中論 Mūlamadhyamaka-kārikā 觀燃可燃品・龍樹 Nāgārjuna の偈を、青目 Piṅgala が釈し、三蔵法師鳩摩羅什 Kumārajīva が訳す・漢訳原文と書き下し(14)


中論卷の第二

  龍樹菩薩造

  梵志靑目釋

  姚秦三藏鳩摩羅什譯す



■中論觀燃可燃品第十、十六偈

問曰應有受受者。如燃可燃。燃是受者。可燃是受。所謂五陰。答曰。是事不然。何以故。燃可燃俱不成故。燃可燃。若以一法成。若以二法成。二俱不成。問曰。且置一異法。若言無燃可燃。今云何以一異相破。如兔角龜毛無故不可破。世間眼見實有事而後可思惟。如有金然後可燒可鍛。若無燃可燃。不應以一異法思惟。若汝許有一異法。當知有燃可燃。若許有者則爲已有。答曰。隨世俗法言說。不應有過。燃可燃若說一若說異。不名爲受。若離世俗言說。則無所論。若不說燃可燃。云何能有所破。若無所說則義不可明。如有論者。欲破有無。必應言有無。不以稱有無故而受有無。是以隨世間言說故無咎。若口有言便是受者。汝言破即爲自破。燃可燃亦如是。雖有言說亦復不受。是故以一異法。思惟燃可燃。二俱不成。何以故。

問へらく〔曰〕、

「應に受と受者は有らん。

 燃と可燃の如くに。

 燃、是れ受者。

 可燃、是れ受、所謂五陰なり」と。

答へらく〔曰〕、

「是の事、然らず。

 何を以ての故に。

 燃・可燃、俱に成ぜざるが故に。

 燃・可燃、若しは一法を以て成ずや。

 若しは二法を以て成ずや。

 二俱に成ぜず」と。

問へらく〔曰〕、

「且〔姑〕らく一異の法を置け。

 若し『燃・可燃、無し』と言はば今、云何んが一異の相を以て破さん。

 兎の角、龜の毛の無くば〔=故〕破す可くもなきが如くに。

 世間眼見に實には、その事有りて而る後に思惟す可し。

 金有りて然る後に、燒く可く鍛ふ可きが如くに。

 若し燃・可燃、無くば應に、一異法を以て思惟すべからず。

 若し汝、一異法有るを許るさば當に知るべし、燃・可燃有りと。

 若し有るを許さば〔=者〕則ち已有なり〔=爲〕」と。

答へらく〔曰〕、

「世俗法の隨に言說せば應に、過有らじ。

 燃・可燃、若しは一と說くも、若しは異と說くも、名づけ受とせ〔=爲〕ず。

 若し世俗言說を離るれば〔=則〕所論無し。

 若し燃・可燃を說かずば、云何んが能く所破有らん。

 若し所說無くば〔=則〕義、明らかなる可くもなし。

 論者有り、有無を破せん〔=欲〕とせば必らず應に有無を言ふべきが如くに。

 有無を稱するを以ての故に(而)有無を受くるにあらず。

 是れ、世間の言說の隨にすを以ての故に咎無し。

 若し口に言有り、便ち是れ受ならば〔=者〕汝、破を言はば即ち自破なり〔=爲〕。

 燃・可燃も〔=亦〕是の如し。

 言說有れど〔=雖〕も〔=亦〕復に受けず。

 是の故、一異法を以て思惟す。

 かくて燃・可燃、二俱に成ぜず。

 何を以ての故に。


 若燃是可燃  作作者則一

 若燃異可燃  離可燃有燃

燃是火。可燃是薪。作者是人。作是業。若燃可燃一。則作作者亦應一。若作作者一。則陶師與瓶一。作者是陶師。作是瓶。陶師非瓶。瓶非陶師。云何爲一。是以作作者不一故。燃可燃亦不一。若謂一不可則應異。是亦不然。何以故。若燃與可燃異。應離可燃別有燃。分別是可燃是燃。處處離可燃應有燃。而實不爾是故異亦不可。復次。

