新勅撰和歌集。撰者藤原定家。卷第七賀歌。原文。
新勅撰和歌集
新勅撰倭謌集。底本『廿一代集第八』是大正十四年五月十三日印刷。同十六日發行。發行所太洋社。已上奧書。又國謌大觀戰前版及江戸期印本『二十一代集』等一部參照ス。
新勅撰和歌集卷第七
賀哥
貞永元年六月きさいの宮の御方にてはしめて鶴契遐年といふ題を講せられ侍けるに
前關白
つるの子の又やしは子のすゑまてもふるきためしをわか世とやみん
關白左大臣
ひさかたのあまとふつるのちきりをきし千世のためしのけふにも有かな
寛治八年八月髙陽院家哥合に月哥
周防内侍
つねよりもみかさのやまの月かけのひかりさしそふあめのした哉
いはひの心をよめる
藤原行家朝臣
天の下ひさしきみよのしるしにはみかさのやまのさか木をそさす
百首哥よませ侍ける時祝哥
後法性寺入道前關白太政大臣
やちよへむきみかためとや玉つはき葉かへをすへきほとはさためし
大宰大貮重家
むしろ田にむれゐるたつのちよもみな君かよはひにしかしとそ思
堀河院竹不改色といへる心をよませ給うけるに
富家入道前關白太政大臣
いろかへぬ竹のけしきにしるき哉よろつよふへき君かよはひは
長德五年左大臣家哥合に
藤原長能
きみか世のちとせのまつのふかみとりさはかぬ水にかけはみえつゝ
題しらす
實方朝臣
枝かはすかすかのはらのひめこまついのるこゝろは神そしるらん
天德二年右大臣五十賀屏風
淸原元輔
わか宿の千世のかは竹ふしとをみさも行末のはるかなるかな
勅使にて齊宮にまいりてよみ侍ける
中納言兼輔
くれたけのよゝのみやこときくからに君はちとせのうたかひもなし
一品康子内親王裳き侍けるに
公忠朝臣
みなひとのいかてとおもふ萬世のためしときみをいのるけふかな
天曆御時みこたちのはかまき侍けるに
中納言朝忠
おほはらや小鹽のこまつ葉をしけみいとゝちとせのかけとならなん
題しらす
讀人しらす
うれしさをむかしは袖につゝみけりこよひは身にもあまりぬるかな
長元六年關白白川にて子日侍けるに
中納言顯基
ちとせまて色やまさらんきみかためいはひそめつる松のみとりは
永治二年崇德院攝政の法性寺家にわたらせ給て松契千年といへる心をよませ給けるに
大炊御門左大臣
うつしうへてしめゆふ宿のひめこまついくちよふへきこすゑ成らん
後白河院御時やそしまのまつりにすみよしにまかりて讀侍ける
權中納言長方
神垣やいそへの松にことゝはんけふをは世ゝのためしとや見る
仁安三年攝政閑院家にて對松争齢といへる心を讀侍ける
權中納言兼光
うつしうふる松のみとりも君か世もけふこそちよのはしめなりけれ
建仁三年正月松有春色といへる心ををのこともつかうまつりけるに
前左大臣
ときはなるたまゝつかえも春くれは千世のひかりやみかきそふらん
御祈りつかうまつりて思ひをのへ侍ける
權大僧都良算
ふしておもひあふきて祈るわかきみのみ世はちとせにかきらさるへし
老の後春のはしめによみ侍ける
入道前太政大臣
春はまつ子日の松にあらすともためしに我を人や引へき
天喜四年閏三月中殿に翫新成櫻花哥
堀河右大臣
けふそ見る玉のうてなのさくら花のとけき春にあまる匂ひを
權大納言信家
つねよりも春ものとけき君か世にちらぬためしのはなをみる哉
寛喜元年十一月女御入内屏風京華人家元日かきたる所
前關白
はつはるの花のみやこに松をうへて民のとゝめるちよそしらるゝ
