流波 rūpa ……詩と小説156・流波 rūpa;月。ガンダルヴァの城に、月 ver.1.01 //亂聲;偈61





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ一部に作品を構成する文章として差別的な表現があったとしても、そのようなあらゆる差別的行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしもそのような一部表現によってあるいはわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでも差別的行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





あるいは、

   失踪。楓。それは

   ついに、思えなかった

   計画されたものだとは

   なぜ?


   失踪。楓。それは

   ついに、思えなかった

   衝動的なものだとは

   なぜ?


   謎めいて、謎。ただ

   謎のまま、謎。楓は

   それを選んだのだと思った

   その、謎という裝いが


   失踪。楓。それは

   ふいに、思った

   わたしたちのために

   謎めいてあるためになぜ嫌いなの…と、疑問形?「なに?」そう云ったわたしを…断定?返り見た楓は、だからふたたび問いなおそうとし、八月、…と「ごめん、いま、」事実、かれは問いなおしかけ、ふいに「…聞いてなかった」きらっ、ん。…ね?…と。「なに?」その楓。あまりにも邪気もない楓に、…ほほ笑み?だからそのほほ笑み、こぼされ、かならずしもこぼれ、感情のないこぼれ落ち、ほほ笑みに「…ね、ごめん」失う。はからずしもわたしは、「…なに?」思わず言葉を。

なぜ?

「言えよ」

「いいよ、もう」

   雪。…だね?雪

      地雷をふっぱなすためにのみ

「云ってよ」

「…やだ」

   だからぼくは今ひとり雪を見る

      大地は存在する

「なんで?」

「いいじゃん。もう、」

   そのほほ笑みに

      それは事実だから

「だから、…さ」

「実際、あんま。…てか基本、興味ないひとだよね」

   似合ったのは雪

      国家元首がそう云った

「なに?」

「だから、意外に、さ、なんか、」

   雨。…だね。三月のおわりの

      自動追尾爆弾発射のためにだけ

「云っちゃえ」

「…さ。なに?」

   やややさしい雨

      空は存在する

「秘密は、おれらに、さ、」

「なに知りたいの?」

   だからぼくは今ひとり雨を見る

      それが事実だから

「…だめ。…だよ?」

「なんで?」と、それらひびき。気配?…ひびき。言葉。それよりむしろ聴き取られつづけた聲。笑い、笑って、笑いあった聲。息。それらひびき。気配?…ひびき。…は、いつ?楓がわたしと≪流沙≫。その前からすがたを一度昏らます前の、だから、…十六歳?謂く、

