小説《わたしを描く女》イ短調のプレリュード、モーリス・ラヴェル。連作:Ⅷ…世界の果ての恋愛小説【完全版】②
わたしを描く女
…散文
《イ短調のプレリュード》、モーリス・ラヴェル。連作
Prelude in A mainor, 1913, Joseph-Maurice Ravel
Διόνυσο, Ζαγρεύς
ディオニュソス、ザグレウス
この小説のベースになっているのは、古代ギリシャのオルフェウスの教団です。
ザグレウスというゼウスの嫡子がいて、彼はペルセポネーが生んだ子どもだったので、ゼウスの妻へーラーの嫉妬にあう。
へーラーの姦計で、オリンポスの神々に先行するいわば先住民族のタイタン族によって惨殺されて食い散らされる。ゼウスは喰い残されていたザグレウスの心臓を飲みこむ、ないし、膝に縫いこむ。そこから生まれたのがディオニュソス、そして、怒り狂ったゼウスが焼き滅ぼしたタイタン族の灰の中から生まれたのが人間である、と。
ところで、両性具有の半神半人のディオニュソスというのも、生みの母親セメレーも育ての母親イーノーもへーラーの関係によって殺されている。
どちらも、彼女を殺すのは夫で、かならずしも殺したくて殺したわけではない。ゼウスはへーラーの姦計によって結果的にセメレーを殺して仕舞い、イーノーはへーラーによって狂気を吹き込まれた夫に、前後不覚の状態で殺されてしまう。
かつ、オルフェウスもまた、ディオニュソス教団の信徒たる女たちによって八つ裂きにされて殺され、そして復活している。…などなど。
なんとも血なまぐさい死と再生の物語なのですが、そんな物語が、モティーフになっています。
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【完全版】なので、ブログ版よりかなり辛辣な描写が増えています。というか、これがもともとの形なのですが。…
ちなみに、個人的には、最近、さらに時代を下ってゾロアスター教とかに興味を引かれています。
現在のさまざまな主要な一神教の原型になった最古の一神教、ということなのですが、ある日、ある男が居て、さまざまな神々が世界を構築しているという当時の多神教の世界観の中に、唐突に、唯一の神は独りだけなのだ、そして善と悪というものがあって、かならず善が勝って仕舞うのだ、と、いきなり認識して仕舞う、というのは、実は凄まじい出来事だったんじゃないか、と。
ちなみに、調べると、戦前の神道でも神道一神教化運動みたいなものが起っていますね。
いずれにせよ、そこでは、実は、ほとんど容赦もない理性の崩壊というべきものが、起っていたのではないか、と想うのです。
小説は、一応3分冊になっていますが便宜上のものです。途切れ目は本来、ありません。ここにアップしたのは、その2冊目です。
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