赤面とあつい息だけ覆って…だれもわたしをみなかった。裸の尻を羞じたような、

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    るぅをるぅをおるるぅを、

そんな音、かすかな

 をを、ヲをるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    るぅをるぅをおるるぅを、

なにかを物色し

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    るぅをるぅをおるるぅを、

かすかな

 をヲ、を、ヲをるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    るぅをるぅをおるるぅを、

なにかを掠め取ろうとし、

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    るぅをるぅをおるるぅを、

あくまでもかすかな

 をを、ヲ、を、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    るぅをるぅをおるるぅを、

なにかに怯えた、

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    るぅをるぅをおるるぅを、

かすかな音。——鼠、と、壬生が気付いたときにちいさな四肢の失踪する音が床を駆けたのを聞いた。何かを奪い取ったのか。彼らがまさに彼等の領土として知る誰かの作り上げた他人の空間の中で、他なる誰かの影におびえながら彼等の固有の資産たる喰いものを簒奪して走る。強奪し、だれかに屠殺されないうちに。貪る。せつないまでに。凝視。かすめとるように、彼等に固有の領野を見た。そして無緣の他人の領野に駆ける。鼠、と、彼等は何かを獲得したのか。彼らはいまだに自分が死んではいない事を知った。吐くように息づかう。殺されてはいないから。咬む。殺されていないから。血を吐きもせず、腹は引き裂かれてもおらず、頸は千切れ飛んでもおらず、疫疾は彼の目を黄ばませてはおらず、四肢は震えず朽ちも腐りもしない。いずれ死ぬだろう。今は死んではいない。だからいずれ殺されるだろう。まさに死。だから彼等は喰いものを噛み千切って掠め取り駆ける。——鼠、と。その駈ける音に

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

壬生は記憶に耳をすます、もう

 をを、ヲをるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

その疾走がどこかに消えた後で、それは

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

一匹の失踪だっただろうか?それとも

 をヲ、を、ヲをるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

音を重ねた二匹の、ないし

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

まさか數匹の?

 をを、ヲ、を、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

壬生は

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

すでに気付いていた。かたわらにゴックの気配はなかった。だからその身もなかった。夜があけきるまえにゴックはベッドを抜けた。足を床に着いたとき、今更に壬生は、見れば?

あなたも見れば?

見れば?

あなたも

振り返ったそこには朝の朝燒け、その、と。

想う、ひとりで壬生は、…その紅蓮、と、壬生は今更に他人の家にいる気がした。抱かれたあとで勝手にひとり眠りにおちたゴックは、そしてひとりで素肌をさらしたまゝの壬生は取り殘された空間に目を覺ます。鼠が駆ける。壬生はひとりで取り残されていて、或いはもうすぐ朝は燒ける。空に。東に。西に沈みかけの白い霞む月を大きく残したままで、滿月にすこし足りない月、夜は終わる。もうすこしで、と、昨日の月は、…と、滿ちる。もうすこしで、と、…だから?旧暦の十三日?…十四日?…もうすぐで、…と

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

      るをぉろぉ、るをぉろぉい、

月は盈ちる。もうすぐで

 をを、ヲをるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

      るをぉろぉ、るをぉろぉい、

夜は燃える、空に

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

      るをぉろぉ、るをぉろぉい、

もうすぐで

 をヲ、を、ヲをるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

      るをぉろぉ、るをぉろぉい、

最後に夜は

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

      るをぉろぉ、るをぉろぉい、

月は盈ちる…どこに?

 をを、ヲ、を、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

      るをぉろぉ、るをぉろぉい、

どこへ?

 をるぅうを、

  るぃるぃるぃるぃいるぃ

   をおぅるぅを、

    ぃいをぅうをるぃい

     るぅをるぅをおるるぅを、

      るをぉろぉ、るをぉろぉい、

どこ?…と。ゴックがどこへ行ったのか、壬生は探してやらなければならない筈だった。ゴックの家に転がり込んでから一か月が過ぎた。今日は何日だろう?壬生は思った。スマートホンは持ち出さなかった。ユエンの家から。捨て置いた気も無くて、存在すらわすれて放置した。だから、と。壬生はゴックに聞かなければ今日が何日で、今が何時か知るすべもないのを笑い、…九月?

たぶん、…と。

もう九月?

壬生は、

おそらくは、…九月朔日?かくて偈に頌して曰く

   あなたに話そう

    まさにあなたのために

     腐った極彩色のそれら

      無慘の死者たちの無殘

   あなたも知るか?

