ジュリアン・O、浸蝕。そして青の浸蝕 ...for Julian Onderdonk /a;...for oedipus rex #129



以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



(承前)

彼。まだ、あまりにも未完成な

   まさか。…と、

      あれは

         ら。れるか?

美少年だった。あした、

   懐疑。うたがいが

      彼。そう

         感じ、ら

夭折して仕舞いそうな

   ない。すでに

      お前。それは

         ら。れるか?

あやうさが

   余地は。入り込む

      あれ

         きみも。いま

あった。いま、

   隙は。…ほら

      あれが

         すべては、すさまじい

眼の前に、

   確実に。まさに

      お前。そう

         速度。加速し、かつ

彼。庭に、

   圧倒的に、そう

      彼。それは

         遅滞。とめどもない

鹿。忍び込んでいわゆるつま恋の、いじましい耳障りな泣き声を聞かせた動物の体臭。切り取られた角の向こう、

   知ってる。もう

   視覚のすべて

   細胞の

   皮膚感覚のすべてでさえ


   そう

    だね?

   もう、

    そうだね?

     知っ

   それら、…ええ


   それらすべてで


彼。見間違いうわけはない。この子こそ

   蒸発している

実子と、

   時間が。その

言い聞かせる必要もなく

   進行が、…ええ

素直に

   あぶない!

自分の、まさにじぶんたちの子だと思い愛したあの少年がいま見違えてそこに立っていた。もはや、早世をあやぶまれるあやうさはない。肉体。着衣も鍛えられ一分の隙もない事実をかくせない。ただ、そこに立ち、立ちつくしているにすぎなくも、たたずまいに無駄はなく、張りつめてしなやかにゆびさきの須臾の停滞にさえ俊敏を感じさせ、かつ、失笑して仕舞いそうになる赤裸々なやさしさ。寛容。ここちよさ。もう、じゅうぶんに少年は

   滅びた。あの

      そうだね。かいっ、ときに

大人だった。そして

   滅びやすく、たやすく

      アルカイックな?いわば

うつくしいその、

   滅びに、すぐさま

      かっっ。不可解な笑みを

男の体躯は

   魅入られてしまいそうな

      見せたも、…あの

ひとり

   ひ弱さの美など

      かいっ、きみは。かつての

絶句していた。…波紋、と。雅孝はいちどつぶやきかけた。事実、まさにそうだった。微笑を、だからあるいは傷ついて、追い詰められ、もう行き場所がなくて逃げ込んだのかもしれない彼に、刺戟をあたえはしないように赦しの、繊細で寛容な微笑を狡猾につくり、そして、しかもまさにそうだった。波紋。雅孝はもういちど、はっきり彼に聞こえる声でおかえり、

   やつれた!

      お願いです。やめ

         そうだね

と。彼の

   足もとの

      や。…だって

         でも、わたしは

耳と、懊悩の

   地表のすべてが

      喉が、わたしの。知っ

心の

   みずみずみしく

      破裂しそうで

         と、そんな気が

ざわめきをいやすために「波紋、」

   色あざやかに

      お願いです。やめ

         こうなるって

まばたき。「おかえり」そう、

   おとろえた!

      や。…だって

         こうなるしか、な

たしかに

   知ってる。もう

   聴覚のすべて

   全身の

   鳥肌の


   そう


   もう、それらすべてで


たしかに言いきった。どうしようもなく、まさにそうだった。波紋の目には、あられもなく腰砕けの顎をつきだし、言葉をすべて忘却した恥辱的な須臾の、そのいつまでも醒めない継続に内臓をさえいたぶられたまま全身を左にかたむけた恍惚の痴れきった男が、のたり

   …あっ

のたり

   …あっ

接近していた

   …あっ

ぶざまだったにすぎなくとも。最初に、

   激怒したかに

      見よ

口火を

   血が。まさに

      加速。苛烈な

切ったのは

   沸騰しつづけ

      加速。鮮烈な

波紋だった。それは、さまざまなシチュエーションに、さまざまなヴァリエーションを以て、もう、数日間くりかえし傷みと悔恨とともに想像され続けた言葉の、もっとも「お父さん、」シンプルな「ごめん」定型。「ほんと、いままで、ほんっとおれ、ごめん」ささやき、もう、手をのばせばとどくそこに歩みよっていた痴れた男の、足元におもわず波紋は膝を

   呼んでいい?

      お、と

         なんてことだ!

ついた。くずおれた

   あなたを

      とう、と

         世界中がいま

息子に、雅孝は

   あなたに掛けるべき

      と、唐突な

         絶望した

まさに、あきらかに

   呼び声で

      躊躇とはずかしさ

         なんてことだ!

眉をひそめ、

   呼び方で

      お、と

         世界中がいま

諫めていた。おまえのような、と。誇り高い男がそんなあられもない格好を「お父さん、

   お前は選ばれた

おれ」

   高貴な男で

見せるんじゃない「ほんと、」

   あるべきなん

と。「もう」

「波紋?お前、」

   わかる。いま

      見せて

「いま、もうたぶんおれ、赦してもらえないかもしれない」

   わかるよ。あなたは

      きみを

「波紋なの?」

   あなたなん

      様変わりして

「でも、というか、」

   だ。ね?あな

      しかも

「いつ?」

   あなたなん…って

      あきらかにきみでしかない

「赦してくれとは言わない。いま」

   だって、さ

      きみを

「いつ来た?いつ、…」

   この。舞い散る

      見せて、もう

「出てけって、それでも」

   この。無防備な

      見飽きるほど

「よかった。そう、」

   体臭。あなたの

      きみを

「それでいいよ。むしろ」

   なん…莫迦

      のこりなく

「お前、」

   なんにも変わっ

      見せて

「でも、」

   やつれさえして

      いまや、なにも

「波紋か。…お前」

   いなん、ね?

      目舞いに

「お願い。すこしだけ」

   なんにも

      立ち昏みの持続に

「波紋だよな?」

   ね?時間なんて

      なにも見え

「おれに」

   なかっ…存在

      見せて

「そう、…」

   きっと。し、

      おもかげさえな

「時間を」

   なかっ…そうじゃない?

      きみを。もっ

「瘠せたか?」

   そうだよ。だっ

      もっと。もっと!

「ください。いっぱい、いっぱい、お父さんとお母さんにお詫びする、おれにそんな時間をすこしだけでいいからせめて10秒だけください」…馬鹿。と。やがて、ふたりともいつか門を入ったすぐの地面にあぐらを搔いてすわりこみ、ようやく落ち着き始めたころあい、「莫迦だよ。おまえは」

   微笑。…を

      あ

         せつなさが、いま

雅孝の

   ようやく、ぼくらは

      微妙な

         ん?ここちよさと

声に波紋は

   とりもどしかけ

      あ

         混濁をはじめた

ふたたび「お前は、」顔をあげた。











Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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