アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -36 //沙羅。だから/その唐突な/あなたの目覚めに/ふれていたのだ//02





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





   数秒にいちど

   いちどだけ、沙羅

   ブルーさえ

   ゆるみ、ひらかれ


   ただ茫然と

   とおい、沙羅

   なにかに見蕩れ

   ひらき、ひらかれ

謂く、

   ただ茫然と

      ささやき?

    まばたかないで

     聞こえなかっ

   とおい、沙羅

      声など

    醒めてしまうよ

     すこしも

   なにかに見蕩れ

      いちども

    うごかないで

     ささや

   ひらき、瞳孔は夢を見た。…匂った?見た。夢を、むしろその夢のなかについに覚醒したまなざしは、…なに?匂っていた。もう、最初から。あるいは最初の始まりの、始まりのきざしの最初のきざしかけの、その寸前からすでに。執拗なまでに。あざやかに。臭気。だから、

   まなざしに

      翳り

花。

   見蕩れられた

      翳りあう

花々の。しな

   花々が

      色彩は

さだめられはしない。それが

   翳り

      やがて

なんの花、どんな花、どの花、なにも。そこ。なぜならさまざまな花はさまざまに、ちぎれ散った花弁のかけらをだけ無数に、しかも、微風。やわらかな匂いのない微風はそよがせていたから。花は厖大だった。うずたかく、たぶんくるぶしなど

   ゆらぐのだ

      微風に

とっくに

   ぼくらは

      かたむいた

こえて積み上がっていたはずで、その

   いっせいに

      けものたちが

風。しかも

   その

      吼えていたのは

感じられなかった。やさしくそよぐ風など。たぶん、さらされた肌には。どこにも。如何にしても。散り花ゆらしの風に執着し、いくら感覚を研ぎ澄まそうが須臾にも、その

   ゆれて

      あれ?

気配さえも。花々は

   ほら

      こすれあうように

ゆれた。ゆらいだ。かずかぎりない種類。花々…あるいは、その死屍?手当たりしだいに落ちた花弁のむれ。それらは、ときに叩きつぶすに似た一瞬の強風にさえ煽られ、脈動をそこにやめない。だから、違和感。そのかくされようもない赤裸々。わたしはまばたく。…と、そう思った。気付いていた。そのころにはもう、まぶたなど。もはやわずかにも。そればかりか、

   沈黙の

      返り見て

眼球も、それどころか

   風。いま

      鳥。鳥たちが

眼窩さえも

   風のなかに

      饒舌な

残存してはなかったのに、…死?思いつく。死んだ?と、いつ?たぶん、そこ。はっきりと意識がそれにおもいあたる前には、…死?その認識に、死と明確な名を与えるにはためらいが、なら、黄泉の?…と。涅槃の?…と。とまれ、まどうてまどいつづけたまなざしは嗅いでいた。ただ花々の匂いを。それらのみを。匂いに噎せ、匂いに苛立ち、匂いにふいにか

   ん?

      ひとつ

恍惚を咬み、か。さわぎたっていたか。塊り。分化させようもない

   いま、きみの

      ただひとつ

渾沌の、

   かたごしに、雨が

      ひとつぶの

混洨の、

   はじけた

      溶解。唐突な

か。塊り。匂う。しかもひびきを聞いていた。それらいぶき。それら花たちの翳りに。いぶき、かぞうべくもないひとつひとつの裏側にだけ生息した、…厭うた?それらは、…羞じた?日射しを?その…いたんだ?直射を?ん、生息していたものたち。微音を

   しゃくしゃ

      舐めないで

たてていたものたち。

   しゃく

      お願い

やわらかな

   しゃくしゃ

      爪だけは

翳り。または深い翳りにも身をひそめ、ひそめられることないひびきのぶざま。咀嚼の音を、——虫たち。無数の

   むっ

虫たち。花よりもたぶん

   むぅふっ

多くの。咀嚼。あくなき

   むっ

咀嚼。貪欲な

   むぅぶっ

咀嚼。飢渇をいやせない無意味な

   むっ

咀嚼。牙たち。いつか

   むぅうぃっ

口蓋という名の孔に

   むっ

生やし、生やしまくって孔。孔。孔。見えはしない。しかし知っているのだ。体表すべてにびっしりと繁茂させたちいさな孔のむれ。鳴りやまないひびきはひびきつづけて、飛ぶ?し。飛び散った?し、飛ぶ?し。花汁は。聞きつづけるしかない。無慚でしかもナイーブなノイズを、だから

   愛が、ほら

      あふっ

せき込んだ。唐突に、

   ぼくのケツから!