≪若し燃、是れ可燃ならば

  作・作者、則ち一なり

 若し燃、可燃に異ならば

  可燃を離れ燃有り≫

 燃は是れ火。

 可燃は是れ薪。

 作者は是れ人。

 作は是れ業。

 若し燃・可燃、一ならば則ち、作・作者も亦應に一ならん。

 若し作・作者、一ならば則ち、陶師、瓶と〔=與〕一ならん。

 作者は是れ陶師。

 作は是れ瓶。

 陶師、瓶に非らず。

 瓶、陶師に非らず。

 云何んが一ならん〔=爲〕。

 是れを以て作・作者、一ならず。

 故に燃・可燃も〔=亦〕一ならず。

 若し『一なる可からず』と謂はば〔=則〕應に異ならん。

 是れも〔=亦〕然らず。

 何を以ての故に。

 若し燃、可燃と〔=與〕異ならば應に可燃を離れ別に燃有らん。

 是れ可燃、是れ燃と分別したれば處處に、可燃を離れ應に燃有らん。

 而れど實には爾らず。

 是の故、異なるも〔=亦〕不可なり。

 復、次に、


 如是常應燃  不因可燃生

 則無燃火功  亦名無作火

若燃可燃異。則燃不待可燃而常燃。若常燃者則自住其體。不待因緣人功則空。人功者。將護火令燃。是功現有。是故知火不異可燃。

≪是の如かれば常に應に燃ゆべき

  可燃に因り生ずるにあらず

 則ち燃やす火の功無し

  亦、無作の火と名づく≫

 若し燃・可燃、異なれば〔=則〕燃、可燃を待たずして〔=而〕常に燃ゆ。

 若し常に燃ゆれば〔=者〕則ち其の體に自住したり。

 因緣を待たず。

 人功は〔=則〕空なり。

 人功とは〔=者〕將に火を護もり燃やしむ〔=令〕なり。

 是の功、現に有り。

 是の故に知れ、火は可燃に異ならずと。


復次若燃異可燃燃即無作。離可燃火何所燃。若爾者火則無作。無作火無有是事。問曰。云何火不從因緣生。人功亦空答曰。

 復、次に若し燃、可燃に異ならば燃、即ち無作なり。

 可燃を離れ火、いづく〔=何所〕に燃ゆ。

 若し爾らば〔=者〕火は〔=則〕無作なり。

 無作なる火、是の事有ること無し」と。

問へらく〔曰〕、

「云何ぞ火、因緣從り生ぜずば人功も〔=亦〕空しき」と。

答へらく〔曰〕、


 燃不待可燃  則不從緣生

 火若常燃者  人功則應空

燃可燃若異。則不待可燃有燃。若不待可燃有然。則無相因法。是故不從因緣生。復次若燃異可燃。則應常燃。若常燃者。應離可燃別見有燃。更不須人功。何以故。

≪燃、可燃を待たざれば

  則ち緣從り生ぜず

 火、若し常燃ならば〔=者〕

  人功は〔=則〕應に空しき≫

「燃・可燃、若し異ならば〔=則〕可燃を待たず燃、有り。

 若し可燃を待たず燃、有らば〔=則〕相因の法無し。

 是の故、因緣從り生ぜず。

 復、次に、若し燃、可燃に異なれば〔=則〕應に常燃なり。

 若し常燃ならば〔=者〕應に可燃を離れ別に燃有るを見るべし。

 更に人功を須〔用〕ひず。

 何を以ての故に。


 若汝謂燃時  名為可燃者

 爾時但有薪  何物燃可燃

若謂先有薪燒時名可燃者。是事不爾。若離燃別有可燃者。云何言燃時名可燃。復次。

≪若し汝、燃時

  名づけて可燃とす〔=爲〕と謂はば〔=者〕

 爾の時但に薪のみ有り

  何物か可燃を燃やしたる≫

 若し『薪は先有、その燒時を可燃を名づく』と謂はば〔=者〕是の事、爾らず。

 若し燃を離れ別に可燃有らば〔=者〕、云何んが『燃時に可燃と名づく』と言はん。

 復、次に、


 若異則不至  不至則不燒

 不燒則不滅  不滅則常住

若燃異可燃。則燃不應至可燃。何以故。不相待成故。若燃不相待成。則自住其體。何用可燃。是故不至。若不至則不燃可燃何以故。無有不至而能燒故。若不燒則無滅。應常住自相。是事不爾。問曰。

