散文とフーガ #07



旋律のない複声のための詩。いまだ書かれていない散文作品のシノプシス



穢死王、般若に謂く、


   このように、この ;contrapunctus, fantasia

    知っ

   聞いた。わたしは

    しっ

     ん?

   だれかに、いつか

      黙ってくれない?

    知った。そして

     しっ

   だれもに、わたしは

      しっ

    知っ

   このように、この

    笑み。やがて

     知っ

   聞いた。わたしは

    伏せた。目を

   だれかに、いつか

      聞いた。だから

    そっと。知っ

     だれ?

   だれもに、わたしは

      このように、いつか

    知っ、そして

   このように、も。この

      聞かされた。この

    笑み。やがて

     わたしは。あるいは

   聞いた。わたしは

    伏せた。目を

     わたしも。耳に

   だれかに、いつか

     このように、だから

   だれもに、わたしは


   このように ;contrapunctus

    だれが?…そう

   あなたは、そっと

    だれかが、…そう

   拭った。わたしを

    部屋で。だから

     屍たちの

      部屋で

   と。聞い、…その


   肌を。穢れた

    あなたは…だれ?

   まあたらしい、もう

    あなたが、そこ

     だれ?

   死穢にまみれた

      どこ?

    屍たちの部屋で

     だから

   肌を。わたしは


   どんな顔?

    な

   顔に、どんな、その

    どんな

   表情で?どんな風景を

    どん、

   見ながら。わたしは


   このように

      な、

    ほほ笑んだだろうか?

     案じている

   あなたは、そっと

      どんな

    かろうじて、その

     こころはいまだ

   拭った。わたしを

      どん、

    奇異なるいのちに

     まだ。正気づかずに

   と。聞い、…その


   肌を。穢れた

    ふるわせただろうか?

   まあたらしい、もう

    ゆびさきを、そこ

   死穢にまみれた

    未曽有の胎児に

   肌を。わたしは


   どんな顔?

   顔に、どんな、その

   表情で?どんな風景を

   見ながら。わたしは


   聞いた。このように

      あなたに。いまも

    やさしい風が

     願おう。ただ

   聞き、わたしは

      いまこそ。ようやく

    吹けばいい。吹き

     幸福を。その

   聞かさ、故に

      いまだに、あるいは

    つつまれていれば

     充足を。せめて

   ささやく。わたしは


   このように ;tema

   聞いた。このように

   聞き、わたしは

   だから、だからささやき


   ささやく。わたしは

      こ

    こここ

     こ

   聞いた。このように

      お

    おおお

     お

   ささ、こぼれだしてい

      え?

    こここ

     い、

   た。だから…ん。ささやき


   が。ささやき

    ん、

   を。もう

    ん

   この夜が、もう

    ん?

   尽きてしまう


   夜に


   このように ;canon

   聞いた。このように

   漏らす。だから

   喉。この


   ささやきを


   このように

    聞いた。このように

   あなたは、そっと

    このように

   なんで?わたしを

    だから喉は、この

   布で?たとえば


   ささやきを


   やわらかな、だから

    このように

     聞いた。このように

   拭い、死穢を

    そっと、あなたは

     このように

   そのための?布

    布で?たとえば

     だから喉は、この

   わたしを、あなたは


   ささやきを


   しろい、おおぶりな

      聞いた。このように

    やわらかな、だから

     このように

   拭い、穢れを

      聞いた、この

    死穢のための?

     そっと、あなたは

   拭き取るための?

      だから喉は、この

    拭い、わたしを

     布で?たとえば

   あなたは


   ささやきを


   すくいあげ

      このように

    しろい、おおぶりな

     やわらかな、だから

   涙を、と

      そっと、あなたは

    布に、穢れを拭って

     死穢のための?

   わたしは知った

      布で?あるいは

    あなたは

     拭い、わたしを

   頬に涙を


   はじめてのそれを


   このように

      やわらかな、だから

    涙を。頬は

     しろい、おおぶりな

   聞いた。このように

      死穢のための?