      あふれさっ

沙羅が。あわてはしなかった。わたしは。いまさら。ふと「なに…な、」飛び散らせた「なにを、…」沙羅、「いま」匂いのある「見てる?」唾液。感じた。くちびるは「…の?なに、」口臭を、須臾の「…ね?」飛沫たち。それら「笑えば?もう」つめたさに。だから「いいよ」飛沫。匂い、そして「ひとりで、…もう」飛沫。それら「わたし、もう」ひやみ、「ダメかも。もう」ひやむ、それら「笑えないかも、って」飛沫。沁みた?「だけど」肌に、口臭も、温度も、どこ?「もう、ひとり」まぶたに?どこに?まぶたにも「笑えば?」たとえば、ひたいにも、それら「笑って、むしろ」そこらに「笑ってて、むしろ」そこらじゅうに「わたし、もう」飛沫。垂れた?「笑えないけど」匂い、したたる?「たぶん、もう」飛沫。

   せめて、そっと

      ね?いとおしい声を

それら「だって、さ」ひとつも「わたし」ひとつひとつも「ひとりだけ」ひやみ、ひやむ、それら「壊れてない?もう」飛沫。臭気が「ぼろぼろんなって、」沁み込む?「まだ?」肌に、…どこ?「大丈夫?かな」そこ?「まだ、」ここ?頬に?「生きてた?」ややかたむいて「わたし、まだ」笑んでしまいそうな「生きてた?…」飛沫。それら「ね、まだ」どこ?顎にも、「まだ?」どこ?その「まだなの?」くぼみ、顎と

   せめて、すこしでも

      ね?いとおしい声を

くちびる。あわいの「まだ死ねないの?」わずかな「なに、…な」飛沫。それら「なんで、…な」そこらじゅうに「生きてる?」くちびるのやや「よ、」うえ。鼻のあやうい「ね?まだ」したにも「わたし、まじ」飛沫。それら「生きてる?」匂う。あきらかに「よ、」それら、そこに「ね?まじ?」飛沫。それら「まだ?」ひとつ「まだなの?」ひとつひとつ「まだ、」ひやみ、ひや「笑えない?」飛沫。その

   せめて、ふいの

      ね?いとおしい声を

臭気は「ま、ま、」肌に、もう「笑えない?…それ」どこ?穢した?「わたし?」肌を?なにを?「わたしの?」飛沫。耳たぶは?「ま、ま、」粒だつ?「わたしのせい?」くちびる。その「まじ?」うえのくちび「なんで?…な」めくれ。かすかに「まだ?」めくれかけた「なんで、まだ」めくれきれはしない「まだ死なないの?まだ」どこ?それら「まじ」飛沫。そこらに「生きてるよ。わたし、」そこら、

   せめて、かすかに

      ね?いとおしい声を

そこらじゅうに「ここに、ま、」それら「ま、ま、」飛沫。匂い「…の、ま、」そして「ま、」匂いたち「…の、眼の前で」飛沫。それら「けなげ?」匂いながら「頑張ってる?」散った。ひとつは「まじ?」そこにひとつ「まだ?…、ま、」ひやみ、ひとつひとつ「ま、…ね。ま、」ひやむ、無数の「ま、」飛沫。臭気。「まじなの?」肌に、どこ?「まだなの?」ふるえ。いちどだけ「いきてるの?」かたむきかけた

   せめて、やさしげな

      ね?いとおしい声を

まぶたに「いきのこってたの?」まぶたにも「はびこってたの?」それはふと「増殖してた?」見すごすくらいの「分裂した?」そこにも。見すごされるべき「新陳代謝?」そんな「ちんち、」そこら「ちんちぃたいしゃ?」なに?そこらじゅうに「なんで?」なぜ?しかも「あふれてる」それら。ふるえ「ね?」猶も「ま、ま、」飛沫。匂う「笑えた?」残酷な「もう」飛沫たち。繊細な「ま、ま、わらっ」それ、

   せめて、消えそうな

      ね?いとおしい声を

ひとつ「笑えた?もう」そこ「ま、ま、」ひやみ「…あ、」ひやむ「死んだ。いま」それら「瞼の細胞、いま」飛沫。臭気。「一つ死んだ」ふれた。肌に「うめて。せめて」どこ?「皮膚から。いま」ひらきかけの「掘り起こして」くちびる。いま「うめたげて。せめて」あやうい「ま、ま、」昏みに「いたい。こころ」まぶたに「いたい。髪の毛も」どこ?「あふれてるよ」そこ?「でも、ねあふっ」ここ。