    あなたも知ったか?(…玉散る)

     わたしは問う、もはや

      その目玉すら肛門が(…玉散る血)

   生やした歯と無数の歯ゝに

    喰いつぶしたあなたさえも

     知っていたか?(…腐った血)それ

      その夢のような一瞬の

   夢の泡沫に(…玉散る血ら)慥かに私は

    見たのだった。何度も、その玉散る須臾

     あるいは(…腐った血ら)あなたも

      見た、わたしは…何度も。

   その女、(…血ら、血、)母と呼ぶべきその

    大口を広げた女が(…血ら)何か云おうとしていた

     その大口、…何度も。見た、わたしは、あるいは

      何かを(…腐った肉)喰いちぎろうとしていた…何度も。わたしは

   その大口、あるいは

    なにかに(…歪んだ背骨)喰いつこうとしていた

     その……何度も。見た。わたしは、(…貪る齒のある肋骨の無數)大口、あるいは

      むしろ(…玉散る)茫然とし唖然とした一瞬の儘に…何度も。わたしは

   いつか開いて(…散る血)開かれていたに過ぎなかった

    その大口、眼の(…血ら)前に。あるいは

     ふいに想いだした懷しさか又は(…死者ら)屈辱の

      赤裸ゝな記憶に(…血ら)聲を(…腐った、)失う刹那に堕ちた

   その(…腐り果てた)大口、眼差しは(…極彩色の肉)知る。あるいは

    いまゝさに見出した幻の、まさに目に見た

     生きた息吹きに、ただ(…肉、歪んだ)我をさえわすれた

      その大口、…何度も。わたしは、(…ひんまがった肉に)あるいは

   だから(…飛び散った肉汁?)泣き叫ぼうと思った。わたしは、(…体液?)…何度も。——果たせなかった

    喚き散らそうと思った、わたしは(…腐った?)——果たせなかった

     その大口、…何度も。見た。わたしは、あるいは(…見つづけていた)さゝやきかけた

      言葉をその、一瞬にして(…咬み)忘れた事實に

   気付いて(…咬み砕かれた)言葉をわすれた大口、…無慘な。(…砕かれた)あるいは

    わななく瞼の、閉じられない儘の(…その一瞬まで)乾きに感じた

     網膜の痛みのいたみのひらかせた大口、…無殘な。(…見ていた)あるいは

      そこに私が(…その目は)いたことを

   そこに居た私が見つめていたことを(…見ていた)

    そこにいたわたしに(…なにを?)すでにみつめられていたことを

     すでに眼差しは、すでにして

      からみあって互を見詰めあっていたことを

   いまさらに知っておののいた大口、(…見ていた)…無慚な。その

    母なる母の(…母よ)

     母なる人の(…母よ)

      ひらいた大口が(…せつないくらいに母よ)

   噛みつくのだと思った、(…玉散る)わたしは

    その人の(…散れ)開いた一瞬の

     眼の前の(…散れむしろ)開口

      大口の(…玉散る)色

   唾液のきらめき(…母よ)

    人の粘膜の(…母よ)

     なめらかな(…母よ)朱いろ

      温度ある色、(…せつないくらいに母よ)わたしは(…母よ)

   噛みつくのだと思った、(…息に温度が)その口が

    開いたままに(…心臓に鼓動)停滞して、わたしは

     噛みつくのだと(…きらめけ!)思った、何処を?

      首を?(…イノチよ!)ひとより長く

   女より華奢な(…記憶など)

    十四歳の首を?鼻を?(…まさに、それ)

     他人の(…移ろう)それを

      あざらわうように(…泡沫の)すべらかに(…夢の如き)ながれた

   美しい突き立ちの(…あざやかな)柔かさを?

    唇を?(…夢のような)母なる母の

     荒れてささくれたそれに比べて

      同じ部位とは思えない紅を?

   眼を?母なる母の

    大口を見詰めた潤いの目を?

     むしろ睫毛を

      そっとはやされた睫毛の繁みをだけあなたは

   噛み千切るの?知ってる

    あなたはすでに(…息遣う)知ってる

     あるいはすでに

      知っているべきをさえ忘却した

   狂気のあなたは(…息遣う)もはや顯らかに知っていた

    極彩色の(…息遣う、唇には)

     翳りの肉と血ら

      血と骨らと、神經らと(…唇に唾液)骨と

   筋と贅肉らと垂れた(…唾液の糸)腸と腸らと

    心臓と腦と腦細胞と細胞ら(…きらめく)無數の

     眼球と無數の歯の(…きらめく、むしろ)齒ら、極彩色の

      あなたは(…むしろきらめく)のけぞった

   背骨をみずから(…きらめく)へし折りながら

    あなたはまさに(…きらめく)知っていた

     變形した心臓の(…きらめきだって)

      目覚めさせた腕に(…かがやけイノチよ。)腸を

   引きちぎりながら

    あなたはまさに(…そしてまさにあざやかに)知っていた

   その女(…かがやけイノチよ。)母なる人は

    その時に、大口の儘に(…まさに永遠にも)

   なにも云わずに(…かがやけイノチよ。)窓から消えた。その最期の日たぶん

    彼女は笑おうとしたのだ。あなたの投身。その(…かがやけ!)大口で

     あるいはわたしに、投身自殺?(…イノチよ!)…わたしにだけに

      彼女はひとり、…まさか。(…イノチよ!)笑いかけようと、知性。

   知性あるもの以外にまさか自殺など?









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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