≪若し異ならば〔=則〕至らず

  至らざれば〔=則〕燒けず

 燒けざれば〔=則〕滅せず

  滅せざれば〔=則〕常住≫

 若し燃、可燃に異ならば〔=則〕その燃、應に可燃に至るべからず。

 何を以ての故に。

 相待して成ずるにあらざるが故に。

 若し燃、相待して成ずるにあらずば〔=則〕其の體に自住したり。

 何んが可燃を用ふ。

 是の故、至らず。

 若し至らずば〔=則〕可燃を燃やさず。

 何を以ての故に。

 至らず而れども能く燒く有ること無きが故に。

 若し燒けざれば〔=則〕滅無し。

 應に自相に常住したり。

 是の事、爾らず」と

問へらく〔=曰〕、


 燃與可燃異  而能至可燃

 如此至彼人  彼人至此人

燃與可燃異。而能至可燃。如男至於女。如女至於男。答曰。

≪燃、可燃と〔=與〕異なりて

  〔=而〕能く可燃に至る

 此れ彼の人に至り

  彼の人、此の人に至るに如く≫

「燃、可燃と〔=與〕異なりて〔=而〕能く可燃に至らば男、女に〔=於〕至るが如き。

 女、男に〔=於〕至るが如き」と。

答へらく〔=曰〕、


 若謂燃可燃  二俱相離者

 如是燃則能  至於彼可燃

若離燃有可燃。若離可燃有燃。各自成者。如是則應燃至可燃。而實不爾。何以故。離燃無可燃。離可燃無燃故。今離男有女。離女有男。是故汝喩非也。喩不成故。燃不至可燃。問曰。燃可燃相待而有。因可燃有燃。因燃有可燃。二法相待成。答曰。

≪若し燃・可燃

  二俱に相ひ離ると謂はば〔=者〕

 是の如き燃は〔=則〕能く

  彼の可燃に〔=於〕至らん≫

「若しは燃を離れ可燃有り。

 若しは可燃を離れ燃有り。

 各自に成ぜば〔=者〕是の如き、〔=則〕應に燃は可燃に至らん。

 而れど實には爾らず。

 何を以ての故に。

 燃を離れ可燃無く、可燃を離れ燃無きが故に。

 今、男を離れて女有り。

 女を離れて男有り。

 是の故に汝が喩へ、非なり〔=也〕。

 喩へ成らざれば〔=故〕燃、可燃に至らず」と。

問へらく〔=曰〕、

「燃・可燃、相待して〔=而〕有り。

 可燃に因り燃有り。

 燃に因り可燃有り。

 二法、相待して成じたり」と。

答へらく〔=曰〕、


 若因可燃燃  因燃有可燃

 先定有何法  而有燃可燃

若因可燃而燃成。亦應因燃可燃成。是中若先定有可燃。則因可燃。而燃成。若先定有燃。則因燃可燃成。今若因可燃而燃成者。則先有可燃而後有燃。不應待燃而有可燃。何以故。可燃在先燃在後故。若燃不燃可燃。是則可燃不成。又可燃不在餘處離於燃故。若可燃不成。燃亦不成。若先燃後有可燃。燃亦有如是過。是故燃可燃。二俱不成。復次。