   せめて、かすれかけた

      ね?いとおしい声を

ここにも「あふれてるよ。わたしに」どこ?「けなげ?」そこらじゅうに「いのちが」散り「あふれて、もう」それら、ふれ「あふれかえって」飛沫たちは「ま、ま、」匂い、飛沫。「ここに、」それら「いきっ」それ、ひとつ「なに、…な」ひとつひとつら、ひや「なぜ、…な」ひやみ、ひや「ね。いま」それら、そ「ま、ま、」飛沫「わらっ」ひ、

   せむぇっ

      ね?いとおしい声を

「死ねよ」と。わたしは春奈につぶやいた。その耳。右耳の至近に。はっと、だからそのとき、われに返った春奈はおもわずわれを見うしない、そして、やがて、かたむけられた頸。ななめの、顎。あお向けたまま、わたしのほうに顔を向けた。そのときにはじめて、酔いつぶれた、…アルコール。錠剤。男たち。彼等。ひたいにひたすらさわがしかった輪姦の声といぶきと微動のあと、うつろな春奈。彼女はわたしを、はっきりと見止めた。いまだひらききった瞳孔にも。見ひらききったおおきな眼球にも。鼻孔にさえももう、おなじことだった。見ることも、見ないことも。見えるという事実も、見えないという事実も。ただ、混濁。鮮明な

   飲み込めよ

      だれ。だ

混濁。…敦子。

   垂れそうじゃん

      よ。だれ。だ

たしかに

   すすりあげろよ

      れだ。よだ

春奈はわたしをだけを見つめていた。二十八、…九?、歳、の。そしてどうしようもなく壊れた春奈。過剰な薬物接種。当時のいわゆる合法ドラッグ。1996?…7?…5?年の。覚醒剤。あくまで処方のなにかの錠剤。ごちゃまぜの春奈。ごちゃまぜの

   泣かないよ

      に?そこに。な

受胎。なぜ?

   もう、だって

      るえていたもの。ふ

もう、まともな前歯が

   ひとりじゃなってか

      に?そこに。な

のこっていなかった。

   ねぇじゃん。くち

      たむきかけたもの。か

なぜ?

   ば。ば。は?莫迦?

      に?そこに。な

笑った。

   ねぇじ

      けはじめていたもの。と

声を立てて、そこに、足元に「言えてる」春奈は。だから「じゃ、わたし、」ややあって「じゃ、じゃ、じゃ、」ささやく。その「じゃさっ。さ。もう」くちもとだけ「ぅぬぇっ」正気づいた「死ぬねっ、」くちびる。なすられた「いまっ」口紅。まるで「ぅぬぇっ」その「久しぶりですよね?」清雪は云った。まだ、あいまいに、ようやく性別をきざしたにすぎない声の儚げ。無防備なささやき。液晶。Lineの向こうに「そうでもない、…んじゃ。ないかな?」と、やがてわずかな

   なぜ?