   おどろくほどに大量な

   大量すぎた、大量の時間を

   くれた。あなたは

   見蕩れた時間を


   わたしが、あなたに

   あなたに、わたしが

   あなたが、わたしに

   わたしに、あなたが


   嗅ぎ取る。そこに

   綺羅なす肌に

   うぶ毛の息吹きに

   その綺羅の意味さえも


   おどろくほどに厖大な

   厖大すぎた、厖大な時間を

   くれた。あなたは

   失語の時間を


   わたしが、あなたに

   あなたに、わたしが

   あなたが、わたしに

   わたしに、あなたが


   嗅ぎ取る。そこに

   綺羅なす瞼に

   肌に皴めく息づかいに

   その綺羅の意味さえも


   知性など、もう

   ないにひとしい。最初から

   たぶん、知性など

   派生物だから


   派生物だから

   たぶん、知性など

   ないにひとしい。最初から

   知性など、もう


   その綺羅の意味さえも

   肌に皴めく息づかいに

   綺羅なす瞼に

   嗅ぎ取る。そこに


   わたしに、あなたが

   あなたが、わたしに

   あなたに、わたしが

   わたしが、あなたに


   失語の時間を

   くれた。あなたは

   厖大すぎた、厖大な時間を

   おどろくほどに厖大な


   その綺羅の意味さえも

   うぶ毛の息吹きに

   綺羅なす肌に

   嗅ぎ取る。そこに


   わたしに、あなたが

   あなたが、わたしに

   あなたに、わたしが

   わたしが、あなたに


   見蕩れた時間を

   くれた。あなたは

   大量すぎた、大量の時間を

   おどろくほどに大量な

すなわちあっ…と。ふいに巨大な喪失感。空のミルク・ウェイ。その眞ん中の、昏い孔より巨大な喪失。それは気づき。いま、あなたを傷つけてしまったかも、と。巨大な喪失。抜けださせない傷み。しかもささいな、ほんのわずかの。だから、そんなときに口元はゆがむ。やさしい笑みに。ただ、あなたのため、それは眼の前のあなたの、かさねて謂く、

   おどろくほどに大量な

      なにも、なにも

    あきれるくらい、もう

     ささやきなど

   大量すぎた、大量の時間を

      聞き取りはしなかった

    あきれるすぎるくらいに、いま

     聞き取りはしなかった

   くれた。あなたは

      ささやきなど

    見つめていようか

     なにも、なにも

   見蕩れた時間を


   わたしが、あなたに

      それはまるで

    見つめてたいから

     肌にふれ

   あなたに、わたしが

      吐息のように

    それ以外に

     吐息のように

   あなたが、わたしに

      肌にふれ

    求めたものはなにもないから

     それはまるで

   わたしに、あなたが


   嗅ぎ取る。そこに

      それはまるで

    あきれるくらい、もう

     肌にふれ

   綺羅なす肌に

      返り見の髮のざわめき

    あきれるすぎるくらいに、いま

     返り見の髮のざわめき

   うぶ毛の息吹きに

      肌にふれ

    見つめていようか

     それはまるで

   その綺羅の意味さえも


   おどろくほどに厖大な

      なにも、なにも

    見つめてたいから

     あなたをさえも

   厖大すぎた、厖大な時間を

      見い出しはしなかった

    それ以外に

     見い出しはしなかった

   くれた。あなたは

      あなたをさえも

    生まれた意味はなにもないから

     なにも、なにも

   失語の時間を


   わたしが、あなたに

      それはまるで

    あきれるくらい、もう

     まなざしにゆれ

   あなたに、わたしが

      蜃気楼のように

    あきれるすぎるくらいに、いま

     蜃気楼のように

   あなたが、わたしに

      まなざしにゆれ

    見つめていようか

     それはまるで

   わたしに、あなたが


   嗅ぎ取る。そこに

      壊れそうだよ

    見つめてたいから

   綺羅なす瞼に

      そばにいるだけで

    それ以外に

     そばにいるだけで

   肌に皴めく息づかいに

    存在理由はなにもないから

     とけちゃいそうだよ

   その綺羅の意味さえも


   知性など、もう

      碎けそうだよ

    知ってた?…ね?

     すでに、いつでも

   ないにひとしい。最初から

      そばにいるだけで

    宇宙のすべては

     そばにいるだけで

   たぶん、知性など

      すでに、いつでも

    きみを見つめるためだけに

     消え失せそうだよ

   派生物だから


   派生物だから

      すでに、いつでも

    きみが見つめるためだけに

     消え失せそうだよ

   たぶん、知性など

      そばにいるだけで

    事象のすべては

     そばにいるだけで

   ないにひとしい。最初から

      碎けそうだよ

    知ってた?…ね?