≪若し可燃に因り燃

  燃に因り可燃有らば

 先きに定んで何の法有り

  而して燃・可燃有る≫

 若し可燃に因りて〔=而〕燃成ぜば亦應に、燃に因り可燃成じたり。

 是の中、若し先きに定んで可燃有らば〔=則〕可燃に因りて〔=而〕燃成じたり。

 若し先きに定んで燃有らば〔=則〕燃に因り可燃成じたり。

 今、若し可燃に因りて〔=而〕燃成ぜば〔=者〕則ち、先きに可燃有り。

 而る後に燃有り。

 應に燃を待ち〔=而〕可燃有るにあらず。

 何を以ての故に。

 可燃、先きに燃在りて後に在るが故に。

 若し燃、可燃を燃ぜずば是れ則ち可燃、成ぜず。

 又、可燃、餘處に在り燃に〔=於〕離るるにはあらざるが故、若し可燃成ぜずば燃も〔=亦〕成ぜず。

 若し先きに燃、後ちに可燃有りて燃ずるも〔=亦〕是の如き過有り。

 是の故、燃・可燃、二俱に成ぜず。

 復、次に、


 若因可燃燃  則燃成復成

 是爲可燃中  則爲無有燃

若欲因可燃而成燃。則燃成已復成。何以故。燃自住於燃中。若燃不自住其體。從可燃成者。無有是事。是故有是燃從可燃成。今則燃成復成。有如是過。復有可燃無燃過。何以故。可燃離燃自住其體故。是故燃可燃相因待。無有是事。復次。