      いいっ

絶句のあとで

   かたむくの?その

      たいんだっ。いいっ

つぶやいたわたしの

   まつげ

      たくぅあっ

声が終わるのを「ひどっ」待たない。「何か月間の放置ですか?」

「おまえを?」

   わたしたちは

      ください

思った。そこに、わたしはもう「あれだけ、なんか」

「…て、いうか」

   ね?ただ

      ぶっさ。さ

その声にさえ匂った、十六歳をすぎた、彼「親ぶった、みたいな?」

「連絡よこさないのは、さ」

   ささや

      刺してくぃださい

うつくしすぎた少年固有の「父親みたいなこと言っといて」

「あくまでもおまえも」

   なにも

      眸に針を

喪失劇。十歳以降、進行しつづけるあの「勝手に、ひとりで」

「…でしょ?」

   ささやくべきなにもなく

      ください

美を保持したままで美をうしなっていく喪失の「笑ちゃう。なんか、もう」

「ね、ひょっとして」

   なにも

      ぶっさ。さ

過程、もはや狂暴なまでのあやうさを「笑うしかなくないんじゃないですか?」

「根にもってるの?」

   わたしたちは

      刺してるぃださい

うしない、まるで殻を脱ぎ捨てた「って、なにを?」

「おまえ、あれ、…」

   ね?ただ

      舌に針を

蝶のように「殴られたことですか?」

「あやまってほしい?…でも」

   壊す

      ください

過去の形姿は捨て去られ、しかも「ぶちのめされた、あれ?」

「というか、さ。おれは」

   なにも

      ぶっさ。さ

うつくしさ。極彩色の「必要いじょうの、なんか」

「求めてないから。おまえの」

   壊すべきなにもなく

      刺してきゅぃださい

筋肉質な蝶?あらたに獲得された、「ただの虐待でしかない」

「べつに、おまえなんかの」

   なにも

      こめかみに針を

肉体のある美の狂暴。だから「体罰くらっちゃったこと?もう」

「赦し?とか、さ、だって」

   わたしたちは

      ください

危険。危機を他人の網膜になすりつける「鼻血まみれで」

「顔はなぐらなかったろ」

   ね?ただ

      ぶっさ。さ

張り詰めたうつくしさ。暴力。力。強靭な、それ。棘のあるなどと、もはやいうべきではない。有刺鉄線を眼球に巻く、…とか?「ぶつかったんです。あくまで」清雪は、もう「眞砂さんの」刃物の尖端の「はがいじめの腕」鋭利な「…とか、壁、…とか」

「…噓だよ。それは」尖りの綺羅そのもののうつくしさにすぎなかった。傷みしかない、清雪の、——こうだった?わたしも。おなじ年齢には。一卵性の親子。そう云った。敦子は。とはいえ、もううしなった。すべて。わたしには消えていた。鏡のなか。老いぼれ。気づかなかった。じぶんでは刃物の美。あのころ、じぶんには

   降りそそぐ

      雨が

きづかれなかった

   そそぐ。そそぎ

      虚空、唐突に

美。きづかれもしないまま

   そそぎつづけて

      その自重につぶれて

錆びていった美。美を、

   そそぎまくって

      のみこんだ

それだけを容赦なく

   降りそ

      ひかりを

美を猶もかたちづくるしか能のない美の「…でも、」傷み。「おまえ、元気そうじゃない?」云ったわたしは「しかも、さ」ほんのしばらくの沈黙を「ひとりだけ」聞いていた。清雪の「安心した、かな?おれは、」息づかい。心地よいマイクロフォン・ノイズ。その、いちど聞こえた気がした至近の

   ケツ、あげて

      きみの拳が

鼻息さえ。

   赦しを乞うた?

      まるで、たぶん

「…そうでもないよ」

   豚のように

      針のように

打ち消した。清雪は。そして、わたしの喉にこそ、踵を返した沈黙は咬みつく。ふと、こころのないかるさで、その清雪は笑った。耳ざわりがいい。かすかな、不用意なあざけりの気配さえも。くちびるをあてる。わたしは、ひたい。沙羅の額に。ただ茫然としていたブルーの瞳孔の直視をさけて、皮膚のした、肉の発熱を確認しようとして?謂く、

   すでにずっと

   目醒めていた

   沙羅に夜など

   不在だった


   すでにずっと

   目醒めていた

   沙羅は息を

   ながく吐いた


   すでにずっと

   目醒めていた

   沙羅は夜の疲れを

   かくしもしないで


   口をひろげ

   あけひろげ

   ひらき、沙羅

   そこに笑った

謂く、

   すでにずっと

      だれ?

    壊れもの

     破壊者は

   目醒めていた

      残酷な

    女たち

     ほくそ笑んだ

   口をひろげ

      屠殺者は

    壊れものたち

     だれ?

   あけひろげ


   声もひびかない

   笑い、沙羅。夜を

   空はすでに

   埋葬していた


   その色彩

   紅蓮の花に

   海はすでに

   埋葬していた


   その色彩

   紅蓮の綺羅に

   すでにずっと

   目醒めていた


   沙羅は息を

   ながく吸った

   すでにずっと

   目醒めていた

謂く、

   空はすでに

      弔うべき?あの

    いくつかの

     爪に、傷み

   埋葬していた

      髪にからむ

    事例。こわれ

     沁みこむような

   その色彩

      花ひとひらも

    壊れた

     傷み。爪に

   紅蓮の花に


   海はすでに

      死なない。花は

    女たち。わたし?

     ぶった切ろうか?

   埋葬していた

      死んだ花は

    眼の前で

     根元まで

   その色彩

      いのちがないから

    わたしが

     ちょん切っちゃおうか?

   紅蓮の綺羅に


   すでにずっと

      花ひとひらも

    こわした

     傷み。爪に

   目醒めていた

      髪に咬みついた

    いくつか、こわれ

     沁みこむような

   沙羅は息を

      弔うべき?あの

    壊した

     爪に、傷み

   ながく吸った








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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