蚊頭囉岐王——小説23
以下、一部に暴力的な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
埀れる糞尿。
出來損ないの。
消化不良の。
搾取不良の。
ただ卷きちぢまる以外に用を足さない。
お前の腸は。
あやうく。
イノチのカタチが息遣った。
あやうく。
息吹きつゞけた。
時には止めてしまいながら。
蘇生処置。
時には皮膚を乾かせ。
滲む血と瀛み。
軟膏を塗る。
その腫瘍。
腫れ上がったそれ。
膨張。
年と共に。
あくなき膨張。
むしろ育ちあがって行くその肥大。
腫瘍と瀛みだけを生長させた。
おそらくは、と。
思う。
お前はその腫瘍を育てるための、と。
思う。
むしろお前とはむしろその腫瘍であって、と。
思う。
たぶん刃物で切り裂いたらね。
すごく臭いよ。
臭い汁。
あやうく。
かろうじてできあがったそのカタチ。
イノチを維持して膨張させる。
あやうく。
お前のイノチが息吹く。
あやうく。
お前のイノチが息を吐き出す。
あやうく。
故レ斗璃伎與爾にその口に比登の喉の聲だにもなくば斗璃麻裟ひとり娑娑彌氣囉玖
燃え上がる目を見た
うまれたことなど
その焰の眼を
いちどさえ
保牟良たつ目を
うまれたことさえない死人たちの
燃え上がる目を
その未來の死人たち
その目の内に
色のない
あなたは見た
陽炎がゆらぐ
見開いたその目
腐った肉の
その目の保牟良は
腐った血に綺羅
ことごとく見た
匂いたち
燃え上がる
玉散らせ
炎なすその眼のうちに
未生の死人たちは
かくて斗璃麻裟
あなたも見ていた
爾に都儛耶氣良玖
やがてぼくたちは滅びるのだった。
躬づからの細胞にさえも裏切られ。
細胞たちはぼくたちは捨て置きひとりで曝す。
その覺醒を。
もはやぼくたちを返り見なかった。
その蛇が。
霑う肌のつややぐ蛇が。
そして拔け殻など返り見ないように。
その蝶が。
鱗粉に花の色を散らした美しい夢。
そして拔けた蛹の殻を捨て去るように。
その蠶の。
絹糸を散らすその虫が。
そして眞白の繭だに喰い破るにも似て。
ぼくたちは見た。
滅びの時にぼくたちの立てた巨大な塔のすべてが崩れるのを。
ぼくたちは見た。
放棄された建造物がいつかひとりでに燃え上がるのを。
ぼくたちは見た。
放置された無人の油田。
その發火の莊嚴。
滅びの時に傾く。
ぼくたちの眉は斜めに傾く。
崩れた裂けめに漏れ出したガスの立てた馨り。
滅びの時に傾く。
ぼくたちの眉は斜めに傾く。
腐乱した鐵のひん曲がった折れ目。
何かの殘した牙のように。
自然發火のその炎。
煙る焦げた黑。
紅とオレンジ。
たがいに溶けあう馨りある炎。
滅びの時に傾く。
ぼくたちの眉は斜めに傾く。
茂り始める樹木の影に。
コンクリートを食い破る。
破壞の樹木たち。
アスファルトを喰い千切る。
破壞の樹木たち。
ぼくたちの滅びのその時にさえも雪。
その雪は。
その冬の日にも。
わずかに殘った北。
纔かに凍った纔かなどこかに。
それでもなおも降り敷いたものを。
亂序ノ一蚊頭囉岐王舞樂第二
啞ン癡anti王瑠我貮翠梦organism Ⅱ
2021.01.07.黎マ
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