攝大乘論:總摽綱要分第一/無著/三藏法師玄奘譯
底本
漢文;大正大藏
書き下し;國譯大藏經論部第十卷(國民文庫刊行會/大九・九・十六:印刷/同十九:発行/昭十・九・二十五:三版発行)
攝大乘論/無著/三藏法師玄奘譯
卷上
■總‘摽綱要分第一
■‘攝大乘論本所知依分第二
瑜伽31。No.1594[Nos.1592,1593;cf.Nos.1595-1598]
攝大乘論本卷‘上
(※上字宋元宮本俱作第一二字下附`同字同)
無著菩薩造
‘三藏法師玄奘奉 詔譯
(※三藏二字明本作唐三藏三字)
◎
國譯攝〔せふ〕大〔だい〕乘〔じよう〕論〔ろん〕本〔ほん〕
卷の上
■總‘摽綱要分第一
(※摽字明本作標字)
阿毘達磨大乘經中。薄伽梵前已能善入大乘菩薩。爲顯大乘體大故說。謂依大乘諸佛
世尊有十相殊勝殊勝語。
◎
阿ア毘ビ達ダツ磨マ大乘經中、
薄バ伽ギヤ梵ボン前に已に能く善く大乘に入り、
菩薩、大乘の體、大なることを顯らはさんが爲の故に說かく、
謂はく、
大乘〔敎〕に依れば諸佛世尊に十〔種〕の相の殊勝なる〔と〕殊勝なる語有り。
一者所知依殊勝殊勝語。二者所知相殊勝殊勝語。三者入所知
相殊勝殊勝語。四者彼入因果殊勝殊勝語。五者彼因果修差別殊勝殊勝語。六者即於
如是修差別中。增上戒殊勝殊勝語。七者即於此中增上心殊勝殊勝語。八者即於此中
增上慧殊勝殊勝語。九者彼果斷殊勝殊勝語。十者彼果智殊勝殊勝語。
◎
一には〔=者〕所知依の殊勝なる〔と〕殊勝なる語、
二には〔=者〕所知相の殊勝なる〔と〕殊勝なる語、
三には〔=者〕所知相に入ることの殊勝なる〔と〕殊勝なる語、
四には〔=者〕彼れに入る因果の殊勝なる〔と〕殊勝なる語、
五には〔=者〕彼の因果の修の差別の殊勝なる〔と〕殊勝なる語、
六には〔=者〕即ち是の如き修の差別の中に於ける增上戒の殊勝なる〔と〕殊勝なる語、
七には〔=者〕即ち此の中に於ける增上心の殊勝なる〔と〕殊勝なる語、
八には〔=者〕即ち此の中に於ける增上慧の殊勝なる〔と〕殊勝なる語、
九には〔=者〕彼の果の斷の殊勝なる〔と〕殊勝なる語、
十には〔=者〕彼の果の智の殊勝なる〔と〕殊勝なる語なり。
由此所說諸佛世尊契經諸句。顯於大乘眞是佛語。
◎
此の所說の諸佛世尊の契經の諸句に由りて、
大乘は眞ことに是れ佛語なることを〔=於〕顯らはす。
復次云何能顯。
◎
復、次に云何んが能く〔大乘の餘敎に勝れたるを〕顯らはすや。
由此所說十處。於聲聞乘曾不見說。唯大乘中處處見說。
◎
此の所說の十處に由る、
於聲聞乘に於て曾〔嘗〕て說けるを見ず、
唯、大乘に中にのみ處處に說けるを見る。
謂阿賴耶識說
名所知依體。三種自性。一依他起自性。二遍計所執自性。三圓成實自性。
說名所知相體。唯識性說名入所知相體。六波羅蜜多說名彼入因果體。菩薩十地說名彼因果修差別 画像
體。菩薩律儀說名此中增上戒體。首楞伽摩虛空藏等諸三摩地說名此中增上心體。無
分別智說名此中增上慧體。無住涅槃說名彼果斷體。
三種佛身。一自性身。二受用身。三變化身。說名彼果智體。
◎
謂はく、
阿ア賴ラ耶ヤ識を說いて所知依の體と名づけ、
三種の自性〔即ち〕一には依他起の自性、
二には遍計所執の自性、
三には圓成實の自性を說いて所知相の體と名づけ、
唯識性を說いて所知相に入ることの體と名づけ、
六波ハ羅ラ蜜ミツ多タを說いて彼れに入る因果の體と名づけ、
菩薩の十地を說いて彼の因果の修の差別の體と名づけ、
菩薩の律儀を說いて此の中の增上戒の體と名づけ、
首シュ楞リヨウ伽ガ摩マ・虛空藏等の諸の三サン摩マ地ヂを說いて此の中の增上心の體と名づけ、
無分別智を說いて此の中の增上慧の體と名づけ、
無住〔所〕涅槃を說いて彼の果の斷の體と名づけ、
三種の佛身〔即ち〕一には自性身、二には受用身、三には變化身を說いて彼の果の智の體と名づく。
