小説 op.5-02《シュニトケ、その色彩》中(一帖) ④…木漏れ日の中の、君を見る。
僕の作品にしばしば出てくる《雅楽》ですが、このピリオドでもすこしだけ出てきます。
古代の、あまりにも古い音楽であって、今の僕たちが聴くと、まるで言ったことのない外国の音楽であるかのようにさえ、聴こえてしまいますが…
実は、日本の伝統音楽とされる《雅楽》、本当は外国の音楽だったって、知ってますか?
実は、《雅楽》をやったり聴いたりしている人はみんな知っているのですが、
あれは、平安時代までの期間に、日本人が大陸で収拾してきた音楽・舞踏なのです。
よく考えてみれば、雅楽の舞台って、あきらかに大陸風のけばけばしさを持っているでしょう?
しかし、大陸のほうには、かつてあんな音楽があったことの’、息吹さえ残っていません。
つまり、いまや日本にしか現存しない音楽なんですね。
そう言う意味では、自らの起源をさえ失った、非常に孤独な音楽なんですね、あれは。
…なので、私は、どうしてもやむにやまれず愛してしまうのです。
2018.06.16 Seno-Le Ma
シュニトケ、その色彩
中
一帖
私には自信がなかった。
何に対する、いかなる種類の自信であるのかは私にはわからなかった。汪が殺された日、加奈子は瑞希との通話が終わった後に、不意に、涙ぐんだ後で、忍び笑いし乍ら聞き取った次第を私に語ったが、ふと、…ね?
私に何か確認するように、「…ね?」彼女は言った。「私のこと、どう思う?」どうって?問い返す言葉を、「ね、思ってる?私が、例えば、」彼女が聞いてさえいないのは「悲しくないとか、…ね?ほんとに」知っていた。「悲しんでないっとかって思ってる?」
「思ってないよ」
「どう思ってる?」
「悲しんでる」
「…嘘」立ち上がって、部屋の向こうまで行って、壁によかって振り向くが、「信じられない。」
「なにを」すべて、と、「…なにが?」加奈子は言った「あんたのすべて。…というか、全部」笑い出しそうになった私は、「泣きそう」見詰めたその「泣き崩れちゃいそう」視線の先に捕らえた「ねぇ、泣いていい?」加奈子はわざと涙をこぼして見せ乍ら「パパが死んだって。…駄目」それが彼女の演技であることには「耐えらんない。狂っちゃう」気付いていた。彼女は「悲しんでない。もう、」すすり上げながら、そして「頭の中、砕けて、」鼻水をすすり「壊れちゃっただけ」Trang は確かに、最早完全に孤児だった。相続の問題で、残された親族から吊るし上げをくらい乍ら、結局彼女だけ取り残された現状の中で、Trang は何とか自分だけで生きていかなければならなかった。それは彼女にとってあまりにも過酷な体験だという気がした。私のホテルの部屋に住み込み乍ら、汪の死は一切の法手続きを経なかった。彼は不法滞在を続けていたにすぎず、国籍や戸籍もどこにあるのか、由紀乃さえ知らなかった。
ベトナムにあったりして、と加奈子は言って笑った。源さんと、よく来てたから、と独り語散るままに言葉を飛散させ、眼差しは澱む。彼女は父親を失ったのかもしれなかった。彼女が彼を父親だと認めて仕舞えば、彼女は父親を失うことができた。そうしなければ、それはそれに過ぎなかった。彼女がその猶予をもてあそんでいるようにしか思えなかった。彼女をどうあつかってやればいいのか、それさえ留保が付けられて、明け方、土砂降りの雨が降っていたその日、私は一日中加奈子のそばに居てやったが、無駄に時間をすごしんているだけだといういたたまれなさが止まなかった私の会社のベトナム人従業員たちがLINEにメッセージを残し、それに対応し、たまに送られてくるメールを開き、加奈子は鉢植えの花に水をやった。夕方の日が翳りかけたころ、窓越しの川沿いの向こうのビルの群れの果てに夕日が落ちていくが、「ねぇ、」加奈子が言い、「革命、どうなるのかな?」知ってた?