    知った。わたしは

     布に、穢れを拭い

   漏らす。だから

      拭い、わたしを

    はじめての涙、…を

     あなたは

   喉。この


   ささやきを


   このように

      しろい、おおぶりな

    このように

     涙を。頬は

   あなたは、そっと

      布に、穢れを拭い

    聞いた。このように

     知った。わたしは

   拭い、抱きあげた

      あなたは

    喉は、だからこの

     はじめての涙を

   腕に、あるいは   


   ささやきを


   胸。引き攣った

      涙を。頬は

    このように

     聞いた。このように

   胸に?その

      知った。わたしは

    拭い、抱きあげた

     このように

   鳩尾に、瘦せた

      はじめての涙、を

    腕に、あるいは

     だから喉は、この

   わたしの。あなたは


   ささやきを


   涙を。ふと

      聞いた。このように

    胸。引き攣った

     このように

   落とした、と

      聞いた、この

    鳩尾に、その。瘦せた

     拭い、抱きあげた

   聞いた。わたしは

      だから喉は、この

    わたしの。あなたは

     腕に、あるいは

   ひとすじの


   ささやきを


   涙が。ふと

      このように

    涙を。ふと

     胸。引き攣っ

   落ちた、と

      拭い、抱きあげた

    落とした、と

     鳩尾に、その。瘦せた

   わたしは知った

      腕に、あるいは

    ひとすじの

     わたしの。あなたは

   頬に涙を


   はじめてのそれを


   はじめての温度を

      あなたは、だれ?

   はじめての触感

      いま、どこで?

    いい。あたたかな日射しが

   はじめての涙を

      なにを、だれと

    差し込めば、…日射しに

     願うのだ。わたしは

   わたしは。このように

    いい。ふれられていれば

     安逸を、その

   ささやきを

     平穏を、せめて

   聞き、このように


   わたしは


故に般若は笑み、笑むままに穢死王は笑み、笑むままに故にかさねて謂く、


   聞いた。その ;contrapunctus, fantasia

      はじまり。それは

   声。ささやきを

      危機の。たしかに

    いなかった

   その時、いのちは

      いのちは、ん?

    だれも

     もが

   もがいていた、と

      危機の。たしかに

    勝利者など

     もがいた。すこしだけ

   だから、声は。その

      はじまり。それは

    あった。たしかに

     にもかかわらず、に

   ささやいた、と。わたしは

    イノチが

     そこにいのちが

   生きなければならない、と

     息を吐く

   あなたは、と。わたしは


   だから、声

    しない。諦めは

   ささやきを

    一瞬たりとも。わたしが

   生きなければ、と

    生かすのだ。あなたを

   あなたは、と


   聞いた。その

      危機に瀕し

   声。ささやきを

      死にかけ

    敗北者など

   その時、いのちは

      つねにあやうく

    与えたもの

     たしかに、引き攣けを

   痙攣していた、と

      死にかけ

    奪われたものも

     訴え、なじるかに

   声。だから声は。その

      危機に瀕し

    あっ、…イノチが

     ここに。いのちが

   ささやいた、と。わたしは

    そこに

     のけぞろう、と

   救われなければならない、と

    したたっ、汗は。…た

   あなたは、と。わたしは

    濡らし、…なに?

   だから、声

    わたしの、ん?

