修羅ら沙羅さら。——小説。15


以下、一部に暴力的な描写を含みます。

ご了承の上、お読みすすめください。


修羅ら沙羅さら

一篇以二部前半蘭陵王三章後半夷族一章附外雜部

蘭陵王第二



かくに聞きゝ壬生そノ日終日ユエンが家にありき義父コイと俱なりコイ息子タンと俱に住せル部屋から出デず出でテ稀なりきこノ比早朝はやくタンひとり出て近隣親族の家に詣で雜談シ遊ブ乃至默しスマートホン弄べり十時廻る比歸りて昼食用意す之レ都市封鎖されたるゆゑなりかクて壬生又タン又コイ又は集ひて食す又は時に壬生かタンを缺く又はそレぞれに食スかくてタン及びコイ同室に昼寢すこレ日ゝの常なりき此ノ日午前9時半廻りたるに壬生居間にパソコンを弄べりきレ・ハン詣で來たりきレ・ダン・リーと俱なり是れレ・ヴァン・クアンが後妻に生ませタる娘なりき後妻が名ダン・ティ・タムと曰すハン居間をシャッター半ば開きたる翳りに笑ミて居間が内伺ひ又笑ミて入りかクてレ・ダン・リー隨ひて笑みて又隨ひて入りき壬生思ふに今タムかのレ・ヴァン・クアンを見儛ひ來たりテひとりクアンを介護しをるならんかクてレ・ハンみづからにリーを連レて連レ回りてユエンが家リーに紹介すること我が家なルが如し少女ふたりの聲笑ひて希薄に室内に笑へる聲ひゞくハン戯れ壬生にジャれか迦り殊更にもじゃれ迦かるに壬生ハンを寝室に誘ひき是れコイが眼に気付かるゝを厭ひタるゆゑなりキ壬生思ふにコイ未だふタりが詣でタるを知らずコイ糖尿病重なりか迦りてをればすでに耳弱まりき如何にか夜波岐笑ひ聲聞き取り得ルやらんハン歡喜し戯れ又戯れじゃレて歓喜シ壬生に隨ひき又レ・ダン・リー俱に隨ひて戯れ遠巻きにじゃレて歡喜し戯レ又隨ひてレ・ハン目にみづからに隨ふ妹を厭ふハン寢室に壬生を愛でテ又壬生に愛で羅れりレ・ダン・リー姉のそれ嬌態曝しタるヲ見てこゑとこゑに笑ミ遠クじゃれて離レて笑ひこゑとこゑにひとり笑ひキ時に家がうちひトり戯れひとりこゑとこゑに遊ビ飛登里步キ回りキ軈而こゑにこゑは庭に戯れ出デきタオこゑにつらなりこゑは叫きけりハン寝臺が上に口に弄ブに初めてこゑにかさなりこゑは觀じたる味口蓋に觀じキゆゑ須臾こゑに茫然とシ後レ・ハンひとりこゑをかさねて歡喜せり壬生を見テ見上げてふタたびこゑは素直に上目に白めがちタルに歓喜しこゑに同ジくに登麻ド飛テそのこゑとこゑの儘口に含みタるを垂らシき壬生がつらなるこゑに腹穢ス壬生そノ頭を撫でキかクてハンふたタびかさなりこゑのそれらつらなるこゑの戯れ弄びキかクて軈而やゝありて壬生かさなるこゑの思ハずに目を閉ジきハン是れを壬生の上に馬乘りて見き時にハン胎内にこゑは

あふれるようにこゑは

ふそめるようにもこゑは

かさなりあい

つながりあいさえしながらこゑは初めてそノ流れ出ヅるヲ感じ我に返りきかクて又歡び歡喜シ壬生を見て見汙露斯ふたタび素直に歓喜シ同ジくに登麻ド飛テ壬生に覆ひかブさりテ壬生が躰を抱けり壬生茫然とシ未だ我に返らザりテかクて頌シて

   あなたに話そう

    音もなく

   まさにあなたの爲に話そう

    その

   誰の眼を避けようとしたともなく、姉妹は

    音もなく

   戯れていた。その

    まるで他人のように

   ユエンの家屋の中に

    流れ出すもの

   誰かに秘密にするために二人は誰かの眼を避けようとした

    流れ出し

   聲をひそめて笑い合いながら

    埀れて

   避けるべき誰の目の有る譯でも無く。その

    したゝりおちる

   ユエンの家屋の中に

    雫

   レ・ハンは私の体を誇るようにリーに見せた

    溶けて仕舞った氣がした

   リーの眼が素直な歓喜を

    乾いた

   曝した。レ・ハンは

    沃土に?

   自分を誇って口づけた

    飢えたわけでもなく

   私のからだに。…肉体に。——精神に?