唐辛子の「義人くんたちのやつ、あれ…」花って、知ってた?「なくなっちゃうの?」加奈子に見せられた鉢植えに、さかさまになった無数の唐辛子が、その上向きの尻の先に小さな花を一つずつ咲かせていて、美しいというほどのもでもなかったが、私は声を立てて笑う。「中止じゃない?」確かに考えてみれば、「いやだ。」それは「何で?」当たり前の「絶対いやだ。だって、…ね?」風景にすぎないのだし、「いやだよだって、そんなん」種を持つ唐辛子が「見たいじゃん。だって、」花を咲かさないわけがないのだが「やらせようよ、あいつらに。皇紀とか」しばらく笑い続ける私に、「…見たい。」なに?「日本、滅びるとこ」…ね?何、「何やってんの、あの***」おかしいの?おかしい?ね、そんなに「…滅ぼしちゃおうよ、日本。」言って加奈子が私に、だいじょうぶ?「まじ使えないよね、あいつら」言う。頭、「**だからね。多国籍**。」変になっちゃった?ベトナムに帰ってきた Nhgĩa-義人は私と加奈子に空港で出迎えられ乍ら、悪びれもせずに握手を求め、それを交し合った後、事件を思い出したように加奈子に頭を下げた。Nhgĩa-義人、あるいは皇紀が汪を殺してから二週間経っていた。王の本社を扶美香が仕切り始めたのは誰もが知っていた。誰も、何も異存はなかった。誰にも、もはや Nhgĩa-義人は必要なかった。誰も、Nhgĩa-義人の帰国を留めなかった。瑞希とは連絡が取れないままだった。加奈子は汪を父親として認めるのか、認めないのか、まだ留保しっぱなしだったので、Nhgĩa-義人の肩をたたきながら、単純に再会を喜ぶだけだった。Nhgĩa-義人が彼女に怯えていることには気付いていた。彼にとっては何をしでかすか予測のできない危ない外国人という以外の何者でもなかった。無意味ににこにこし乍ら「皇紀は?」独りで待ちうけロビーに出てきた Nhgĩa-義人に私は尋ねたが、もうすぐ来ると思います、言って、彼は周囲を見回す以外に手立てもない。新しい SIM カードも入れておらず、WiFi につないでもいない皇紀とは連絡をつけようもなかった。三十分経っても出てこなかったとき、私たちは皇紀を見捨てた。危ない目に会っているはずもなかった。私たちは何かを、皇紀が企んでいるに違いない、怯えに近い予感に苛まれた。「大人になったね」と笑いかけた私の言葉を Nhgĩa-義人は解さなかった。「大きくなった」彼は思いあぐねるように私の「立派になった」いくつかの言葉に聞き耳を立てるが「かっこいい、…ね?」やがて声を立てて笑ったが、「すみません、日本語下手になりました」言った Nhgĩa-義人は真っ白い肌を曝し、脱色された短髪と、その筋肉を研ぎ澄ました体躯を無理やり包んだいかにもな東アジアのリゾートファッションが、中国人の観光客か何かのように見た。彼の吹きかけている香水の名前を私は知らなかった。彼は自分をどう思っているのか知りたかった。ある意味に於いて、Nhgĩa-義人もまた汪を殺したのかもしれなかった。汪を刺殺することによって、彼の刀に本物の肉を斬らせ、血をすわせた Nhgĩa-義人は、ひょっとしたら初めて本物の男になった実感に倦んでいる気がした。例えば幼い思春期における女を知っている男とまだ知らない少年との間のどうしようもない距離が、私と彼との間に存在している気さえした。「柾也さんは元気でしたか?」Nhgĩa-義人の言葉にうなずいて、「あなたは?」