   ささやきを

    こめかみを

   救われなければ、と


   あなたは、と


   聞いた。その

      きざし。それは

   声。ささやきを

      崩壊の。はじめての

    いなかっ

   その時、いのちは

      息は

    だれも

     たしかに、窒息を

   つまらせかけた息を

      崩壊の。はじめての

    加害者など

     貪り、なおも

   だから、声は。その

      きざし。それは

    声は、だから

     餓えるかに

   ささやいた、と。わたしは

    あえぐかに

     いのちが、ここに

   報われなければならない、と

    あっ、

   あなたは、と。わたしは

    あせりだけがあった

   だから、声

    安定を、決して

   ささやきを

    あなたが

   報われなければ、と

    かたくななまでに見せないんだから

   あなたは、と


   聞いた。その

      破綻を、その

    犠牲者など

     たしかに、のけぞり

   声。ささやきを

      ほのめかし

    裏切られたもの

     苛立ち、じれるかに

   その時、いのちは

      すでにあやうく

    見捨てられたものも

     イノチが、ここに

   のけぞったのだ、と


   だから、声は。その

    ここに、いま

     しかし。…が、

   ささやいた、と。わたしは

    たしかに

     しか

   黄泉返らなければならない、と

    イノチ、が

   あなたは、と。わたしは

   だから、声

    しない。滅ぼしは

   ささやきを

    赦さない。わたしが

   黄泉返らなければ、と

   あなたは、と

    死を。あなたの死を

     滅ぼしは、と。…わたしは

   と、

     わたしは

   聞いた。その

      緊迫をあかし

   声。ささやきを

      追い詰められ、すでに

    だれにも、声。そ

   その時、だれもが

    泣き叫ぶ声は

     ないまま、に。まだ

   われを忘れた、と

     意識も。意志も

   だから、声は。その

    不意打ちだった。猶も

     まだ、なんにもないまま。に、

   ささやいた、と。滅びの

    赦さない。から

   同じ数だけの

    赦せない。から

   黄泉返りを、と


   だから、声 ;contrapunctus

      ささや、時に

    しない。赦しは

     なじりあうかに

   黄泉返れ

      叫ぶかに。また

    容認?一瞬たりとも

     また、くりかえし

   幾度でも、と

      ののしるかに

    死など。あなたの、死など

     ささやきつづけた

   あなたは、と


   何度でも。あなたは、

    あり得ない。生まれ

     ここに

   黄泉返れ。猶も

    黄泉返るかに

   息を。生きよ

    死穢から生まれた

   生き伸びよ


   死など。あなたに

    …だよ

   死など。な

    でしょ?

   あり得はし、…その

    …だよ

   死など


故に穢死王、その

   ほら。…この

      はばたきを

声、その

   聞く。ただ

      翼。キメラの

ひびき、その

   なつかしく。そして

      翼。聞く。その

息づいて吐く

   したしすぎ、もう

      猫の叫びをも

息、その

   目の前にしてだに

      聞く。ねじれて

息。吸う

   追憶じみていた

      のたうちまわる

息、いまだ吐かない、

   その

      蛇尾。尖端に

息、吸われなかったその

   ひびき。…を

      威嚇。鳴らされた

息さえ歌として、ただ歌として恋うあのキメラ、かつて穢死王にふたたびの息を吹き込まれた翼あるもの、穢死王の迦陵頻伽、と。そう名づけられた雌雄だにない美声の

   極彩色の

      けもの。蛇尾のある、…翼。と、猫

         撒き散らすがいい

猫、

   キメラ。不穏な

      蛇にして

         迦陵頻伽

猫にして

   弑殺者。その

      蛇、

         匂いを。その

鳥、

   キメラ。野蛮な

      鳥にして

         海水にも似た

鳥にして

   守護者。わたしの

      鳥、

         匂いを。その

蛇、

   キメラ。この

      猫にして

         迦陵頻伽

蛇にして

   いのちを狙う

      猫、

         撒き散ら

猫、翼と蛇尾のあるけものは穢死王その

   ほら。…この

      雄たけびを

声、その

   頭上に。ただ

      牙に。キメラの

ひびき、その

   さわぎたつ。そして

      牙に。聞く。その

息づいて吐く

   啼きわめく、もう

      漏れ出すままの

息、その

   好き放題に

      聞く。雄たけびと

息。吸う

   自在。野放しの

      大気を打ちつける

息、いまだ吐かない、

   その

      翼。尖端に

息、吸われなかったその

   ひびき。…を

      強風。吹き荒らした

息それらに惹かれ、惹かれるまま舞い、舞い来たり、来たりて頭上に旋回したあと、穢死王、その頭に止まる。憩う。故に般若は笑み、笑むままに穢死王は笑み、笑むままに故にかさねて謂く、


   死など。あなたにも ;contrapunctus

   死など。ない

   あり得はし、…その

   死など。だから


   わたしはたしかに

    風に。翼の

   生まれた。あり得ない

    風に。いま

     死など。あなたにも

   死穢。その

      わたしはたしかに

    舞いあがったのか?

     死など。…な、

   穢れから


   死穢。その

      目を。包帯に

    それさえ、沙羅。それら

     抉り出そうと?

   臭気から

      描かれた目を

    花。その水面にうかんだ

     鳥。その

   穢れから

      目を。執拗に

    それら。沙羅、それさえ

     爪が。時に

   その、死穢


   臭気から

      死など。…な、

    舞いあがったのか?

     わたしはたしかに

   その死穢

      死など。あなたにも

    風に。いま

   あり得な、…ん?生きるなど

    風に。翼の

   たしかに。わたしは


   だから、死など

   その。…あり得はし、

   ない。死など

   あなたにも。死など











Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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