修羅ら沙羅さら。——小説。65
以下、一部に暴力的な描写を含みます。
ご了承の上、お読みすすめください。
修羅ら沙羅さら
一篇以二部前半蘭陵王三章後半夷族一章附外雜部
夷族第四
かクに聞きゝ8月22日晴れて晴れ切りタりきかクて早朝壬生バイクにゴックを背に乘らせ海へ行きゝかクて海まバらなる人と人ゝのみ散らし靜かなりきかクて壬生空に雲ノ雲母なす雲ノ綺羅らかなるを見又海波立ちて靑クもはや靑みだに感ジさせずに白く綺羅メきに白クざわめきて騒ぎ立ツを見き肌にすデに灼く日のひかりノ温度ありきかクて頌して
その朝に
おとうさんって、どんなひと?
さゝやく
おとうさん?
海、行こう
いるよね?…ぼくにも
海?
どんなひと?
その朝に
恵美子はそして私を見詰め、思い出したようにいきなり笑んで
ゴックはむずかる
おかあさんに聞いてみな
燒けるよ
おかあさんが知ってるよ
灼ける?
企むように、十歳の夏?
肌、黒くなるよ
夏休み?
その朝に
恵美子はやがて
風
聲をたてゝ
空気は停滞していたのだった
その唇に笑ったのだった
籠り始めた
はじめて会った時
灼熱の日の
雪菜は
ひかりの温度に
丸山町のクラブの前で
空気は停滞していたのだった
中を窺いながら
刺す日のひかり
夜の、壁の、おとした暗がりの中で
赤裸ゝなまでに
コンビニで買った…盗んだ?
色をいろいろにさらし
パンをひとりで咬んでいた
風
誘惑するように
疾走するバイクが
むしろ
その速度
誘惑するように
風
わたしは彼女に
むしろ風圧に抗い
話しかけた。通りがかりに
風圧にうちのめされながら
ひとり?
速度
家、すぐそこだから
加速する速度に
雪菜は答えた。…家?
三車線の大通りに
ひとりだよ。…と
車もバイクもほとんどない
あらためて私を
速度
見上げて笑った
加速する速度に
雪菜にわたしは、彼女の爲に
背中でゴックがなにか云った
笑ってやった。…ひとりなんだ
ヘルメットの下
すぐそこ。…と、雪菜は
マスクの向こうで
ほら、…あの…あの
なにか聲を
高いマンション。すれ違う
立てられた聲は
言葉と言葉ら、聲と
聞き取られる前に
聲らのひびきのなかに
風に流れる
背後のビルを
すでに
指さしてそして振り返り見た
聞き取られる前に
私を見詰め
風に流れる
ひとりで雪菜はパンを咬んだ
東の海
それは冬
まさに
十一月?
東の海
いい子だね、と
ゆゑに
真鍋孝美という名の教師が
まなざしは空の
私にささやく。その
海の近くに開口した
十一歳の
光の閃光に白く眩む
グラウンドで
昏む目が
友達らの誘いを
見出す白
敢えて断って
銀色の
稚彦と日影に
そして暗い
あそぶ私を、いい子…
ものの翳りにすぎない
壬生君って、やさしいんだよね…
ビルのかたちの
わたしは思う
切れた先
その
湾岸道路の
逆光の中に見たと、いつの間にか
一直線の
逆光に見上げて見たといつの間にか
白濁の向こうに
記憶された眞鍋の顏に
あまりにもあざやかな
あなたはまさに、いま、差別した
銀色の綺羅ゝの
あなたはまさに、いま、この少年がだれにも無視され
かがやきを見た
排斥されてしかるべきだと規定していた
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