「おかげさまです」笑い乍ら言った。加奈子はことの始末を聞こうともしなかった。刑事処理できない汪の死体は多摩川河川敷に埋めたと言った。三日後に瑞希が与えた情報だった。朝早くに起きて、と Nhgĩa-義人は言い、皆で穴を作ります。「桜桃会の?」みんなで。そして、…大変でした。言った。日野市に桜桃会の道場があった。古いビルを一棟借りこんで、名義は加奈子のネイルサロンの法人名義だった。名目は研修所、河川敷での埋葬は彼らのいつもの手だった。数人の、彼らいわく「事故死」した桜桃会の会員たちの、皇紀たちによって制裁の名の下に刺殺された死体も、必ずその河川敷のどこかに埋められた。ャンさん、と呼ばれていた中国人学生を埋葬したとき、それは三年前の十月だったが、朝の五時におきて、彼らはャンを六人がかりで埋葬した。道場ビルの最上階の、もとビルオーナー居住階に泊まっていた私が無数の衣擦れの気配で眼を覚まし、まだ明けたばかりの朝の光の色彩をカーテンの隙間から確認し、リビングに行くと、時計は七時を回ったばかりだった。会員たちが交代でシャワーを浴びていて、入浴のすんだ会員は同じタオルで交代で濡れた髪をふき乍ら、私に笑いかけ、彼らは朝の挨拶をした。快活な朝だった。さがせます、…さわすあせます、…さがすあせますます、そして、ミャンマー人のカー・ティンが「騒がせる」と、言っていることに、数回目に気付いた。お騒がせしました、と、彼は私に、例えば皇紀から教わった礼儀作法をこなして見せたのだった。皇紀はもう、帰った、と言った。皇紀は近くのマンションに住んでいた。白いそのペンキの色彩がコンクリートの表面全部に塗装された低層の集合住宅だった。Nhgĩa-義人をベトナムに送ってきてから、皇紀は二日間姿を現そうとしなかった。「いるよ」加奈子の電話に、「だれ?」
「皇紀」さっき、私のマンションに普通に来た。久しぶりって、さ、…ね?
「…ね?」声を潜めた加奈子の声を不審に思った。「…そうなの。」皇紀に他意があるとは「…まじ。」思えなかった。もしそうなら、すでに私は、あるいは加奈子は彼に殺されているに違いなかった。「今、どこ?」
「目の前。突っ立って、私のこと見てる」じゃなくって、と、私は言って、「お前、…お前たち、今、どこなの?」なぜか不貞腐れていた Trang に見送られ乍らホテルを出て、まだ早い七時前の路面を歩く。周囲のカフェは客を蓄えて、暇つぶしの雑談の声が疎らに立つ。露店の Bánh Mì バンミー の店が客をさばく。バイクに乗ったまま、客がそれを受け取る。川沿いに並んだビルの一つが、加奈子が泊まっているビルだった。見知ったフロントの青年は、スマホをいじったまま、最早私に挨拶さえしなかった。顔を少し起こした後、そのままソファーに寝転んで、ペットボトルの水を口をつけずに飲んだ。言葉はかけなかった。ロビーのテーブルの上に活けてある花は、あれは、なんという名前っただろう?
房のように、小さな白い花を、そのてっぺんから垂れ落とさせて。
嗅ぎ取れもしない、離れたそこの、植物に汚された水の匂いを嗅いだ。
五階に上がって、開けたドアの向こうに、窓際に座っていた皇紀は私を認めると立ち上がって、目礼をくれ、かすかに微笑んだが、やがて、「久しぶり、だね」言った私に何か言葉をくれるわけでもない。いつもの男装といえばそうなのかもしれなかった。長い髪は無造作に束ねられ、…サムライ・スタイル。Tシャツとスウェットを ...どう?
いつだったか、着ているのだが、皇紀はそう言った。それに女装と男装の区別はなかった。ただ、その布地の下の身体を、さらしがぐるぐる巻きにされているには違いなかった。華奢で小柄な少年のように見える。握手を差し出そうとした私に、「ベトナム風ですか?」手を取りさえせずに微笑んで言った皇紀は、そして、私は笑いかけるしかなかった。
自分でホテル、探して泊まっちゃったって。「おかげで、キャンセルよ。私が予約しといたほうは。」加奈子が伏目がちに言っていた。「近く?」私の背後で。
「すぐそこです」そう、と、私は逆光の中の皇紀を見るが、男装しているつもりも関わらず、明らかに皇紀は女だった。研ぎ澄ませるだけ研ぎ澄ましたような、鋭い、そして単なる美しい女。なんで?「がっかりしました」なにが?