由此所說十處。顯於大乘異聲聞乘。又顯最勝世尊但爲菩薩宣
說。是故應知。但依大乘諸佛世尊有十相殊勝殊勝語。
◎
此の所說の十處に由つて、大乘の聲聞乘に〔=於〕異なることを顯らはし、
又、最勝なる世尊は但、菩薩の爲に宣說したまへることを顯らはす。
是の故に應に知るべし、但、大乘に依つてのみ諸佛世尊に十〔種〕の相の
殊勝なる〔と〕殊勝なる語ありと〔說くことを〕。
復次云何由此十相殊勝殊勝如來語故。顯於大乘眞是佛語。遮聲聞乘是大乘性。
◎
復、次に云何んが、此の十〔種〕の相の殊勝なる〔と〕殊勝なる如來の語〔と〕に由る故に、
大乘は眞ことに是れ佛語なることを〔=於〕顯らはし、
聲聞乘を遮〔非〕し、是れ大乘性なり〔とする〕や。
由此十處。於聲聞乘曾不見說唯大乘中處處見說。
◎
此の十處は聲聞乘に於て曾〔嘗〕て說けるを見ず、
唯、大乘の中にのみ處處に說。けるを見るに由る。
謂此十處是最能引大菩提性。是善成立隨順無違。爲能證得一切智智。
◎
謂はく、此の十處は是れ最も能く大菩提の性を引き、
是れ善く成立し、隨順し、違ふこと無し、
能く一切智智を證得せんが爲なり。
此中二頌
所知依及所知相 彼入因果彼修異
三學彼果斷及智 最上乘攝是殊勝
此說此餘見不見 ‘由此最勝菩提因(※由字宮本作田字)
故許大乘眞佛語 由說十處故殊勝
◎
此の中、二頌〔あり〕
≪所知依及び所知相、
彼れに入る因果、彼の修の異なり、
三學、彼の果の斷及び智、
最上乘に是の〔十種の〕殊勝なるを攝む≫
≪此こに說けども、此の餘〔の處には〕見れども見えず、
此れ最勝なる菩提の因なるに由る、(※由字宮本作田字)
かるが故に大乘は眞ことに〔是れ〕佛語なりと許す、
十處を說くに由るが故に殊勝なり≫
復次云何如是次第說此十處。謂諸菩薩於諸法因要先善已。方於緣起應得善巧。次後
於緣所生諸法應善其相。善能遠離增益損減二邊過故。
◎
復、次に、云何んが是の如く次第して此の十處を說くや。
謂はく、
諸の菩薩は諸法の因に於て、要らず先づ善くし已つて、
方〔まき〕に〔十二〕緣起に於て應に善巧〔智〕を得べく、
次に後に緣より生ずる所〔=所生〕の諸法に於て、
應に其の相を善く〔了別〕すべし、
〔知〕善く能く增益損減の二の邊〔見〕の過を遠離するが故なり。
次‘後如是善修菩薩。
(※「後」字三本宮本俱作「復」字)
應正通達善所取相。令從諸障心得解脫。
◎
次に後に是の如く善く修する菩薩は
(※「後」字三本宮本俱作「復」字)
應に正に善き所取の相に通達すべく、
諸障より〔=從〕心をして解脫を得せしむ〔=令〕。
次後通達所知相已。先加行位六波羅蜜多由證得故。應更成滿增上意樂得淸淨故。次後淸淨意樂
所攝六波羅蜜多。於十地中分分差別應勤修習。謂要經三無數大劫。
◎
次に後に所知相に通達し已つて、
先づ加行位にて六‐波羅蜜多を〔行じ〕證得すに由るが故に、
應に更らに增上意樂を成滿して淸淨なることを得べきが故に、
次に後に淸淨なる意樂に攝むる所〔=所攝〕の六‐波羅蜜多をば、
十地の中に於いて分分に差別して應に勤めて修習すべし、
謂はく、要らず三無數大劫を經るなり。
次後於三‘菩薩所學應令圓滿。
(※「菩薩」二字三本宮本俱作「菩提」)
既圓滿已彼果涅槃及與無上正等菩提。應現等證。
◎
次に後に三菩薩の所學に於いて應に圓滿せしむべく、
(※「菩薩」二字三本宮本俱作「菩提」)
既に圓滿し已つて彼の果たる涅槃および〔=及與〕無上正等菩提をば、
應に現に等證すべし。
故說十處如是次第。又此說中一切大乘皆得究竟。
◎
かるが故に十處の是の如き次第を說く。
又、此の說の中にては一切大乘〔の敎しへ〕皆、究竟することを得たり。
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