小説 op.5-(intermezzo)《brown suger》⑦…君に、無限の幸福を。
これも修正バージョンです。
本文の方はもっと、辛らつなので、なんとなくこういうものが書かれているのかと理解いただいたうえで、
あとでアップする完全版を、読んでいただけたらありがたいです。
いま、その画像とか作ったりしてるくらいなので、もうちょっとアップするのに時間がかかりますが(笑)。
お前のいつものたいしたことのない画像はどうでもいいでしょ、という、
非常に客観的第三者的冷静な自分の声も聞こえますが、ネット上なので、もっと、
紙の本にはない感じのものを目指してるんですが。
もっとも、紙の本だって写真がいっぱい入ってるのありますけどね(笑)
近況としては、個人的に、いま、日本の古代史を調べています。
次に、書きたいなと想っているもののために。…
2018.06.24 Seno-Le Ma
brown suger
#5
Cảnh は Hạnh に外人向けの**を斡旋し、それは趣味のようなものだったに過ぎない。あるいは、Thanh たちの盗難活動も。収益の数字の上では、中国人たちがベトナムの少女たちの購買に払う金銭から、秀樹に分け与えられる報酬とは、比べ物にさえならない。
Cảnh がサイゴンに、少女たちの数人を連れて《出張》するたびに、Hạnh は目も当てられないほどのわがまま娘に変貌する。それを、Duy も、Thanh も、マリアも、笑い乍ら許容してやるしかすべはない。
海を見に行った。
マリアだけを誘ったら、子どもだけでは危ないと、Hạnh はゆずろうとしなかった。無数の韓国人や、中国人がビーチにたむろし、彼らが何をしでかすかわかったものではない。
何度、自分が、外国人にひどいまねをされそうになったかわからない。
いつか、マリアが Cảnh に*****をしてやった時、Hạnh は目を剥いた。頽廃した外国人の流儀など、わたしには理解できそうもない。
そのくせ、**を恐れた客の***************。
Cảnh が外人向けに用意している*****の箱の中から、一つ取り出して、マリアは口で膨らませてみようとした。…だから、と、Hạnh は言った。
子どもだけで、あんなところに行ってはいけない。
マリアを間に挟んだ、三人乗りのバイクが車道を走る。わざと遠回りして、マリアにドライブを楽しませてやった。ほとんど、バイクに乗ったことのない、日本から来た褐色の少女を。
海辺で、Hạnh がTシャツの下に着込んでいた水着を曝す。朝の日差しが柔らかくその皮膚に接する。
日差しが触れるたびに、日差しを罵ることも忘れない。真っ黒くしてしまう。わたしを。この少女のように、ブラウンに。
***塗れのあなたのブラウン・シュガー・ベイビィ
淡い逆光の中で、一人ではしゃぐ Hạnh の声が、波の音と、散乱する人々の影の立てる声の連鎖の中で、際立ってはいつの間にか消え去っていく。
僕はそして逆光の中に
マリアは海に入ろうともせずに、遊んで来いと、Thanh に指示した。
微笑む君を
家族連れの間にさまよいこんだ Hạnh が大袈裟に迷惑そうな顔を作って、Thanh を見た。匂う。
見た
夥しいほどの、潮の鈍い臭気に、大気のすべが染められていた。
Cảnh のうちに帰った後で、Hạnh のからだを洗い流してやるのは Thanh の仕事だった。水流の中に曝された Hạnh の身体と、戯れにじゃれ付いてくる彼女の身体が、Thanh ***********を感じていることには知っている。
あの子は? Hạnh が言った。ちゃんと知ってるの?あなたの**を?
…ねぇ、子どもはいつ
首を振った Thanh に Hạnh は唇を尖らせて、
大人になるの?
…なぜ?
自分しか知らないくせに、なぜ、マリアと Thanh とが愛し合っていると言えるのか、それが、Hạnh には理解できなかった。子どもだから、と、まだ愛し合うすべさえ知らないに違いない。Hạnh は、哀れまなければならない気がした。あるいは、嘲笑って仕舞うか、その境界線を感情がふらついて、結局は無表情な微笑みをくれる。
Hạnh の指先が Thanh の*********、声を立てて笑い、マリアは Bánh mì を買いに行った。
どう想う? Hạnh が Thanh のからだを自分のからだで洗い流しながら、…あるいは、自分勝手な********、どう?
なにが?
シャワーの水が撥ねて、口の中に入る。
渇いてもいない喉が、潤わされてしまう。…いいと想わない?
なにが?
わたしと一緒に、客をとればいい、と Hạnh は言った。外国人は、外国では、******。
****に
恥ずかしげもなく、何でも欲しがる。
****でみる?
少女だったら、ものめずらしがって、*********、
犬みたいにひざまづかせて
**************。
首を振る Thanh は、駄目だ、と。
頭の中につぶやき、マリアはしないよ。言った。
どうして?