     すでに、いつでも

   知性など、もう


   その綺羅の意味さえも

      すでに、いつでも

    存在理由はなにもないから

     とけちゃいそうだよ

   肌に皴めく息づかいに

      そばにいるだけで

    それ以外に

     そばにいるだけで

   綺羅なす瞼に

      壊れそうだよ

    見つめてたいから

     すでに、いつでも

   嗅ぎ取る。そこに


   わたしに、あなたが

      まなざしにゆれ

    見つめていようか

     それはまるで

   あなたが、わたしに

      蜃気楼のように

    あきれるすぎるくらいに、いま

     蜃気楼のように

   あなたに、わたしが

      それはまるで

    あきれるくらい、もう

     まなざしにゆれ

   わたしが、あなたに


   失語の時間を

      あなたをさえも

    生まれた意味はなにもないから

     なにも、なにも

   くれた。あなたは

      見い出しはしなかった

    それ以外に

     見い出しはしなかった

   厖大すぎた、厖大な時間を

      なにも、なにも

    見つめてたいから

     あなたをさえも

   おどろくほどに厖大な


   その綺羅の意味さえも

      肌にふれ

    見つめていようか

     それはまるで

   うぶ毛の息吹きに

      返り見の髮のざわめき

    あきれるすぎるくらいに、いま

     返り見の髮のざわめき

   綺羅なす肌に

      それはまるで

    あきれるくらい、もう

     肌にふれ

   嗅ぎ取る。そこに


   わたしに、あなたが

      肌にふれ

    求めたものはなにもないから

     それはまるで

   あなたが、わたしに

      吐息のように

    それ以外に

     吐息のように

   あなたに、わたしが

      それはまるで

    見つめてたいから

     肌にふれ

   わたしが、あなたに


   見蕩れた時間を

      ささやきなど

    見つめていようか

     なにも、なにも

   くれた。あなたは

      聞き取りはしなかった

    あきれるすぎるくらいに、いま

     聞き取りはしなかった

   大量すぎた、大量の時間を

      なにも、なにも

    あきれるくらい、もう

     ささやきなど

   おどろくほどに大量な

なに?…と。ふいに、「なに?」思わず日本語でささやき返すと、返り見たそこに沙羅。背後に須臾のみじかい聲を立てた沙羅。膝をかかえたその沙羅が、だからその膝がしらに兩眼を擦りつけるようにしてうずくまり、床のうえに。床。御影の石。なげられた複数の翳り。二方向のまどに、さまざまな光源がさまざまに存在していた、…と、だから?沙羅。泣く?その褐色の沙羅が、泣いているに違いなく思われた。…なぜ?たとえば、傷み。殴打の。あるいは…だれ?皮膚に?あるいは骨格に?

あるいはそのやや表面の方に?

あるいは深い骨髄に沁みて、そこに?

あるいは関節に?

あるいは毛根とそのふれあう皮膚に漏れ出したに似て?

あるいは、…沙羅。

こころに?

その、…なに?

沙羅。

かの女の背中は身じろぎもしない。

もはや痙攣さえも。

…なぜ?

あるいは、すでに思っていた。

醒めたままの網膜にかぶせてふいに夢を見せつけられたようにも?

沙羅。

その兩の眼球をゆびさきに抉り取り、くりぬいて仕舞ったその沙羅は、いま、膝頭のお皿に必死に流血をふさいでいたのだと。

沙羅。

光り。

白濁。

沙羅。

白濁?

沙羅。

淡く、あわすぎてもはや白濁とさえも言いきれない綺羅。

綺羅?

沙羅。

やさしくかすかに、かすかすぎてしかもやさしすぎてもはや綺羅とさえも言いきれない綺羅。

そのほのめかし。

ほのめかし?

沙羅。

ほのめかされたなにものもそこに存在させてはいなかったのに?

沙羅。

無数にさまざまにひろがった翳りの、さまざまな、翳りのさまざまな散乱。

その眞ん中ちかい、あやういななめに座り、座り込み、ひとり、沙羅。

ちょうど、損傷のないほうを向けていた沙羅は、だからそのひたすらなめらかな曲線と彎曲に色彩。

…なに?

光り。

…なに?

白濁。

…なに?

綺羅。

ただなにか…なに?ほのめすかのようにそれらは、色彩。

あくまでも、猶もそこで沙羅がさらしていたその色彩を、如何に名づけるべきはわたしは知らない。











Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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