「蘭陵王、知ってますか」それは雅楽の演目だったし、皇紀が龍笛を吹くことは知っていた。「林邑楽といって、もともとこのあたりの音楽だったはずなんですが、」うー…ん。…ね、「その息吹さえないですね」歩いたの?と言った私に、ええ、皇紀はうなづくのだが、「やっぱり、あれは雅楽だから。日本にしかないものだし、」独り語散るように、「日本人にしか分かりませんね」皇紀は立ち上がって私の手を握る。パイプオルガンの音響から音の威圧感も尊厳も、オルガンという楽器らしい特質を全て取り除いて、音の鳴った空間性だけを削り残したような笙と篳篥の和音が、音響の背景と全面の水際を形成する。
音色は、耳の中に、鮮明な光の光沢を描き出す。
それら途切れ途切れの、複数のまま重なり合った音の反響する奥行きの中に、重なった竜笛の引き裂くようなような音が、極端に遅滞させられた旋律線を描く。
もとが抽象的で歌うふしをどこまでも拒絶した固さのある旋律線なので、極端に遅く吹奏されるそれは、時間そのものの経過を宙吊りにして停滞させたようにさえ感じる。
完全な静止。
音楽は聞こえているし、流れ去っていくのだが、それらが進行していたことは、後になってしか気付かない。…大陸の小国に蘭陵王と呼ばれた王がいた。彼は、女性のように美しい。戦争に明け暮れ乍らも、彼が軍を指揮すると、兵の士気は一向に上がらない。王の姿は兵士たちに、残してきた女のことをばかり思い出させ、憧れされ、焦がさせて仕舞うからだ。そのために王は醜い化け物の仮面をかぶって戦場に赴く。いくつもの戦場を駆け抜け、恐れられたが、誰もその仮面の素顔をは見なかった。Trang の両親の葬儀には参加しなかった。Trang もそれを求めては居なかった。ひょっとしたら、Trang の周囲の人間たちは、日本人のせいだと思っているかもしれなかった。
少なくとも、中国人だったら、袋叩きに会っていたかも知れない。彼らが嫌悪する、あの。いずれにしても、外国から来た男が、結局は全てを破壊してしまった。Trang たちの土地問題の係争も、Danh は寧ろ彼らの貪欲さに無理やりこじつけて仕舞うが、私には彼らに心情的な正論がある気がしていた。独りの、彼らに挨拶もない日本人が少女を手篭めにし、全ての日常を破壊した後で、残った土地をも窃盗しようとしていた。ある意味において、それは否定できない事実だった。私と出会わなくとも Trang は Mỹ たちを殺して仕舞ったかもしれないが、彼女が彼らを殺したのは私と出会った後だった。その両親さえも、彼女が殺して仕舞ったのかもしれなかった。私は執拗にそれを疑った。ガソリンに火をつけたのは彼女ではなかったとしても、そこまで追い詰めることならできたはずだった。私に遅れて部屋に入ってきた Nhgĩa-義人は皇紀に挨拶し、「これから、どうするの?」言った私に皇紀は「仲間を集めますよ」答えた。「ベトナムで」
「桜桃会は?」解散させました…、「発展的解消です。社長がなくなったからではありません。私たちは社長によって育てられましたが、彼が桜桃会であるわけではありません」
「みんな、どうするの?」
「国に帰ってもよし、日本に残ってもよし。仲間を集め、教育しろ、と」何のために、と言いかけた私より先に、「何で?」それを言ったのは加奈子だった。「革命のためですよ」
「なにそれ」まだ言ってんの?…でも、と、お前の望みだろ?私は思い、…ねぇ、鼻で笑おうとする加奈子は、あんた、まだ、そんな、皇紀をは見ない。寧ろ私を「頭、あんた」見た、「…ねぇ、おかしくない?」それだけだったが、いや、と、「例え、」言いかけた皇紀に「おかしくない?」加奈子は「汪が言ってた世迷い言でしょ?ぜんぶ。あんたが汪を殺したんでしょ?その革命も桜桃会も、みんなあんたが殺したんじゃない?…てか、殺そうとしたんじゃない?」死ななかったから、彼女の舌をはじくようなその「殺せなかったから、」音声を、「そんな事言ってんじゃないの?」誰もが聞いた。「…こじつけ、で。」自分がまいた種を、…ね。無言で、皇紀はソファに座ったまま、窓際にもたれた加奈子を見上げていた。「あんたたちも汪が作った出来損ないでしょ?汪と一緒に死んだんじゃない?」違うの?