≪若し可燃に因り燃ぜば

  〔=則〕燃、成じたるに復に成じたり

 是れ可燃中なれ〔=爲〕ば

  〔=則〕燃有ること無きなり〔=爲〕≫

 若し可燃に因り〔=而〕燃成ぜん〔=欲〕とせば〔=則〕燃成じ已はり復に成じたり。

 何を以ての故に。

 燃、燃中に〔=於〕自住したり。

 若し燃、其の體に自住せず可燃從り成ずとせは〔=者〕、是の事有ること無し。

 是の故に是の燃、可燃從り成ずる有らば今則ち燃成じて復に成ず。

 是の如き過有り。

 復、可燃に燃無きの過有り。

 何を以ての故に。

 可燃、燃を離れ其の體に自住するが故に。

 是の故に燃・可燃、相ひ因待する、是の事有ること無し。

 復、次に、


 若法因待成  是法還成待

 今則無因待  亦無所成法

若法因待成。是法還成本因待。如是決定則無二事。如因可燃而成燃。還因於燃而成可燃。是則二俱無定。無定故不可得。何以故。

≪若し法、因待して成ぜば

  是の法還りて待を成ず

 今則ち因待無し

  亦、所成の法も無し≫

 若し法、因待して成ぜば是の法、還へりて本の因待を成ず。

 是の如きは決定にして(則)この二事は無し。

 可燃に因りて〔=而〕燃を成じ、還へり燃に〔=於〕因りて〔=而〕可燃を成ず。

 是れ則ち二俱に無定なり。

 無定なれば〔=故〕不可得なり。

 何を以ての故に。


 若法有待成  未成云何待

 若成已有待  成已何用待

若法因待成。是法先未成。未成則無。無則云何有因待。若是法先已成已成。何用因待。是二俱不相因待。是故汝先說燃可燃相因待成。無有是事。是故。

≪若し法、待有りて成ぜば

  未成なるに云何んが待す

 若し成じ已り待有らば

  成じ已り何んが待を用ふ≫

 若し法、因待して成ぜば是の法、先きには未成なり。

 未成ならば〔=則〕無きなり。

 無きに〔=則〕云何んが因待有る。

 若しは是の法、先きに已成ならば、已成なるに何ぞ因待を用ふ。

 是の二俱に相ひ因待せず。

 是の故に汝、先きに『燃・可燃、相ひ因待して成ず』と說ける是の事、有ること無し。

 是の故、


 因可燃無燃  不因亦無燃

 因燃無可燃  不因無可燃

今因待可燃燃不成。不因待可燃燃亦不成。可燃亦如是。因燃不因燃。二俱不成。是過先已說。復次。

≪可燃に因りては燃無し

  因らざりても〔=亦〕燃無し

 燃に因りて可燃無し

  因らざりても可燃無し≫

 今、可燃、因待して燃は成ぜず。

 可燃、因待せざりて燃亦も成ぜず。

 可燃も〔=亦〕是の如し。

 燃に因るも燃に因らざるも二俱に成ぜず。

 是の過、先きに已に說きたり。

 復、次に、


 燃不餘處來  燃處亦無燃

 可燃亦如是  餘如去來說

燃不於餘方來入可燃可燃中亦無燃。析薪求燃不可得故。可燃亦如是。不從餘處來入燃中。燃中亦無可燃。如燃已不燃未燃不燃燃時不燃。是義如去來中說。是故。

≪燃、餘處より來せず

  燃處にも亦、燃無し

 可燃も亦に是の如し

  餘は去來に說けるが如し≫

 燃、餘方より〔=於〕來たりて可燃に入るにあらず。

 可燃中にも〔=亦〕燃無し。

 薪を析〔碎〕いて燃を求むるに、不可得なれば〔=故〕。

 可燃も〔=亦〕是の如し。

 餘處從り來たりて燃中に入るにあらず。

 燃中にも〔=亦〕可燃無し。

 燃じ已はれば燃ぜず。

 未燃なれば燃ぜず。

 燃時にも燃ぜず。

 是の義、去來中に說けるが如し。

 是の故、


 可燃即非燃  離可燃無燃

 燃無有可燃  燃中無可燃

 可燃中無燃

可燃即非燃。何以故。先已說作作者一過故。離可燃無燃。有常燃等過故。燃無有可燃。燃中無可燃。可燃中無燃。以有異過故。三皆不成。問曰。何故說燃可燃答曰。如因可燃有燃。如是因受有受者。受名五陰。受者名人。燃可燃不成故受受者亦不成。何以故。

≪可燃は〔=即〕燃に非らず

  可燃を離れ燃無し

 燃に可燃有ること無し

  燃中にも可燃無し

 可燃中にも燃無し≫

 可燃即ち燃に非らず。

 何を以ての故に。

 先きに已に作と作者と一なる過を說きたり。

 故に可燃を離れ燃無し。

 常燃等の過有るが故に。

 燃に可燃有ること無し。

 燃中にも可燃無し。

 可燃中にも燃無し。

 異の過有るが故に。

 三皆に成ぜず」と。

問へらく〔=曰〕、

「何故に燃・可燃を說きたる」と。

答へらく〔=曰〕、

「可燃に因り燃有るが如く、是の如くに受に因り受者有り。

 受、五陰と名づく。

 受者、人と名づく。

 燃・可燃、成ぜざれば〔=故〕受・受者も〔=亦〕成ぜず。

 何を以ての故に。


 以燃可燃法  說受受者法

 及以說瓶衣  一切等諸法

如可燃非燃。如是受非受者。作作者一過故。又離受無受者。異不可得故。以異過故。三皆不成。如受受者。外瓶衣等一切法皆同上說。無生畢竟空。是故。

≪燃・可燃の法に〔=以〕

  受・受者の法を說きたり

 及び瓶衣に〔=以〕

  一切にも等しき諸法を說きたり≫

 可燃、燃に非らざるが如く、是の如くに受、受者に非らず。

 作・作者、一なる過の故に。

 又、受を離れ受者無し。

 異ならば不可得なるが故に。

 異の過を以ての故に三皆に成ぜず。

 受・受者の如く、外の瓶衣等一切法皆、上說に同じくに無生なり。

 畢竟にして空なり。

 是の故、


 若人說有我  諸法各異相

 當知如是人  不得佛法味

諸法從本已來無生。畢竟寂滅相。是故品末說是偈。若人說我相。如犢子部衆說。不得言色即是我。不得言離色是我。我在第五不可說藏中。如薩婆多部衆說。諸法各各相。是善是不善是無記。是有漏無漏有爲無爲等別。異如是等人。不得諸法寂滅相。以佛語作種種戲論。

≪若し人、我〔が〕有り

  諸法各に異相なりと說かば

 當に知るべし是の如き人

  佛法の味を得ずと≫

 諸法、本從りこのかた〔=已來〕生無し。

 畢竟にして寂滅の相なり。

 是の故、品末に是の偈を說きたり。

 若し人、我相を說くに、犢〔トク〕子〔シ〕部衆の說の如く、『色即ち是れ我なり』とは言ひ得ず。

 『色を離れ是れ我なり』とも言ひ得ず。

 『我、第五不可說藏中に在り』とも。

 薩〔サツ〕婆〔バ〕多〔タ〕部衆の『諸法、各各に相なす。

 是れ善なり、是れ不善なり、是れ無記なり。

 是れ有漏なり、無漏なり、有爲なり、無爲なり』等の別異の說の如し。

 是の如き等の人ら、諸法寂滅の相を得ず。

 佛語に〔=以〕種種の戲論を作すのみ」と。








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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