    餓えたわけでもなく

   半開きのドアの翳りの内に、私の体を立たせたままに

    しみこむように

   外にいない、誰かの気配をリーと探って

    溶けた気がした

   ハンは自分を誇って戯れた。誰に?

    ちいさな、あるいは

   レ・ダン・リーに?あるはその肉体に?——精神に?

    広大な沃土に

   時には、——同時に?みずからの

    不意打ちのように

   私のからだで。みずからの躰の知るわたしの

    思っても居なかった時に

   レ・ハン自身の体を?…肉体で。——精神に?

    飢えたわけでもなく

   寝台にかかる蚊帳の色の白の内に、私の体を横たえさせて。

    餓えたわけでもなく

   外にいない、誰かの気配をリーと探って、レ・ダン・リーは

    流れ出たもの

   瞬いた

    溶けたに違いなかった

   時に私の体を見ながら

    その雫は

   それを見た

    齒のない

   私は翳りのなかに立つリーの素直な笑みの顏の右の瞼に

    沃土が咬む

   レ・ダン・リーはまばたいた

    噛み千切り

   時にハンのさらしたその褐色の、むしろ筋肉の息吹きかんじさせた肌を見ながらその

    咀嚼し

   息遣いを見ていた

    沃土は目覚めるだろうか?

   私はドアにもたれて顏をのそかせたレ・ダン・リーの素直な笑みの顏の右の瞼に

    音もなく

   リーはまばたいた。

    咀嚼したあとで

   時にハンとハンの、さらしたその行為の、歓喜する歓喜とむしろ苦悶する苦悶の息遣いを見つめながら

    沃土は繁茂する

   その肉体の。——精神の?あざやかな命の。

    飢えた譯でも無く

   時に私とハンの、さらしたその行為の、歓喜する歓喜とむしろ苦悶する苦悶の息遣いを見つめながら

    餓えた譯でも無く

   その肉体の。——精神の?あやうく息切れする命の。

    沃土は繁茂する

   時に私と私の、さらしたその行為の、歓喜する歓喜とむしろ苦悶する苦悶の息遣いを見つめながら

    みづからを

   その肉体の。——精神の?自壊しようと欲すかに見えた命の

    引きちぎって分裂し

   時にハンと私の、さらしたその行為の、歓喜する歓喜とむしろ苦悶する苦悶の息遣いを見つめながら

    引き裂かれて分裂し

   その肉体の。——精神の?まじりあった汗にまみれた命の

    分散せずに

   それを見ていた

    散乱せずに

   私は聲を立てて聲をひそめてはしゃぎ、うずくまって顏をのぞかせたリーの素直な笑みの顏の右の瞼に

    散逸するなく

   リーはまばたいた

    沃土は集合する

   それを見た

    咀嚼したあとで

   私は立ち止まってスマートホンを弄り、不意に顏をあげたリーの素直な笑みの顏の右の瞼に

    噛み千切ったあとで

   リーはまばたいた

    溶かした後で

   それを見ていた

    侵犯したように

   どこかへ逃げこもうとして聲をひそめ、何かをどちらかに言いかけたリーの素直な笑みの顏の右の瞼に

    侵入したように

   リーはまばたいた

    降り注いだ無数の雫に

   まるで自分が漏らしたものの穢したかのように、濡れたシーツをハンは笑った

    侵犯されながら

   誰かを気にして聲をひそめて

    侵入されながら

   まるで自分のそこが吐き出してしまったかのように、しみは

    沃土は咀嚼した

   落ちた。レ・ハンは

    蛇が殻を脱いだように

   私を見て笑った

    沃土は潤う

   バイクの音にハンははねおきる

    つややかな肌を曝した蛇の

   タンが歸ってきたにちがいなかった

    その潤いの光沢のように

   服も着ないで部屋を出た

    沃土は

   リーを連れ、時に置き去りにし、置き去りにして、時に連れて引っ張り、さまざまなものの影にひそんだ

    まさに蛇がその

   彼女たちは逃げた

    め覺めたまなざしに

   リーはハンと俱に、時に別々に、又足を潜め、息さえ潜め、別々に、時に俱なり、さまざまなものの影に

    かたちを見出し

   ひそんだ。

    色を見出す様に

   私はタンと食事を済ました

    沃土はかたちをなす

   振り向けば、どちらかの眼がどこかにあるのは知っていた

    沃土は咬んだから

   彼女たちが殊更につくった秘密の爲に

    噛み千切り

   あえて秘密にした

    咀嚼したから

   彼女たちのことを

    ふたたびひらいたまなざしに

   タンは気付いていただろうか?

    見た。わたしの眼差しは

   サンダルは脱がれた儘だった

    レ・ハンの眼差しが見ていた

   ハンとレ・ダン・リーは戯れた

    レ・ハンと私の共謀を

   コイはその日食事を遅れてひとりでした

    レ・ハンの目の

   タオが叫んだ

    わたしを赦したやさしい色を








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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