…ねぇ
するわけがない。
犬みたいに
なぜ。
******?
理由はなかった。するかもしれない。しないかもしれない。けれども、するはずがない。
一瞬、Thanh を見詰めた後で、Hạnh は Thanh を後ろ向きにさせると、大量にあわ立てた手で*********。
人間はみんな
くさいっ、
*だから
言い、
穢く壊れた
わざとしかめられた顔を誰もみていないまま曝し、
*だから
笑い、
*みたいに
水流に
*********
派手な音を立てさせながら。
夜になっても帰ってこないマリアを案じた。Hạnh もいなかった。一緒にいたならば、やっていることは決まっていた。単に、二人でどこかで時間を潰しているだけかも知れない。
そうとは思えない。
ろくに会話もしないふたりが、ふたりで時間など潰せるわけもないことを想い、不意に、Duy と自分のカフェでの一時間が、所詮はスマホの画面を見ているだけで消費されることををも思い出す。
床の上に寝転がる。Duy も、Cảnh に付き添ってサイゴンに行った。今回の女の中の一人は、Duy のお気に入りだった。飛行機を待つハイランド・カフェの数十分の中で、Duy は山ほどの別れの言葉と、愛の言葉をくれてやるに違いなかった。
眼差しの先に、真っ白い壁があって、保護色らしい、灰褐色に近く擬色させたトカゲがつがいで
穢らしいその色は
這った。
生命の色
微妙な接近と、乖離を繰返す。彼らの皮膚感覚が知る、そうでなければならない距離を維持するたびに、寄り添いかけては俊敏に離れる。
見る。
壁を這う。至近距離で耳を澄ませば、冷たい、温度のない皮膚がかすかな音を立てているに違いないのを、Thanh は知っている。遠く、伸ばした手さえとどかない隔たりの中に、それは一切聴こえない。
かすかに青みを帯びた透明な照明が照らし出す空間の中に、Thanh は自分呼吸の音を聞いた気がした。
天井の扇風機がかすかな音を立てて回りながら風を送り、トカゲのどちらかが小さく喉を鳴らす。
深夜に帰ってきたマリアの、Hạnh が施してやったに違いないメイクを、一瞬見惚れながら同時に、唾棄すべきその醜悪さを嫌悪する。
Thanh の微細な表情に気付かないまま、マリアははにかんだ微笑を、上目遣いに Thanh に送った。Hạnh の、見なさいよ、この美人さんを、と、その声を、振り向きさえせずに、Thanh は Hạnh に殴りかかる。
大袈裟な乱闘が、目の前に不意に始められるのをマリアは、なすすべもなく見詰めるしかなかった。
肉付きのいい Hạnh の四肢が驚くほど強靭に Thanh に襲い掛かって、Thanh のこぶしが空を切り、Hạnh の腕がでたらめに Thanh の頭をぶつ。
壁に投げつけられた Hạnh が、息を切らして、大袈裟な涙に頬から唇までべとつかせながら、Thanh は罵られるにまかせる。なにも言い返す気にはならない。
Hạnh の収まらない怒りが、収拾がつきかけてはもう一度乱闘に火をつけた。もはや、飽きたように、Thanh は手出しをしなかった。振り払い、背を向けて、その Thanh を無理やり振り向かせて Hạnh は殴りかかる。
いつか、切れていたThanh の唇が、血をにじませているのを見た瞬間に、いつか感じた、口の中ににじむ血の、鉄身を帯びた味覚を思い出す。マリアは目を伏せた。
Tai sao、と …どうして? Thanh が言ったのは、マリアでもわかる。Hạnh がシャワーを浴びる、派手な音が聴こえた。
まだ怒っているに違いなかった。暴力に曝された、その身体を暴力的に洗い流し、熱を帯びた汗は洗い流される。発熱を皮膚の上に残したままで。…ねぇ
Em à…
どうして?と。
世界中の、苦痛のすべてを一身に背負ったように。いまここに、存在する場所などなく、そして、行き獲る場所すらもないのだと、そんな Thanh の、時分を直視した眼差しから、マリアは眼をそらすことさえ出来ず、
君を見つめて
そのつもりもない。
いたいだけ
見ればいい。
君を抱きしめて
あなたが、いま、見たいもの。そのすべてを。
いたいだけ
見たいだけ。
微笑みかけようとした瞬間に、マリアの両目を涙が溢れ、悲しみの断片さえないままに、しゃくりあげながらマリアは泣いた。Thanh を、その眼差しは捉えて話さず、涙の向うで、その姿も表情も、単なる白濁したノイズに過ぎない。
朝の気配に目を覚ます。
となりで Hạnh はもうおきていた。仰向けの Hạnh が顔先に掲げたスマホが、ゲームの陽気な音を立てた。
尿意があるような、ないような、その微妙な感覚の中に、Thanh のそれは******。Hạnh が顔を向けて、丁寧に作った微笑を投げたとき、Thanh は Hạnh に*******。マリアはまだ目を開かない。
眠っている気配はない。
まともな準備もなく、**************、Thanh のそれを受け入れられる。こじ開けるように*******、***鈍い、細かな痛みを感じ続ける。**剤を*っていないときの Thanh は、すぐに**して仕舞う。そのはずのそれが、微妙な尿意に邪魔されて、なかなか*******。そのままに、短くはない時間が消費され、マリアは身をよじって、Thanh の頭を撫ぜてやる。眼差しを重ねる勇気は、Thanh にはなかった。
いいですか?
髪の毛の匂い。
あなたに永遠をあげても。永遠の
マリアの匂いだと想っていたそれが、Hạnh のそれと
幸福と
重なり合って、もはや、
永遠の
同じ匂いだとしか想えない。目を閉じた Hạnh が、からだの下で、
安らぎを
*********息を、喉にならし続けた。
悲しみに、へしおれてしまうに違いない、と、Thanh は想った。いま、マリアと見詰め合ってしまえば。
髪の毛を撫ぜるマリアの手のひらに、彼女の匂いがある。
0コメント