あなたは?皇紀が言った。あなたも、死んでることになりますよ?私に殺されたことになって仕舞います。微笑んで、「まず、天皇を殺す。」あなたも社長の娘でしょう?そして、「社長はそう考えてはいなかった。」あなたは「外国人だからでしょう。」寧ろ調教されたようなものでしょう、あの「残念だが、」中国人に?言って、「陛下ご一家には死んでもらう。」皇紀が笑った時、加奈子は「皇孫の未来のためです。」あんたほどじゃない。加奈子は「甘んじて受け入れられるでしょう。皇居に」舌打ちした。眼を向けようともせず、ただ「火を放つ。いかなる意味でも」わたしだけを見ていた。Nhgĩa-義人は「象徴など要らない。」おそらくは何を「自衛隊を再教育する。」皇紀が言っているのか「簡単ですよ。」理解できていないに違いなかった。皇紀が「インターネット上で、」私に目配せしたとき、なんで、と「言論などいくらでも操作できる。彼らに」なんで、俺のほう、「我々の倫理の側に付かせる。」見るの?私の言ったその「直接軍事行動、要するにクーデターによって」独り語散るような声を、加奈子は「日本政府を支配する。」不意に振り向いて「まずは全国民の戸籍を」他人だから。言った、あんたは「解消する。」他人だから。だから聞いて「新たに登録制とする。」欲しいんじゃない。赤の他人は「海外逃亡したければ好きにすればいい。同時に」守ってくれるかもしれないから。何も「国土=領土の全体を放棄する。」分かってないから、…ね?「尖閣諸島?」…姫、と、加奈子が「竹島?」言い終わらない内に「そんなものの国籍などどうでもよい。」皇紀は加奈子に言った、あなたは、「出雲大社のど真ん中の無限に」何をしたいんですか?「小さい経度と緯度の交錯点に」何が欲しいんですか?その「設定する。あらゆる行政は」加奈子が皇紀の声にかぶせて「ファンド化する。日本銀行さえも、」わざと立てた笑い声を、Nhgĩa-義人が「…ね。」それに耳を澄ます。「紙幣を廃止し、」知っている、と、私は Nhgĩa-義人の表情に「電子化する。」思った。少なくとも、「政府そのものを崩壊させる。」皇紀の言うことを、彼はすべて「ファンドに登録した構成員の自由な議論の中で」理解した。そうに違いない「決定されればいい。」退屈さを彼は押し隠しているとしか「軍隊もね。ファンド化し、」思えなかった。「傭兵化してしまえばいい。」彼ら自身が議論のうえに果たした行為、「構成員たち自らが」皇紀は何も支配などしていないに違いない。「構成するいわば文字通り小さい株式会社=政府が運営すればいい。分かりますか?ネイションもガバメントも破綻させるわけですが、どう思いますか?日本で世界に先駆ける。多くの政府が破綻していくはずですよ。雪崩を打ったように、ね?」美しいですね。と、皇紀が、…え?私の声に振り返る。あの、山。「ライダンハン問題と言うのを知っていますか?」向こうに見えますね、あれ。目を細めて、「いわゆるベトナム戦争、第二次インドシナ戦争ですね。当時、」皇紀は窓の向こう「大量の韓国兵たちがベトナムに」加奈子の体の脇に「来た。そして婦女を強姦し、」大陸としては「虐殺し、」必ずしも「大量の混血児を」大きくはない山の連なりが「現地に残した。」…ね?
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