江山人家柳ある所
入道前太政大臣
名にしおはゝしくやみきはのたま柳いり江の波にみ舟こくまて
池邊藤花
正三位知家
はる日さく[すイ]藤のしたかけ色みえてありしにまさる宿の池水
四月山田早苗
内大臣
み田やもりいそくさなへにおなしくは千世の數とれわか君のため
八月山野に鹿たてる所
前關白
いまそこれ祈りしかひよ春日山おもへはうれしさをしかの聲
人家翫月
わか宿のひかりをみても雲のうへの月をそ祈るのとかなれとは
田家西秋[収イ]興
年あれはあきの雲なすいなむしろかりしく民のたえぬ日そなき
入道前太政大臣
秋をへてきみかよはひのありかすにかり田のいねもちつかつむ也
圓融院御時中將公任と碁つかうまつりてまけわさにしろかねのこに虫いれて弘徽殿に奉らせ侍ける
小野宮右大臣
よろつ世の秋をまちつゝなきわたれいはほに根さすまつむしのこゑ
九月九日從一位倫子菊のわたをたまひておいのこひすてよと侍けれは
紫式部
菊の露わかゆはかりにそてふれて花のあるしに千世はゆつらん
菊をよみ侍ける
元輔
わかやとのきくのしら露よろつ世の秋のためしにをきてこそみめ
康資王母
長月に匂ひそめにし菊なれは霜もひさしくをけるなりけり
後冷泉院御時殘菊映水といへる心を人ゝつかうまつりけるに
權大納言長家
神無月のこるみきはのしらきくはひさしき秋のしるしなりけり
承保三年大井河に行幸の日よみ侍ける
大宮右大臣
大井川ふるきみゆきのなかれにてとなせの水もけふそすみける
前中納言伊房
おほ井かはけふのみゆきのしるしにや千世にひとたひすみわたるらん
寛喜元年女御入内屏風十一月江邊寒蘆鶴立
入道前太政大臣
ちよふへき難波のあしのよをかさねしものふりはの鶴の毛衣
泥繪屏風岩淸水臨時祭
權中納言定家
ちりもせし衣にすれるさゝ竹のおほみや人のかさすさくらは
承保元年大嘗會主基哥丹波國かつらの山
前中納言匡房
ひさかたの月のかつらの山人もとよのあかりにあひにけるかな
寛治元年悠紀哥近江國みむらの山
しくれふるみむらの山のもみちはゝたかおりかけし錦なるらん
仁安三年悠紀風俗哥
宮内卿永範
あめつちを照すかゝみのやまなれは久しかるへきかけそ見えける
貞應元年悠紀哥たま野
正三位家衡
いろいろのくさ葉のつゆをゝしなへて玉野の原に月そみかける
おなし主基の風俗いはや山
權中納言頼資
ふかみとりたま松かえの千世まてもいはやの山そうこかさるへき
御屏風哥いはくら山
あしひきのいはくらやまの日かけ草かさすや神のみことなるらん
題しらす
よみ人しらす
月も日もかはりゆけともひさにふるみむろの山のとこみやところ
延喜六年日本紀竟宴哥譽田天皇
西三條右大臣
としへたるふるきうきゝのすてねはそさやけきひかりとをくきこゆる
豐御食炊屋姬天皇
貞信公
つゝみをはとよらの宮につきそめて世ゝをへぬれと水はもらさす
天平十六年正月雪ふかくつもりて侍ける朝みこたち上達部ひきゐて太上天皇の中宮西院に參りて雪はらはせ侍ける御前にめしておほみき給ひけるついてに奏し侍ける
井手左大臣
ふる雪のしろかみまてにおほきみにつかへまつれはたふとくも有か
右大臣の佐保の家にみゆきせさせ給うける日
聖武天皇御製
あおによし奈良のみやこのくろ木もてつくれるやとはをれとあかぬかも
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